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『こち亀』の中川は超カネ持ちで、ワインを2億5千万本持っている! どうすればそんなに所有できる?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。今回の研究レポートは……。

クリスマスが近づくとワインを開けたくなるけど、そのたびに思い出すのが『こち亀』の中川圭一巡査である。

この人は本当にすごい。中川コンツェルンの御曹司で、警察官でありながら、自分でも大企業をいくつも経営している。

車を2万台以上も所有していたり、100円ショップを100万円ショップと勘違いしたり、50円玉以下の硬貨の存在を知らなかったり、小判を持ち歩いていたり……と、豪快な金持ちっぷりを見せる。

そして、その一つに「ワインのストック」がある。

コミックス196巻の「鑑定クイズの巻」で、両さんと麗子と中川がレストランに行った。

麗子が「この店 ワイン充実しているから迷うわ」と言うと、中川は「いや この店のワイン数は25680本だから少ないよ」。

これに続く会話のなかで、中川が「個人(ぼく)のワインリストは……256304256本のストックがあるね 今の時点で……」と述べたのだ。

256304256本とは、すなわち2億5630万4256本!

これはすごい。いったいどうすれば、そんなにたくさんのワインを所有することができるのか?

◆1日に7万本ずつ!

日本の年間ワイン流通量を調べたところ、海外からの輸入が17万9251 kL。日本ワインが1万6638kL(2017年)。普通サイズのワインボトルには750mLが入るから、本数にして合計2億6118万5333本だ。

なんと中川のワインストックは、日本の年間ワイン流通量とほぼ同じ!

もちろん、何年もかけて集めてきて、これだけの量になったのだろう。

しかし本人が「個人(ぼく)」と言っているように、中川家のものではなく、彼個人のものと思われる。収集に費やした期間もそう長くはないはずだ。

中川の年齢が28歳で、仮に20歳になった初日から買い始め、今日が28歳最後の日だとすると、収集に要した期間は9年間。

これで2億5630万4256本を集めたとしたら、1年に2847万8251本。集めながらも1日に1本飲むと考えれば、1日に7万7972本となる。

いったいいくらかかるのか、金額を想像するのもコワい。

普通に取引されるなかで最高額のワインは1本100万~300万円だという。

一方、中川の所有するいちばん安いワインは、推測するしかないので、1本2万円と仮定しよう。

ここから「最低2万円、最高300万円」「本数は値段に反比例する」と仮定して、1万円刻みで計算すると、1日に購入する7万7972本のワインの内訳はこうなる。

2万円のワイン7380本

3万円のワイン4920本

4万円のワイン3690本

5万円のワイン2952本

(中略)

299万円のワイン49.4本

300万円のワイン49.2本

価格帯は2万円から300万円まで「299」あるが、価格帯別の小計はすべて1億4760万円だ。

すると合計は、1億4760万円×299=441億3240万円!

この金額は1日のものだから、1年だと16兆1083億2600万円!

9年のあいだにうるう年が2回あったとすれば、中川がこれまでにワインに使ってきたお金は、145兆631億9880万円!

もう何がなんだかわかりません……。

◆ワインのためにビルを建設!?

中川は、これほどのワインをいったいどこにストックしているのだろうか?

ワインは品質管理のために、光と振動を避け、温度10~15度、湿度60~80%を保てる環境で、コルクが乾燥しないように横に寝かせて保存するのがよいとされている。

そこで、縦20段、横20列、ボトルが1本ずつ入る棚に、寝かせて保管すると考えよう。すると、棚1台に400本のワインが入ることになる。

2億5630万4256本を収納するのに必要な棚は、64万761台だ。

また、手元にあったワインのボトルは直径7.8cm、高さ31cm。

板の厚さを2cmとすると、これが上のように収まる棚は、高さと横が1m98cm、奥行きが33cmになる。

これが64万761台あったら、隙間なくピッチリ並べても、総面積は40万5986m²

になる。

ものすごい。日本一高いあべのハルカスの総床面積は30万6千m²だから、あべのハルカスを買い取っても、中川のワインは入りきれない!

だったら、中川が自分で専用のワイン貯蔵施設を持っていると考え、それが100階建てのビルだとしよう。

すると1階あたり6408台を置けばよい計算になる。面積を有効活用するために、レールの上で棚をスライドさせて、どこにでも人間一人が入れる幅1mのスペースを設けるなら、棚を201列×32列に並べれば、6432台の棚が一辺66mの正方形に収まる。

一辺66mというのは、横浜ランドマークタワーの1フロアとほぼ同じ大きさだが、ランドマークは70階建て。つまり中川は、自分の保有するワインを貯蔵するためだけに、現在の日本には実在しない超巨大ビルを建てているのだ(たぶん)。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

しかも、忘れてならないのは、中川のワイン収集は「1日に7万7972本」であること。

今日も明日も、新たに7万7972本ずつ届けられる可能性があり、100階建てのワイン貯蔵ビルを作っても、すぐにあふれ出してしまう。ただちに次のビルの建設を始めなければ…!

うーむ、お金持ちのワイン収集って、本当に大変なのだなあ。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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