『ジュラシック・ワールド』のキメラ恐竜がすごい! 何のDNAを組み込んだか、考察すると…!?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。
マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
科学的にも興味深い映画『ジュラシック・ワールド』は、1993年公開の『ジュラシック・パーク』に始まるシリーズの4作目だ。
人間が生み出した恐竜に人間が襲われる展開は、過去3作と共通するが、大きく違う点が二つある。
一つは、恐竜見学リゾート「ジュラシック・ワールド」が、すでにオープンしていること。
いざ恐竜が檻から出たら、多数の犠牲者が出てしまう。
園内にいるお客さんの数は、なんと2万人!
もう一つは、恐竜を作った理由。
『パーク』で恐竜をよみがえらせたヘンリー・ウー博士は今回、ワールド経営者の「もっとインパクトのある恐竜を」という要請で、遺伝子を組み換えて、新種の恐竜を生み出した。
その恐竜の名は、インドミナス・レックス(以下、インドミナス)。
ティラノサウルス・レックスのDNAに、他の恐竜や生物たちのDNAをたくさん組み込んだという。
いいのか、そんなコトして!?と思うが、やってしまったものは仕方がない。
本稿では、この禁断の恐竜の実力に迫ってみよう。
◆イカの遺伝子も!
さまざまな恐竜や、他の生物のDNAを組み込んで誕生した新型恐竜インドミナス。
その姿で、まず目を引かれるのは前足だ。
ティラノサウルス・レックスは前足が退化していて、爪も2本しかない。
これは、後ろ足で走り、巨大な顎で噛みついて獲物を仕留める獣脚類に共通の特徴だ。
それに対してインドミナスは、前足がゴジラ並みに大きく、長大鋭利な爪が3本も生えている。
おそらくウー博士は、そのような前足を持つ恐竜のDNAを組み込んだのだろう。
劇中では、それがどんな恐竜のDNAによるかの説明はなかったが、映画公開時に買ったパンフレットには、DNAを採取したという4種の恐竜が載っていた。
しかしどれも獣脚類で、やはり前足が小さい。
そこで恐竜図鑑で探してみたところ、インドミナスに近い前足を持つ恐竜はスピノサウルス。
これも獣脚類だが、普段は水中で暮らし、陸上では四つ足で歩いたため、前足が退化していないのだ。
ウー博士は4種以外にも、多数の恐竜のDNAを組み込んだ様子なので、そのなかにスピノサウルスも含まれていたのでは……と筆者は予想します。
一方で、ウー博士が組み込んだことを明言していたのは、なんとイカの遺伝子だ。
どうやら、成長を速くするためにイカの遺伝子を組み込んだらしい。
前述のとおり、インドミナスはジュラシック・ワールドの集客を増やすために開発された恐竜だから、短期間に大きく育てる必要があったのだろう。
なるほどイカは、成長が速い生物の代表格。
たとえばアオリイカの場合、生まれたときの大きさは5mmほどなのに、1年で胴の長さが50cmを超えるほどにも成長する。
1年で100倍!
この成長スピードを人間に当てはめると、体長50cmで生まれた赤ちゃんが、1年で50mになるようなものであり、確かにすさまじい。
だが、イカの成長の速さは、寿命と表裏一体の関係にある。
イカの寿命はわずかに1年。
その短いあいだに、生殖可能なまでに成長しなければならないという話なのだ。
短期間に大きく育ったインドミナスも、1年で死んじゃうかもしれないのである。
◆恐竜なのに頭がいい!
インドミナスの最大の脅威は、知能が高いことだった。
この恐竜は堅固な隔離区域で飼われていたが、ある日、姿が見えなくなった。
調査員たちが檻に入ると、壁に爪痕が残っている。
「高さ12mの壁を登ったのか!?」と驚いていると、実はインドミナスは近くにいて、いきなり職員を襲う!
なんと、壁に爪痕をつけることで、逃げたふりをしていたのだ。
こうして、インドミナスは外へ出てしまうのだった……。
その賢さは、これだけではない。
体にGPS発信機を埋め込んでいたため、ワールド側は、脱走後もインドミナスの動向を掌握していた。
が、やがて発信機の動きが止まる。
武装した兵士が急行すると、発信機のついた肉片が落ちていた。
インドミナスが自ら爪か歯で取り除いたらしいのだ。
こうなるともう、どこにいるかもわからない……。
賢い! あまりにも賢い!
いくら知能が高くても、GPSの仕組みについて知らなければ、体についた異物が自分の居場所を知らせているなどと看破はできまい。
いったい何の遺伝子を組み込めば、そんなに賢くなるのか?
ま、まさか人間……!?
などなど、驚きが連続する『ジュラシック・ワールド』。
人間の身勝手さに腹を立てつつも、ジーンとくるストーリーもスバラシイです。