【データで考える】待機児童の定義が自治体でバラバラ?来年度から日本全国で統一へ

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

待機児童の定義を厚労省が見直す、というニュースが去年9月ごろにありました。

待機児童の定義、厚労省が見直しへ 判断基準を全国統一

年度内に全国で統一した基準を定めるとのことですので、平成29(2017)年3月までには公表されることと思います。

え、これまで統一してなかったの?という驚きもあるかと思います。そこをみていきましょう。

国の定義

NHKさんの記事によると「国の定義のうち(略)内容の改訂を伴う変更は、これまでに5回行われて」いるとのことで、主だったものとして以下の3点をあげています。経年で少しづつ狭くなっていっています。以下に引用します(西暦の追記は筆者矢崎)。

【平成11年(1999年)】希望する認可保育所に入れず、自治体などの補助を受けているものも含め、いわゆる「無認可保育所」に入所している場合は「待機児童」としてカウントする。

【平成13年(2001年)】希望する認可保育所に入れず、いわゆる「無認可保育所」に入所している場合でも、自治体などの補助を受けている施設の場合は「待機児童」としてカウントしない。

【平成13年(2001年)追加】「遠すぎる」「兄弟で同じ保育所に入れたい」など、私的な理由で自治体が勧める保育所への入所を辞退した場合は「待機児童」としてカウントしない。

出典:待機児童数"ゼロ"のカラクリとは!? - NHK生活情報ブログ

このうち、平成13年(2001年)の改定で、「自治体などの補助を受けている施設の場合は「待機児童」としてカウントしない」ということで、自治体が独自に助成する施設を利用しながら待機している児童らが「待機児童」から除いてよいことになりました。

平成27(西暦2015)年からまた新たな定義が適用されています。おそらくこれが現時点での最新の定義かと思います。

平成27(西暦2015)年時点の定義

試しに、GitHub(プログラマがコードを共有するサイト)の機能を利用して、平成23(西暦2011)年と平成27(西暦2015)年の差分をみてみましょう。

平成23(西暦2011)年と平成27(西暦2015)年の差分(オレンジが削除された箇所、ミドリが追加された箇所です)

自治体が解釈できる余地があり、それによって結果的に、自治体ごとに定義が異なる、という状況が生まれていました。

自治体の定義

たとえば、千葉県市川市の例ですが「児童福祉専門分科会」というところで、国の定義をどう解釈するか、過去に検討した資料がウェブで公開されています。

平成23年度第3回 児童福祉専門分科会資料

これをみると、背景が薄紫の箇所が国基準と違う扱いをしているもので、市川市が待機児童の定義を広くとる独自の解釈をしようという意思がみてとれます(画像は資料内の表)。

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朝日新聞さんが自治体へ待機児童の定義についてアンケートを取ったことがありました(平成24年4月1日時点)。その結果の労作が以下のページで公開されています。

「認可保育所に申請したが入れなかった児童」のうち、どういうケースが待機児童の定義に含まれるかを聞いた。待機児童に含めるケースは「○」、含めないは「×」、場合によるときは「△」の三つから選んでもらい、△の場合は説明を加えてもらった。

出典:子どもの預け先がなくて育休を延長したのに、待機児童に数えない - 待機児童問題

リンク先には、場合によるときの「△」の扱いについて補足がありますので、そちらもぜひご覧ください。

リンク先はインタラクティブな表示になってることもあり、ここでは、一覧性を優先させ、東京都内で調査対象になった市区町村を一覧化した画像を以下に引用します。

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これをみると、自治体ごとに扱いの差が大きいのが「8.特定の保育園を希望し他を辞退している」「9.預け先が見つからなかったため仕事を辞めた」だとわかります。

実際の待機児童数との関係を概観するために、この○△×を仮に2~0の点数に当てはめ、待機児童率(待機児童数÷就学前児童人口)とで散布図化したものが以下のものです。

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四隅の背景に色付けがされていますが、

左上が、待機児童の定義が緩いのに、待機児童率が低い自治体で、足立区、八王子市、町田市などが該当します。

左下が、待機児童の定義が狭く、待機児童率も低い自治体で、千代田区や葛飾区が該当します。

右上が、待機児童の定義が緩く、待機児童率が高い自治体で、渋谷区、世田谷区が該当します。

右下が、待機児童の定義が狭く、待機児童率が高い自治体で、台東区が該当します。

相関関係や因果関係はここから読み取れませんが、一つの傾向や目安として参考にしてもらえたらと思います。待機児童の定義が狭いのに待機児童率が高い自治体や、待機児童の定義が緩いのに待機児童率が低い自治体は、ツッコマビリティが高いといえます。

また小池東京都知事がかなり踏み込んだ施策を検討中という報道もありました。対象別に整理してみました。

保育園

  • 開園時の開園工事費用(整備費)の上乗せ補助
  • 賃貸物件を借りている保育所の家賃補助
  • 都有地活用のための横断組織と外部窓口創設
  • 認可外保育所への巡回チーム設立

保育士

  • これまで採用5年縛りだった保育士寮の補助を全保育士に

親と待機児童

  • 認証保育所等、認可外保育所との保育料の差額を埋めるバウチャーを提供
  • 育休を原則1歳までから2歳までに延長
  • これまで2歳までだった小規模認可保育所の全年齢化

こちらにも期待したいと思います。

保育園問題

待機児童は親が働きに出る際の預かり手がいないことに端を発します。祖父母や親戚で預かってくれる人がいれば保育園には預ける必要がありませんし、日本以外ではベビーシッターに預ける人が多いという話を聞きます。単純に箱物である保育園を増やすと、少子化の時代には施設が余る可能性もあります。これらの前提を経た結果としての「保育園問題」を扱う場合にも、親御さんの保育園の探しやすさという切り口、保育士の質や給与、やりがいという切り口、保育園の施設数や経営という切り口、など切り口も多様にあります。問題をデータでマクロに概観できることを目指したスライド資料(以前イベントのために作成したもの)がありますので参考になさってください。ツッコミがあればお願いします。

データから保育園を考える - Code For Tokyo

#データで遊ぼう

東京都が「都内の保育サービスの状況について」として定期的に公表している資料があり、都内限定ですが、保育サービス利用児童数の推移、保育所の設置数の推移、就学前児童人口の推移、待機児童数の推移が掲載されています。ただ、PDF形式なのと、直近2年分しか掲載されていないんですね。それ、やっときました。データを抜き出しtsv形式にしたものを以下のページへ置いています。

dataset/保育園問題

tsvファイルをまとめてダウンロード

自由に使っていただいて構いません。ふだん使っているツールでチャート化してみたり、他のデータと散布図で相関するかみたりしてみてください。そして何かできたら是非 #データで遊ぼう というハッシュタグでご自身のSNSアカウントから発信してみてください。