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南野拓実、29歳。たくましさを武器にイラク戦でアジア杯2戦連発を狙う #アジアカップ2023

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
アジア杯グループリーグ初戦のベトナム戦で2得点した南野拓実(写真:ロイター/アフロ)

苦しみを自力で打ち破って身につけたたくましさが今の武器だ。日本代表MF南野拓実(モナコ)が新たな強さと輝きをまといつつ、アジア杯グループリーグ第2戦のイラク戦を迎えようとしている。

1月14日に行われたグループリーグ初戦のベトナム戦。立ち上がりからプレスがはまらず、苦戦を強いられた日本の中で、背番号8は一人二役をこなすほどのプレー関与でチームを4-2の逆転勝利へと引っ張った。

11分、エリア内でこぼれてきたボールを冷静に流し込んで先制点を奪うと、セットプレー2発で逆転を許していた45分には、相手GKから見えない角度を選んでDFの股を抜き、2-2とする同点弾を奪取。前半終了間際には中村敬斗の勝ち越しゴールをアシストした。

「(カタールでの)合宿に入ってからシュートは良い感触があった」とはつらつとした表情を浮かべた。

日本はベトナムに4-2の逆転勝ち。AFC(アジアサッカー連盟)は17日発表のグループリーグ第1節のベストイレブンに南野を選出した。

ベトナム戦でゴールを決めた
ベトナム戦でゴールを決めた写真:ロイター/アフロ

■元日のタイ戦で約2年ぶり代表ゴールを決め、「ヨッシャという感じ」と語っていた

2024年は代表戦2試合連続得点中だ。1試合目は1月1日の国際親善試合・タイ戦(東京・国立競技場)。この試合の後半アディショナルタイムに、2021年2月1日のカタールW杯最終予選サウジアラビア戦以来、1年11か月ぶりのゴールを奪ったのをきっかけに、上昇気流に乗った。

タイ戦後は、「ホッとしているというよりは、ヨッシャという感じ。ゴールを取れてないことに焦りはなかったので、ホッとする気持ちはなかった。良い形で2024年をスタートさせたい」と、アジアカップ優勝を意識しながらコメントしていた。今大会ではその言葉通り、好調を維持している。

ザルツブルクでの1年目だった2015年5月の南野拓実
ザルツブルクでの1年目だった2015年5月の南野拓実写真:アフロ

■20歳で欧州に移籍して10年目「ハングリーでギラギラした気持ち」

20歳だった2015年1月、セレッソ大阪からオーストリアのザルツブルクに完全移籍したところから、欧州で勝負する日々を送ってきた。ザルツブルク時代はコンスタントに得点を重ねながら実力を磨き、2019/20シーズンに欧州CL初出場を果たすと、2020年1月にイングランドプレミアリーグのリバプールへ移籍。ところが、サウサンプトンへのレンタル移籍やフランス1部モナコに移籍した期間は調子の上がらない時期が続き、2022年は日本代表の10番を背負って出場したカタールW杯で不発。その後の10カ月間は代表に招集されなかった。

リバプール時代の2022年5月、FAカップで得点した南野拓実
リバプール時代の2022年5月、FAカップで得点した南野拓実写真:REX/アフロ

だが、南野はどんな苦境にも真っ向から立ち向かい、前を見続けた。こうして迎えたモナコでの2シーズン目の昨夏以降はすっかり復調し、ゴールやアシストを連発。昨年10月13日の親善マッチ・カナダ戦で満を持してW杯以来となる代表復帰を果たし、「このユニフォームを着て、(代表は)やはり特別だと思った」としみじみ言うと、その4日後にあった国際親善試合のチュニジア戦(新潟)の後は、すがすがしい表情で心境を打ち明けた。

「W杯の時は背負う気持ちのほうが強くて、チームのために何ができるかを一番に考えていた。今はフレッシュな気持ちで、自分的にもリセットしたハングリーでギラギラした気持ち。背負いながらプレーするのは幸せなことで、それはW杯でプレーできたからこそ感じられた。また、ひとりのハングリーな選手としてやっていきたい」

苦しんだところから自分で這い上がってきたからこそ、言葉に実感がこもっていた。

カタールW杯2022、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦でプレーする南野拓実
カタールW杯2022、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦でプレーする南野拓実写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

■「まだまだ欧州のトップレベルでやっていくために、もっと成長したい」

アジア杯初戦ベトナム戦から2日後の1月16日、29歳の誕生日を迎えた。20歳で欧州へ旅立ってから今年はちょうど10年目。29歳はサッカー選手としては円熟の年齢だが、今の南野にはまだまだこれからというような雰囲気が漂っている。誕生日だった16日のメディア対応でそのように振られると、頷くようにこう言った。

「個人的にもそういう気持ちですね。前のシーズン(2022/23)はすごく苦しい思いがありましたが、今シーズン(2023/24)は良いスタートを切ることができた。まだまだヨーロッパのトップレベルでやっていくためにもっと成長したいと思ってますし、このアジアカップも自分のキャリアの中ですごく大事な大会。何か残して帰りたいと思っています」

1月16日には板倉滉(右)と菅原由勢(左)から誕生日ケーキを渡された(撮影:矢内由美子)
1月16日には板倉滉(右)と菅原由勢(左)から誕生日ケーキを渡された(撮影:矢内由美子)

■「自分のやるべきことに集中してプレーできている」

ベトナム戦で見せたパフォーマンスは素晴らしく、たくましさを感じさせた。フレッシュな気概も見えた。

南野は「代表でスタメンで試合に出て結果を残すことに対して、ただ貪欲にやっている。自分が年をとったとか、周りが若くなったとか、そういう考えは一切不要。自分のやるべきことに集中してプレーできている」と胸を張っている。

ベトナム戦の前半45分に南野の2点目をアシストした16年リオデジャネイロ五輪仲間の遠藤はこのように証言する。

「お互いにリオの時からいろんな経験をしてキャリアを積んできた。拓実もいろいろ苦しみながらも、また代表にしっかり戻ってきて結果を残しているのは素晴らしい。今はすごく自信を持ってプレーしていると思う」

南野にはイラク戦で代表戦3試合連続得点の期待が寄せられる。

「僕は攻撃の選手なので、そういう(得点の)部分でチームに貢献したいと思っている。まずは勝って、しっかりグループリーグを突破できるようにしたい」

背番号8への期待がどんどん膨らむ。

仲間からケーキで祝福されて「照れる」と笑顔の南野拓実(撮影:矢内由美子)
仲間からケーキで祝福されて「照れる」と笑顔の南野拓実(撮影:矢内由美子)

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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