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『ウルトラマン』のシリーズに登場する組織は、なぜ毎回違ったのだろうか?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。

マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。

さて、今回の研究レポートは……。

筆者は、昭和のウルトラマンシリーズにどっぷり浸って育った。

怪獣や宇宙人が現れて街を破壊すると、ウルトラのヒーローがやってきて倒す。

これが毎週繰り返されて、ほぼ1年経つとヒーローは去り、新しいヒーローがやってくる。

それが当たり前であった。

ただ、当時から不思議でならなかったことがある。

地球を守るヒーローが変わるたびに、いっしょに戦う正義のチームもガラッと変わってしまうのだ。

昭和のウルトラマンシリーズでいえば……

『ウルトラマン』⇒科学特捜隊

『ウルトラセブン』⇒ウルトラ警備隊

『帰ってきたウルトラマン』⇒MAT(マット)

『ウルトラマンA』⇒TAC(タック)

『ウルトラマンタロウ』⇒ZAT(ザット)

『ウルトラマンレオ』⇒MAC(マック)

この傾向は、平成以降のシリーズにも概ね踏襲されていて、一部を除けば、ヒーローと正義の組織は同時に変わるのが通例であった。

だがこれは、黎明期の『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』は、あまり問題にならなかった。両者はまったく世界観の異なる番組だったからだ。

「怪獣と明るく戦うウルトラマン」と「宇宙人と悩みながら戦うウルトラセブン」。

舞台背景も前者は現在に近く、後者はもう少し未来というイメージだったから、放送当時は両者につながりがあるとは誰も思わなかったのだ。

だから劇中、正義の組織が「科学特捜隊」から「ウルトラ警備隊」に変わっても、さほど違和感はなかったのである。

◆ウルトラのことだけドンドンわかる

 話をややこしくしたのは『帰ってきたウルトラマン』だ。

その番組名ゆえ「かつて活躍したウルトラマンが戻ってくる!」と喜んだら、来たのはよく似た別人だった(それは普通「帰ってきた」とは言わないと思う)。

しかも、第18話ではウルトラセブンが登場し、38話では初代ウルトラマンも現れた。

3つの物語はつながっていたことが明るみに出たのだ。

ここを出発点に、ウルトラ兄弟やウルトラの両親などが続々登場。

当時の子どもたちはウルトラの人々について、たとえば「ウルトラセブンの亡くなった母は、ウルトラの母の姉である」といった恐ろしく細かい情報まで知ることとなった。

ところが、ウルトラの人間関係がどんどん明らかになる一方で、地球の組織がどういう関係なのかは、一切語られなかったのである。

なんだかキツネにつままれたような思いであった。

番組が終わり、ヒーローが故郷の星に帰っていった後、正義のチームはどうなってしまったのだろうか?

実は、その答えがさりげなく仄(ほの)めかされたことがある。

『ウルトラマンA』の第10話「決戦!エース対郷秀樹」に、前作『帰ってきたウルトラマン』のMAT隊員だった郷秀樹(のニセモノ)が現れたのである! 

『A』で活躍していたのは、TACという組織。

郷は「元MATの郷です」と自己紹介するのだが、TACの隊員たちは郷のことを知らず、ただ美川隊員だけがこう言うのだ。

「思い出したわ。郷さんのことをMATのファイルで見たことがあります」。

うーん、実に中途半端な情報である。

この時点でMATはもう存在していないということだろうか。判然としない。

ただ一つ明らかなのは、同業の先輩組織であるMATのレガシーがほとんど引き継がれていないということだ。

MATは、豊富な怪獣退治の経験やデータを持っているだろうに、なんてもったいない……。

◆ウルトラセブンの再就職問題

現実的に考えれば、一つの武装組織を作るのは簡単なことではない。

たとえば『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊は、富士山麓の地下に巨大な基地を建設し、山をスライドさせてウルトラホークを発進させていたが、これだけの設備を作るには、莫大な費用と長い工期を要したはずだ。

おそらく『ウルトラマン』の科学特捜隊が活躍していた頃には、ウルトラ警備隊は組織づくりも基地建設も終盤を迎えていたのではないか。

続く『帰ってきたウルトラマン』のMATも、おそらく東京湾の海底で基地工事の真っ最中。

さらに『ウルトラマンA』のTACの牧場の基地も建設が始まり……という状況だったと思われる。

では番組が終わった後、それらの組織はどうなったのか?

巨費を投じて作った組織を「1年経ったから、はい終わり」では世論が許すまい。

跡地や隊員たちの生活の問題もある。

そう考えると、後の番組ほど、たくさんの組織が同時に存在していたことになる。

そういう世界に怪獣が現れたらどうなるか?

現場にいくつもの組織が殺到し、統率の取れない乱戦が始まるか、主導権争いに明け暮れて、怪獣どころではない……といった事態に陥らないとも限らない。

この場合、特に心配なのはウルトラセブンだ。

モロボシ・ダンとしてウルトラ警備隊で活躍した彼は、その最終回でウルトラの星に帰還した。

ところがその数年後の『ウルトラマンレオ』では、再び地球にやってきて、MACの隊長に就任したのだ。

ウルトラ警備隊とMACが同時に存在していたとしたら、このモロボシ・ダンの再就職問題は物議を醸すのではないか。

ウルトラ警備隊の仲間に「ダンのやつ、ライバル組織の隊長に収まりやがって」などと陰口を叩かれる、とか……。

なぜか明かされてこなかった「正義の組織」が毎回変わる理由。

しかし、ナゾが多いだけに、こうやって想像を膨らませると、なかなか楽しいではないですか。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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