緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に基づく時短や酒類提供停止の要請に応じなかった飲食店への措置命令が、今月に入って急増している。各自治体の発表や報道に基づき集計したところ、5月以降、14の都府県で350を超える店舗に命令が発出されていることがわかった。

 感染状況などの指標が大幅に改善する中、措置の終了数日前に発出されるケースも相次いでいる。

 要請に従わなかったことに対する制裁目的とみられ、憲法学者から「憲法上保障された営業の自由の侵害になり得る」との指摘が出ている。

(以下、まん延防止等重点措置を「防止措置」と表記する)

(注) 新たな命令が確認されたため、グラフを差し替えました(6月19日)
(注) 新たな命令が確認されたため、グラフを差し替えました(6月19日)

 6月17日現在、緊急事態宣言が適用されている10都府県のうち、飲食店に対し要請に従うよう命令を出したのは、東京、大阪、愛知、岡山、広島、福岡、沖縄の7都府県。

 防止措置が適用された地域では、宮城、愛媛、群馬、石川、岐阜、神奈川、埼玉の7県が命令を発出した。

 店名の公表は、東京、神奈川、大阪、愛知といった大都市で見送られ、地方都市で実施される傾向がある(措置命令実施状況の詳細・最新情報はこちら)。

措置期限3日前に出された命令も

 措置期限の間際になって駆け込み発出されるケースが目立っている。

 政府が沖縄を除いて緊急事態宣言の解除を決定した6月17日には、東京都と広島県が休業命令を、岐阜県が時短命令を出した。

 措置は20日で終了するため、わずか3日間だけ要請に従うことを求める命令だ。

 ほかにも以下のとおり、措置の期限直前に時短・休業(酒類提供停止)命令が出された例は少なくない。

宮城県(5月11日でまん延防止等重点措置終了)

 5月7日(期限4日前)、15店舗に時短命令・店名公表

群馬県(6月13日でまん延防止等重点措置終了)

 6月10日(期限3日前)、12店舗に時短命令・店名公表

石川県(6月13日でまん延防止等重点措置終了)

 6月10日(期限3日前)、14店舗に時短命令・店名公表

福岡県(6月20日で緊急事態措置終了。21日〜まん延防止等重点措置)

 6月17日(期限3日前)、10店舗に休業・時短命令

東京都(6月20日で緊急事態措置終了。21日〜まん延防止等重点措置)

 6月17日(期限3日前)、10店舗に休業・時短命令

広島県(6月20日で緊急事態措置終了)

 6月17日(期限3日前)、13店舗に休業・時短命令

岐阜県(6月20日でまん延防止等重点措置終了)

 6月17日(期限3日前)、30店舗に時短命令

命令の必要性、慎重に検討したのか

 時短・休業命令が出されれば営業の自由の制限になるのは、いうまでもない。

 そのため、特措法の条文上、命令の前段階である要請は「必要があると認めるとき」にできる一方、命令は、まん延防止のため「特に必要と認められるときに限り」できるという文言となっており、要請の要件とは明確に区別されている(法45条1項・3項、36条の6第1項・3項)。

 実は、内閣官房は4月、新型コロナウイルス感染症対策推進室長が自治体に向けて、特措法上の命令を出す際の留意事項を通知している。

 「まん延を防止するため『特に必要があると認められる』との評価について合理的説明が可能であるか」「個別施設に対して要請や命令を行う判断の考え方や基準について合理的説明が可能であり、公正性の観点からも説明ができるものになっているか」 といった観点から検討を行うよう、わざわざ注意を促していたのだ。

 この通知は、都が第2次緊急事態宣言の終了3日前に27店舗に時短命令を出し、うち26店舗を経営していたグローバルダイニング社が「狙い撃ちで違憲・違法」として提訴してから18日後に出されたものだった。

 提訴を受け、命令の発出を慎重に検討するよう注意喚起する趣旨だった可能性が高い。(訴訟の詳細はこちら

グローバルダイニング社の提訴会見(2021年3月22日、東京都内の司法記者クラブ、筆者撮影)
グローバルダイニング社の提訴会見(2021年3月22日、東京都内の司法記者クラブ、筆者撮影)

制裁目的の命令は営業の自由の侵害

 ところが、この通知の後も期限の間際に命令を出すケースが相次いでいる。

 各自治体が「特に必要があると認められるとき」に当たるかを慎重に検討したのか、疑問の拭えないケースが少なくない。

 たとえば、広島県は休業命令を出したのは緊急事態措置の終了3日前で、すでに病床使用率以外の指標はすべてステージ2以下に改善し、病床使用率も3割前後(病床全体29%、重症病床32%=6月16日時点)となっていた。

 これでも果たして、休業命令をあえて出さなければならないような状況であったと言えるだろうか。

筆者作成
筆者作成

 横大道聡・慶應義塾大学教授(憲法)は、筆者の取材に対し「要請に応じなかったということをもって命令できるというわけではない。その命令により営業を制限しなければならないほど切迫した感染状況や医療の逼迫した状況がある場合に限られるべきだ」と指摘。

 その上で「要請に従わなかったことに対する制裁目的で、そのような『特に必要と認められるとき』でないのに命令を出すことは、法律の予定していない命令であるとともに、憲法上保障された営業の自由の侵害になり得る」とコメントした。

横大道聡・慶應義塾大学教授(本人提供)
横大道聡・慶應義塾大学教授(本人提供)

<ミニ解説> 特措法に基づく要請・命令の手続き

 特措法のもとでは、まず政府が緊急事態宣言、まん延防止等重点措置を適用する都道府県を決定するが、実際に措置の内容を決め、実施するのは自治体である。

 措置が適用された都道府県の知事は、措置開始日以降、事業者に対する措置を発表し、包括的な要請を行う。

 要請に応じていない事業者に対し、まん延防止のために必要と認められるときは、学識経験者の意見を聴いた上で、個別に要請を行うことができる。

 個別の要請に応じていない事業者に対しては、学識経験者の意見を聴いた上で、弁明の手続きを経て、要請に従うことを命令できる。ただし、要請に応じないことに正当な理由がなく、かつ、まん延防止のため特に必要と認められる場合に限られる。知事は、命令を出したことを公表することも公表しないこともできる。

 命令に従わない事業者に対しては過料30万円(緊急事態措置)ないし20万円(防止措置)が科せられる。

 過料を科す手続きは、自治体の通知に基づき裁判所が行う。自治体は関与しないため、実際に過料が支払われたのかどうかは公表されていない。

(修正)福岡県が6月17日に10店舗に対して命令を出していたとの報道を確認したため、命令の発出事例一覧とグラフを差し替えました。(2021/6/19)