「ホルモン番長」が考えるホルモンの真髄とは

しっかりとした網で脂を落しながら炭火で焼く。煙で燻されてより美味しさが増す。

古くから愛されてきた「ホルモン焼き」

ホルモン専門のチェーン店が出来るなど、ホルモン焼きは一気に市場を拡大している。
ホルモン専門のチェーン店が出来るなど、ホルモン焼きは一気に市場を拡大している。

 「肉ブーム」と言われて久しい。焼肉はもちろんステーキや肉割烹など、様々な業態やスタイルで肉が供される中、根強い人気を保ち続けているのが「ホルモン焼き」だ。

 「ホルモン焼き」とは「正肉」以外のいわゆる「内臓肉」を焼く焼肉料理のこと。狭義的には小腸や大腸などをメニュー名としてホルモンと呼ぶこともあるが、広義的には正肉以外の部分を総称的にホルモンと呼ぶ。

 名前の由来は大阪弁の「放るもん(廃棄していたもの)」から来たという説もあるが、正しくはホルモン分泌を促す滋養強壮の効果があるということからで、かつてはスッポン料理などもホルモン料理と呼ばれていた時代があったという。全国各地で古くからホルモン焼きの文化があり、「気仙沼ホルモン」や「厚木シロコロ・ホルモン」などはご当地グルメとしても人気を集めている。

ホルモン人気が加速化している理由

『焼肉 うしみつ一門』。ホルモンの質も年々向上し、提供スタイルも変化している。
『焼肉 うしみつ一門』。ホルモンの質も年々向上し、提供スタイルも変化している。

 昨今のホルモン人気の背景には、ホルモンが正肉の焼肉に較べて安価でリーズナブルという点があるだろう。さらに本来の意味である滋養強壮、ヘルシーというイメージがあるためか、最近では女性客も増えている。

 また「ふたご」(FTG Company)や「情熱ホルモン」(五苑マルシン)など、気軽に楽しめるホルモン専門業態のチェーン店が増えていることも関係しているだろう。これまでの焼肉店やホルモン焼き店のスタイルよりも、チェーン居酒屋のフォーマットに寄せたことで客層が一気に広がった。

『肉匠堀越』の「ホルモン食べ比べ」。焼肉専門店もホルモンに本腰を入れてきている。
『肉匠堀越』の「ホルモン食べ比べ」。焼肉専門店もホルモンに本腰を入れてきている。

 ホルモンと正肉は仕入れのルートも異なり、厳密にいえばホルモン焼き専門店と焼肉店は異なるものだ。一昔前はホルモン焼き店にカルビやロースなどの正肉はほとんどなかったが、最近ではしっかりとしたルートを確保して美味しい正肉を出すホルモン焼き店も増えている。同時に焼肉店でも、以前はあくまでも脇役だったホルモンメニューを重視して、クオリティの高いホルモンを提供する店が増えた。

 その理由はホルモン人気の高騰が大きいと考えられる。ホルモン専門店に多くのお客さんが集まるようになり、客からの正肉も食べたいというニーズにホルモン店が応えるようになったことと、焼肉店に来る客からも、正肉だけではなく美味しいホルモンも食べたいというニーズが増えたことによる。これからは正肉とホルモンの境目はなくなっていき、ボーダーレスな焼肉店がますます増えていくはずだ。

「ホルモンの聖地」亀戸を牽引する「初代吉田」

「ホルモンの聖地」亀戸屈指の人気店「初代吉田」
「ホルモンの聖地」亀戸屈指の人気店「初代吉田」

 東京亀戸は都内屈指の「ホルモンの聖地」として知られている。特に亀戸駅北口は50m四方ほどの狭いエリアに「亀戸ホルモン」や「ホルモン青木」などの人気店が密集するホルモン激戦区。その中でも圧倒的な存在感でファンを魅了し続ける店が「初代吉田」(東京都江東区亀戸5-13-6)だ。

 調理場の脇から2階に上がれば、七輪とロースターがズラリと並ぶ圧巻の光景が出迎えてくれる。清潔感あふれる店内は常に満席で活気にあふれており、女性同士で来ている客も少なくない。自慢のホルモンメニューは常時30種類以上あり、価格も500円台からとリーズナブル。もちろん正肉や一品料理なども充実している。

『初代吉田』の人気メニュー「闇盛り(塩)」。
『初代吉田』の人気メニュー「闇盛り(塩)」。

 数あるメニューの中でも、常連客が必ず頼むという人気メニューが「闇盛り」だ。その名前の通り何が入っているかはお楽しみ。その日に仕入れた新鮮なホルモンを7種類厳選して盛り合わせたもので、味は味噌と塩から選ぶことが出来る。サイズも大(1,600円)小(1,100円)と二種類あるので、人数によってボリュームを調整が可能。部位によって異なる味や食感を一皿で楽しめる上、来るたびにその組み合わせが変わるのも「闇盛り」の醍醐味だ。

亀戸を激戦区にした「ホルモン番長」

「ホルモン番長」こと『初代吉田』店主の吉田明広さん。毎日必ず店に立つ。
「ホルモン番長」こと『初代吉田』店主の吉田明広さん。毎日必ず店に立つ。

 「初代吉田」店主の吉田明広さんは、焼肉の世界で30年以上ものあいだ肉と向き合い続けてきたベテラン。2000年にホルモン専門店「亀戸ホルモン」を立ち上げて、一躍亀戸にホルモンブームを巻き起こした人物だ。後進が育ったのちに店を離れ、自らの名前を冠した「初代吉田」を創業。今も毎日店に立ってさらなる高みを目指している。そんな吉田さんの教えを受けて独立した店は20軒を超えるほど。人は吉田さんのことを「ホルモン番長」と呼ぶ。

吉田さんの思いがこもったホルモンの数々。妥協のない仕込みが味を決める。
吉田さんの思いがこもったホルモンの数々。妥協のない仕込みが味を決める。

 吉田さんがいなかったら、もしかしたら亀戸がホルモンの聖地と呼ばれることは無かったかも知れない。激戦区となった亀戸をどう捉えているのだろう。「ちょっとお店は増え過ぎたかも知れないけれど、お店ごとの個性があるので色々なお店を回って欲しいな。今日はこの店明日はあの店というように、亀戸にはホルモン店巡りが出来る楽しさがあるよね」

番長が考えるホルモンの楽しみ方とは

 ホルモンの魅力とは何か。ホルモン番長の答えは明確だ。「安くて美味い。これしかないでしょう。ホルモンは部位ごとに食感、味、脂の感じ方すべてが違うんですよ。それを感じてもらうために、仕込みは絶対に手を抜かない。食べにくい部位は切り込みを入れたり、目に見えない部分の仕事も一切妥協しません」

 最後にホルモンの楽しみ方を番長に聞いた。「僕は『喰わず嫌いは一生の損』だと思っているんです。注文するのは食べ慣れているハラミだけとかシマチョウだけ、というのはもったいないですよ。ウチの「闇盛り」みたいな盛り合わせを頼んでもいいし、聞いたことのない名前のものを敢えて注文するのも楽しいじゃないですか。遊び心で色々な部位を食べてホルモンを楽しんで欲しいですね」

※写真は筆者の撮影によるものです。