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【体操】内村、白井を至近で見たい! 4万円の年間プレミアムシートが人気

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
世界チャンピオンを目の前で見られる特別席

■「近くで見ると迫力が違う」

プレミアム年間シートはロイヤルボックスの横に位置する
プレミアム年間シートはロイヤルボックスの横に位置する

日本体操協会が初めて売り出した1席4万円の『プレミアム年間シート』が好評だ。

これは、15年度に東京・代々木第一体育館で開催される全日本選手権など国内主要4大会の予選と決勝をロイヤルボックス横の指定席で観戦できるもの。メインスタンド中央前方の特等席で観戦できるほか、特典として、15年世界選手権(英国グラスゴー)の日本代表選手団サイン、4大会すべての大会プログラムがついている。

値段は1席4万円と、体操競技としては高めの設定だが、3月28日から4月10日までと、2次募集として4月27日から5月3日までの期間にインターネット販売のみで限定49席を売り出したところ、完売した。

対象試合である4大会のうち、すでに4月の天皇杯全日本選手権(個人総合)、5月のNHK杯が終了しているが、実際にプレミアムシートで観戦したファンからは「席が選手と近いのがいいし、ゆかや鉄棒を近くで見られるのがいい(※大会によって器具のレイアウトは異なる)」(大阪府、29歳男性)、「生で見るのとテレビでは音や迫力が違う。自由席しかなかったときは朝早くから並んで好みの席を確保していたので、ずいぶん楽になった。毎回チケットを買うという煩わしさもなくなった」(千葉県、49歳女性)と好評だ。

■ワールドクラスの選手が目白押し

白井健三のゆかは他の追随を許さない
白井健三のゆかは他の追随を許さない

体操は生で見るとその高さや迫力、美しさ、技の精巧さに圧倒される競技だ。日本には現在、ロンドン五輪で金メダルを獲得するなど、男子個人総合で無敵ばく進中の内村航平(コナミスポーツクラブ)や、2年前の世界選手権で種目別ゆかの金メダルに輝いた白井健三(日体大)、同じくあん馬で金メダルを獲った亀山耕平(徳洲会)といった新旧世界チャンピオンがいるほか、加藤凌平(順大)、田中佑典(コナミスポーツクラブ)、山室光史(同)、田中和仁(徳洲会)ら、世界選手権のメダリストが何人もおり、国内大会でも五輪に匹敵するハイレベルの戦いが繰り広げられている。リオデジャネイロ五輪を翌年に控え、また東京五輪に向けてさらに競技レベルが上がっている現在は、まさに体操観戦にお勧めの時期と言える。

プレミアムチケットが売り出された背景はどのようなものか。日本体操協会の遠藤幸一常務理事によると、「狙いは熱心な体操ファンに対してのサービス向上」だ。

「今まで予選は自由席だけだったが、これなら予選も指定席で見られるし、逆に、種目別など特定の種目を近くで見たいという場合や、自由席チケットで来ている友人と一緒に見たいという場合は自由席に移動して見ることもできる」とコアファンへのメリットを強調する。

特等席の用意だけではない。日本体操協会では、アスリート委員会の米田功委員長の提案で昨年11月の全日本団体選手権で選手との握手会を開くなど、ファンとの距離を近づけるようなイベントへの取り組みも前向きに検討している。遠藤理事は「プレミアム年間シートを今年から売り出し、2020年東京五輪に向けてどのような価格、内容が良いのかを検討していきたい」と今後を見据えて内容をブラッシュアップさせていきたいという考えを示した。

■コアファンへのサービスと、ファン層拡大を

体操ニッポンは、2004年アテネ五輪で男子団体金メダルに輝いた後にブームが起こり、観客が増えたことがあった。ブームに乗った日本協会は、入場チケットの価格を少し割高にして販売。ところがブームは一過性のものに終わり、売上はすぐに落ちた。観客サービスなどの面で反省点が残ったことで、「一時的なブームではなく、体操が好きで毎回来てくれるという人を地道に育てていきたい。今後はアスリート委員に協力してもらい、ファンの意見を直接聞くことも検討している」(遠藤理事)という考えに至っている。

一方で課題もある。今年の場合は主要大会の多くが東京・代々木第一体育館で行われるが、地方開催の場合はどのようにするのが良いのか。価格や販売席数、サービス内容の着地点をどこに置けば良いのか。

ファンからは「4万円という値段設定はちょっと高いという気はするが、選手のサインやパンフレットがついているのでいいかなと思う。今後はどういう付加価値をつけていくかというところだと思う」「もう少し値段が安ければ友だちにも勧めたい」という意見が聞かれた。

目指すべきは東京五輪を契機としながら、東京五輪後にも続くファンの裾野を広げていくことだろう。ともあれ、今は世界チャンピオンの真剣勝負を目の前で見られる貴重な時代。ぜひとも体操会場に足を運んで生の迫力に触れてほしい。

※体操競技 国内で開催される今後の主な大会

6/20(土)~21(日)第69回全日本体操競技種目別選手権 (東京・代々木第一体育館)

7/31(金)~8/2(日)第6回アジア体操競技選手権大会(広島県立総合体育館)

11/28(土)~29(日) 第69回全日本体操競技団体選手権 (東京・代々木第一体育館)

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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