現代フランスを代表する映画音楽作曲家エリック・セラが2024年3月、ビルボードライブ東京で来日公演を行う。

『グラン・ブルー』『レオン』『ニキータ』『フィフス・エレメント』などリュック・ベッソン監督作品の多くで音楽を手がけ、『007 ゴールデンアイ』やシルク・ド・ソレイユのショー『CRISS ANGEL Believe』でも知られるエリックだが、自ら率いるRXRA GROUPを伴っての日本上陸。銀幕を彩ってきた名曲の数々をバンド編成でプレイするスペシャルなステージとなる。

＜もう40年以上ベースを弾いてきた＞

エリックは今回、ベーシストとしてステージに上がる。

「もう40年以上ベースを弾いてきたんだ。5歳の頃からギター、そしてドラムスをやってきたけど、18歳ぐらいでベースを手にして、これこそが自分の楽器だと確信した。ライヴ・パフォーマーとしては2016年以来となる来日を前にしたインタビューで、エリックは語ってくれた。「ジャコ・パストリアスは自分の世代において神だった。それでフレットレス・ベースを弾いているんだ」

1980年代からセッション・ミュージシャンとして数々のアーティストのバックを務め、「50〜60枚のレコード」に参加してきたという彼ゆえ、映画音楽ではなかなか聴けない“ベーシスト：エリック・セラ”を体感することが出来る。

「ポップもジャズもオーケストラ・ミュージックもワールド・ミュージックも好きなんだ。だからすべてを出来る映画音楽は私に向いていた。リュックから『最後の戦い』(1983)の音楽を書いて欲しいと頼まれたとき、これだ！と思ったよ」とエリックは笑うが、その多彩な音楽スタイルをプレイするには並々ならぬテクニックとミュージシャンシップを要する。RXRA GROUPのメンバーは、そんな高いハードルを乗り越える実力派のプレイヤー達だ。

「みんな主にジャズ・シーンで活躍するミュージシャンなんだ。ティエリー・エリエスはディーディー・ブリッジウォーターと共演してきたピアニストだ。エミール・パリジャンはまだ若いけど、まるで別の惑星から来たような凄いサックス奏者だよ。みんなフランスだけでなく世界的に知られる存在だし、彼らとプレイするのは最高の経験だ」

＜リュック・ベッソンと私の間にはケミストリーがある＞

2016年の来日公演ではスクリーンに映像を投射するなどヴィジュアル的にもアピールするショーを披露したエリックだったが、今回は“An Intimate Evening with〜”と銘打って、クラブ規模でひたすら観客を音楽に浸らせるライヴとなる。即興演奏も交えながら、エリックと仲間たちがどんなプレイを聴かせるか、期待が高まる。

オーケストラやエレクトロニックなスコアをバンド編成にアレンジするのは緻密な作業では？...と思われるが、彼は「そんなことはない」と首を横に振る。

「私の曲はバンド全員が知っているから、それぞれが独自の解釈をする。楽譜なんて要らない。心で感じるんだ」

ちなみにそんなオーガニックなプロセスは、リュック・ベッソンとの関係にも似たものだという。

「そのシーンがどんな感情を呼び起こすか、キャラクターがどんな想いを抱いているか、リュックと話し合うんだ。楽譜を渡したりせず、会話でコミュニケーションを取っている。抽象的なことであっても理解し合って、化学反応を起こすんだ。スティーヴン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズ、セルジオ・レオーネとエンニオ・モリコーネ、ティム・バートンとダニー・エルフマン...彼らと同じケミストリーが私たちの間にあるんだ」

『グラン・ブルー』公開時（1988年）に初めて日本を訪れて以来、これまで「10回ぐらい」来日してきたエリックだが、ほとんどがプロモーション。日本のファンとの直接的なエネルギーの交歓は、彼にとっても刺激とスリルを伴うものだ。

初期からリュック・ベッソン監督最新作『DOGMAN ドッグマン』の楽曲まで、キャリアを通じてのクラシックスをプレイするエリックとRXRA GROUPの来日ライヴに期待したい。