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2023年12月、ザ・リターン・オブ・エマーソン、レイク&パーマー日本公演。Welcome Back

山崎智之音楽ライター
(写真:REX/アフロ)

おかえり友よ、終わりのないショーへ。2023年12月、“ザ・リターン・オブ・エマーソン、レイク&パーマー”日本公演が行われる。12月 12日(火) 13日(水)、東京・EXシアター六本木でのライヴ2デイズは、エマーソン、レイク&パーマー(以下EL&P)の音楽のセレブレーションだ。

1970年、元ザ・ナイスのキース・エマーソン(キーボード)、元キング・クリムゾンのグレッグ・レイク(ベース。ヴォーカル)、元ザ・クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン〜アトミック・ルースターのカール・パーマー(ドラムス)という人気バンドのメンバー3人が集結したスーパーグループのEL&P。レコード・デビュー前にして1970年の“ワイト島フェスティバル”で60〜70万人の大観衆を前にステージに立つという鳴り物入りのデビューを果たしている。

だが彼らは、それをさらに上回る功績をロック史に刻んでいく。『タルカス』(1971)『展覧会の絵』(1971)『恐怖の頭脳改革』(1973)などは世代を超えて名盤と讃えられ、クラシックの要素を取り入れた大作主義によって“プログレッシヴ・ロック”を代表する名グループとして君臨した。日本でも彼らの人気は高く、1972年の初来日公演は後楽園球場・甲子園球場の2大スタジアムで行われた。

Emerson, Lake & Palmer  / courtesy of Citta' Works
Emerson, Lake & Palmer / courtesy of Citta' Works

アーティスティック面でもセールス面でも目覚ましい成功を収めながら、EL&Pは何度かの解散と再集結を経てきた。それは3人の個性があまりに強かったことも理由だろう。筆者(山﨑)は彼らとそれぞれ別の機会で対面インタビューを行ってきたが、キースは「金目当ての再結成」という批判があることに対して「俺たちはお客さんの前でプレイして、正当な対価を得ている。エドガー・ブロートン・バンドみたいなチャリティ・バンドじゃないんだ!」と、何だか他のバンドを話題に巻き込んでいた。グレッグは温厚そうな外見と語り口だが、1983年にエイジアの来日公演に助っ人参加したときは、アメリカに衛星生中継される重要なライヴだというのに、ヒット・シングル「ドント・クライ」を「こんな最悪な曲は歌えない!」と拒絶する頑固な部分もあった。カールはいつもエネルギーに満ちていて、ほとんど駆け込むようにインタビュー場に現れ、質問された以上のトークをして、スタスタ早足で去っていく。思えばEL&Pには調停役がおらず、個性がぶつかると誰にも止めることが出来なかった。

一方、彼らはお互いを認めあい、敬意と愛情を抱いていた。3人が揃わずともエイジア、エマーソン・レイク&パウエル、3(スリー)など、2人が集まることは何度もあった。新たな船出を行うとき、一番信頼出来たのがこの3人だったのだ。EL&Pとしての最後のライヴは2010年、英“ハイ・ヴォルテージ・フェスティバル”だったが、もし3人が健在であれば、それ以降もきっと新たなリユニオンが実現していたに違いない。

だが、それは夢と終わった。2016年3月11日、キースが71歳で亡くなっている。彼の死はソロとしての来日公演の直前ということもあり、日本のファンに大きなショックを与えた。そして同年12月7日にはグレッグも死亡。EL&Pがひとつのステージに立つことは永遠に不可能になってしまった。

そんなEL&Pの音楽を生かし続けるべく、カールは“Carl Palmer's ELP Legacy”などの名義で世界をツアー。その最新進化系が “ザ・リターン・オブ・エマーソン、レイク&パーマー”である。

今回の来日公演はカールのライヴ・パフォーマンスと同時に巨大なLEDスクリーンに1992年のロンドン“ロイヤル・アルバート・ホール”でのキースとグレッグの勇姿を映写、ヴァーチャルなEL&P再結成が実現する。もちろん演奏されるのはEL&Pの名曲の数々だ。

ただ、カールが映像に合わせて叩くだけではなく、ライヴ・メンバーとしてポール・ビーラトヴィッチ(ギター、ヴォーカル)とサイモン・フィッツパトリック(ベース、チャップマン・スティック)が同行する。2人ともカールとの付き合いが長く、2013年に行われた“カール・パーマー・バンド”名義での来日公演にも参加した相棒たちだ。

73歳となるカールも2022年から2023年にかけて行われた北米ツアーで絶好調なドラミングを披露。単なる顔見せでない“真剣勝負”が繰り広げられることは間違いない。

キースもグレッグもいない今、“EL&Pが27年ぶり、4度目の来日!”という一部の告知に「...ん?」と首を傾げるファンもいるかも知れない。ただ、EL&Pとは3人のメンバーの集まりに留まることなく、彼らが生み出した音楽そのものであり、彼らが活動した時代とその精神である。“ザ・リターン・オブ・エマーソン、レイク&パーマー” は、EL&Pの音楽とその精神を感じる祭典なのだ。

12/13(水)のチケットは早くもソールドアウト。12/12(火)も残り少ないという。ファンにはお馴染みの「レディース・アンド・ジェントルメン...」の挨拶から、終わりのないショーのステージの幕がロール・アップする。「悪の教典#9」で歌われるとおり、これがロックンロールだ。

【CITTA’WORKS PRESENTS / SUPER LIVE 2023
ザ・リターン・オブ・エマーソン、レイク&パーマー
ーWELCOME BACK MY FRIENDSー】

■2023年12月12日(火) 13日(水)
会場:EXシアター六本木
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
http://www.cittaworks.com/event/elp/

The Return Of Emerson, Lake & Palmer ポスター / courtesy of Citta' Works
The Return Of Emerson, Lake & Palmer ポスター / courtesy of Citta' Works

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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