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カタールW杯開幕! 知っておきたい10のポイント 日本代表のキーマンは?

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
カタールW杯開会式が盛大に行われた(写真:ロイター/アフロ)

 92年の歴史の中で初の中東開催となったカタールW杯が、11月20日(日本時間21日未明)、開幕した。日本の初戦は11月23日(日本時間22時キックオフ)のドイツ戦。森保ジャパンによる、史上初のベスト8入りを目指す戦いが始まる前に、あらかじめ知っておきたい10個のポイントを紹介する。

【ポイントその1:ドーハは因縁の地】

 W杯の歴史は1932年のウルグアイ大会から始まるが、日本は長い間、アジア予選を突破することすらできなかった。1994年米国W杯を目指して戦った1993年10月のアジア最終予選は、ドーハでの集中開催。日本はイラク戦の終了間際に失点を喫して2-2に追いつかれてW杯初出場切符を逃し、この試合は「ドーハの悲劇」と呼ばれるようになった。

 現日本代表の森保一監督は、この時のイラク戦で日本代表ボランチとしてプレー。2-2に追いつかれて泣き崩れたメンバーの1人だ。

カタール・ドーハのベースキャンプ地で練習する森保ジャパン
カタール・ドーハのベースキャンプ地で練習する森保ジャパン写真:ロイター/アフロ

【ポイントその2:日本は7大会連続7回目の出場】

日本は1998年フランスW杯で初出場を果たし、続く2002年日韓W杯はホスト国として予選免除での出場。その後はすべてアジア予選を勝ち抜き、今回のカタールW杯で7大会連続7度目の出場となっている。これは今回の出場32カ国の中で15番目だ。

W杯で圧倒的な成績を残していると言えばなんと言ってもブラジル。全22大会に出場し、優勝5回を誇っている。

そんな中、隠れた“ナンバーワン優等生”と言えるのがドイツ。今回で18大会連続出場となっており、ブラジルに続く4大会で優勝している。また、ドイツの出場試合数はブラジルを上回る106。優勝回数こそブラジルにトップを譲るが、決勝進出回数、準決勝進出回数など軒並みドイツがトップとなっている。ただし、ドイツは前回のロシアW杯でグループリーグ第3戦で韓国に0-2で敗れるなどし、決勝トーナメント進出を逃している。

ネイマールはブラジルの兆人気者
ネイマールはブラジルの兆人気者写真:ロイター/アフロ

【ポイントその3:日本の歴代W杯最多得点者は?】

 日本は過去6大会に出場し、通算試合数は21。そのうちゴールが決まったのは13試合で、総ゴール数は20点だ。

 得点者は14人おり、歴代最多は本田圭佑の4得点(2010年南アフリカW杯会2点、2014年ブラジルW杯1点、2018年ロシアW杯1得点)。

 2得点は3人いて、稲本潤一(2002年日韓W杯2点)、岡崎慎司(2010年南アフリカW杯1点、2014年ブラジルW杯1点)、乾貴士(2018年ロシアW杯2点)。

1得点の選手は10人(中山雅史、鈴木隆行、森島寛晃、中田英寿、中村俊輔、玉田圭司、遠藤保仁、香川真司、大迫勇也、原口元気)

 なお、日本がW杯で1試合に最も多くのゴールを入れたのは2010年南アフリカW杯のデンマーク戦で、3得点。また、1大会の最多ゴールは2018年ロシア大会で、日本は4試合で6点を挙げている。好成績を収めるためには、やはり多くのゴールが必要だ。

2018年ロシアW杯で得点を決めた本田圭佑
2018年ロシアW杯で得点を決めた本田圭佑写真:ロイター/アフロ

【ポイントその4:森保ジャパンは「フレッシュジャパン」】

今大会は日本代表26人中、19人がW杯初出場となった。これは、W杯初出場で全員が初選出だった1998年フランスW杯以外で最も多い人数となっている。

過去の例を見ると、2002年日韓W杯は15人が初選出。2006年ドイツW杯は12人、2010年南アフリカW杯は16人、2014年ブラジルW杯は14人、2018年ロシアW杯は12人。

比率で見ると、ロシア大会を除けば初出場選手が多い大会は好成績を残している。

【ポイントその5:日本の最多出場選手は?】

 今回で7回目のW杯出場となる日本には、4大会で代表に選ばれた選手が4人いる。GK川口能活、GK楢崎正剛、GK川島永嗣、DF長友佑都だ。

 川口と楢崎は1998年から2010年。川島と長友は2010年から2022年。岡田武史監督が率いた2010年南アフリカW杯は、その後3大会連続出場へとつなげていった本田圭佑、岡崎慎司、長谷部誠が初選出された大会でもあり、新旧選手のバトンタッチとなった大会だった。

 出場試合数で見ると、現時点での最多は川島、長友、長谷部の11試合。川島と長友は今大会で出場数を上乗せすれば単独で最多となる。

カタールW杯で4度目の長友佑都。森保ジャパンではムードメーカーでもある
カタールW杯で4度目の長友佑都。森保ジャパンではムードメーカーでもある写真:森田直樹/アフロスポーツ

【ポイントその6:グループリーグ突破するには?】

 日本の目標は「史上初のベスト8」。そのためにはまず、4チーム中上位2チームが突破することになるグループリーグでの戦いを乗り越えなければならない。

データの中で目にとまるのは、これまでに日本代表がW杯のグループリーグ初戦で勝ち点を獲得した場合(2002年、2010年、2018年)は、すべて決勝トーナメントに進出していること。今回は初戦のドイツ戦で引き分け以上の結果ならデータ上、ラウンド16進出の可能性は高くなる。

 なお、日本がグループリーグを突破した3大会を検証すると、グループリーグでの勝ち点は2002年「7」、2010年「6」、2018年「4」。2018年ロシアW杯の日本は、勝ち点で並んだセネガルを警告数の少なさで上回って16強入りを果たすという、薄氷のグループリーグ突破だった。ロシアW杯では初戦のコロンビア戦で試合開始からわずか6分で相手に退場者が出るという運の良さもあった。ツキを呼び込むチームには一体感があるもの。森保ジャパンの結束力を期待したい。

【ポイントその7:日本のキーマンは誰?】

 久保建英(レアル・ソシエダ)を推したい。スペインのバルセロナFCの下部組織で少年時代を過ごし、2015年3月から18歳の誕生日を迎えた2019年6月4日まで日本でプレー。JリーグのFC東京と横浜F・マリノスでプレーした。年代別代表時代から抜群の知名度を誇っており、日本代表初選出は17歳だった2019年5月。これまで森保ジャパンでは特筆するほどの結果を残してきてはいないが、今季は所属のレアル・ソシエダで絶好調。左足から繰り出す変幻自在のパスやドリブル、思い切りの良いシュートで日本を勝利に導けるか。

久保建英は現在21歳。
久保建英は現在21歳。写真:森田直樹/アフロスポーツ

【ポイントその8:優勝賞金は?(※1ドル140円換算)】

 カタールW杯の大会賞金総額は史上最多の4億4000万ドル(約616億円)となっている。そのうち優勝国には4200万ドル(約58億8000万円)の償金が授与される。2002年日韓W杯の優勝賞金は800万ドルだったので、5倍以上の金額だ。

2位以下の償金もアップしており、準優勝国は3000万ドル(約42億円)、3位2700万ドル(約37億8000万円)、4位2500万ドル(約35億円)となっている。

 日本が目指しているベスト8に入れば1700万ドル(約23億8000万円)、ベスト16には1300万ドル(約18億2000万円)。グループリーグ敗退でも900万ドル(約12億6000万円)の賞金が授与される。

 2018年ロシアW杯は賞金総額が4億ドルで、優勝賞金は3800万ドル。日本はベスト16入りして1200万ドルを受け取った。

 なお、2018年の為替レートは現在と比べて円が高かった(約114円)ため、円換算で言うと日本が受け取った1200万ドルは約13億6000万円。現在は円安のため、今回のカタールW杯で前回と同じ成績だった場合に日本が受け取る賞金は円換算にすると大幅にアップする。

写真:ロイター/アフロ

【ポイントその9:32カ国での大会は今回が最後】

 1932年にウルグアイで開催された第1回W杯は13カ国の参加だった。その後、1930年から1978年は16カ国、1982年〜1994年は24カ国で覇権が競われた。

 日本は出場国が32カ国に拡大された1998年フランスW杯から出場。32カ国制は今回も同じで、4チーム8グループに分かれて総当たりのグループリーグを戦い、各組の上位2チーム×8グループ=16チームによるノックアウト方式の決勝トーナメントが行われる。

3 2カ国で争われるのは今回がラスト。米国、メキシコ、カナダとの3か国共同開催となる2026年大会からは参加枠が48カ国に拡大する。アジア枠も4・5から8に増える。

山下良美国際審判員も“参戦”
山下良美国際審判員も“参戦”写真:ロイター/アフロ

【ポイント10:大会のトピックは?】

 今回のW杯では史上初めて女性審判が登用されており、主審3人、副審3人が参加している。日本からは山下良美国際審判員が参加中で、11月23日のグループリーグF組のベルギー対カナダの第4審判に割り当てられた。

 また、今大会は初めて半自動システムによるオフサイド判定が導入されている。スタジアムの屋根の下に12台の専用トラッキングカメラが設置され、ボールとそれぞれの選手のデータポイントを1秒間に50回追跡している。このシステムは開幕戦のカタール対エクアドル戦で早くも稼働。エクアドルのゴールがオフサイド判定で取り消された。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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