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【インタビュー前編】2020年3月、アンクル・アシッド&ザ・デッドビーツが初来日公演。その原点を探る

山崎智之音楽ライター
Uncle Acid & The Deadbeats(写真:Shutterstock/アフロ)

イギリスのサイケデリック/ドゥーム・ロック・バンド、アンクル・アシッド&ザ・デッドビーツが2020年3月、初来日ライヴを東京と大阪で行う。

2010年にデビュー、ヘヴィでトリップ感あふれるサウンドでアンダーグラウンドを席巻してきた彼らだが、遂にその妖しい芳香が日本に到達することになった。

ヴォーカリスト兼ギタリストのケヴィン・スターズが熱く語る日本公演への抱負を、全2回のインタビュー記事でお届けしよう。まずは前編。

<ヘヴィでカオスでダークなライヴをお見せする>

●アンクル・アシッド&ザ・デッドビーツ(以下アンクル・アシッド)の音楽性について教えて下さい。

アルバム『WASTELAND』 ジャケット(courtesy Trooper Entertainment)現在発売中
アルバム『WASTELAND』 ジャケット(courtesy Trooper Entertainment)現在発売中

ヘヴィでファジー、ノイジー、カオス。その中にメロディ、そして俺ともう1人のギタリスト、ヴォーン(ストークス)が歌う2声のハーモニーがある。2人の声がコントラストを生み出すんだ。

●アンクル・アシッドは2014年にKABUTO METALフェスでヴェノム、モービッド・エンジェル、アイヘイトゴッドと共に出演する予定だったのが中止になったので、ようやく来日が決まって嬉しいです。

うん、遂に日本でプレイ出来ることにすごくエキサイトしているよ。2014年の日本公演が中止になったとき、ガッカリしたのを覚えている。ビザも取って飛行機も予約していたし、一緒に出る予定だったバンドもすごく豪華だったしね。確か日本に行く1週間ぐらい前に中止が決まったんだ。でも当時だったら俺たちはオープニング・アクトだっただろうし、今回ヘッドライナーとしてライヴを出来るのは最高の気分だ。

●別のバンド、あるいはプライベートで日本を訪れたことはありますか?

一度もないんだ。だからすごく楽しみにしているよ。

●アンクル・アシッドのライヴはどのようなものでしょうか?

ヘヴィでカオスでダーク...あまり派手なステージ照明はないから、お客さんにとっては不安をかき立てるライヴだ。その不安を楽しんで欲しい。

●ジョン・ライス(ドラムス)とジャスティン・スミス(ベース)はそれぞれ2017年と2018年に加入した、比較的新しいメンバーですが、彼らはバンドにどんな要素をもたらしましたか?

バンドの歴代のラインアップで最もタイトでヘヴィ、攻撃的になったよ。アルバム『ウェイストランド』(2018)全体がそんな方向性に進んでいるし、まさにパーフェクトだ。

●アンクル・アシッドにはしばしば“ドゥーム”あるいは“サイケ”という形容詞が使われますが、そんな呼称についてどう考えますか?

俺たちの音楽性にはそれらの要素が少しずつあると思う。でも俺たちはそういった“シーン”に属しているつもりはないんだ。アンクル・アシッドはドゥーム・バンドではないし、サイケ・バンドでもない。そんな要素にハード・ロックやメタル、パンクなど、あらゆる要素が加わって、独自のスタイルが築かれているんだ。

●1960年代後半から1970年代前半のヴィンテージ・ハード・ロックからの影響はあるでしょうか?

確実にあるね。もちろん当時は生まれていなかったけど、好きなバンドが幾つもあるよ。カクタスが大好きなんだ。初めて聴いたのは15歳ぐらいのときだった。俺の周囲で彼らのことを話題にする人間はいなかったけど、あまりに最高なんで、完全に吹っ飛ばされた。“アンクル・アシッド”というのはカクタスのシンガーだったラスティ・デイの別バンドから取ったんだ。バンドを脱退した後、彼の最後のバンドがアンクル・アシッド&ザ・パーマネント・ダメージ・バンドだったんだ。俺が自分のバンドにアンクル・アシッド&ザ・デッドビーツと名付けたのは、彼の人生と死に対するトリビュートでもあるんだ(注:ラスティ・デイは1982年3月6日、何者かにマシンガンで射殺された。事件は未解決)。俺は1986年生まれだから、彼らの名盤といわれるアルバムはどれも生まれる前に出たものだった。だから日本やドイツ、アメリカからの輸入盤CDを探し回ったよ。当時はインターネットもようやく広まりつつあったし、YouTubeなんて便利なものはなかった。

Kevin Starrs / courtesy M&I Company and Trooper Entertainment
Kevin Starrs / courtesy M&I Company and Trooper Entertainment

<ブラック・サバスとの共演で人生が変わった>

●昔のロックは、どのように聴き始めたのですか?

両親がザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズ、ザ・キンクスのファンだったんだ。彼らにしても、リアルタイムでそういうバンドを聴いていたわけではなかった。過去のバンドを遡って聴くことにまったく抵抗がなかったのは、親の影響があったのかもね。そうしてブラック・サバスやレッド・ツェッペリンみたいなヘヴィなバンドに向かっていった。自分にとって、音楽の流行は関係なかった。それは今でもそうだ。良い音楽だったら、どんな時代のものでも聴いているよ。アンクル・アシッドのアルバムを出している“ライズ・アバヴ・レコーズ”の再発部門“ライズ・アバヴ・レリックス”も興味深いアーティストの作品を出しているね。ロジ&ピップという1960年代のハード・サイケ・バンドも良かったよ。レーベルを運営しているリー・ドリアンは音楽に詳しいし、彼を経由していろんなバンドを発見してきた。それに俺は1980年代の音楽も好きだし、そんな影響もバンドの音楽性に溶け込んでいるだろうね。

●1980年代のバンドで影響やインスピレーションを受けたのは?

ヴァン・ヘイレンやアイアン・メイデン、それからW.A.S.Pのようなヘヴィ・メタル・バンドからは多大なインスピレーションを得たよ。Skypeのプロフィール写真をW.A.S.P.のブラッキー・ローレスにしているぐらいファンなんだ(笑)。

●ギターを始めた頃、ギター・ヒーローはいましたか?

うーん、トニー・アイオミは大きな存在だし、あとはピーター・グリーンかな。ジョニー・サンダースも好きだし、ニール・ヤングのエレクトリック・ギターからも影響を受けた。

●アンクル・アシッドの音楽のどんなところにピーター・グリーンからの影響が表れているでしょうか?

具体的にこの曲!と挙げることは難しいけど、ギター・ソロのちょっとしたメロディはピーターからの影響があるんじゃないかな。彼はブリティッシュ・ブルース・ギターの最高峰だよ。フリートウッド・マックのボストンでのライヴ・アルバム(1970年/数種類の異なったタイトルでCD/レコード化されている)でのギター・プレイは本当に息を呑む素晴らしさだ。スタジオ・アルバムで最高だったのは『ゼン・プレイ・オン』(1969)だな。

●アンクル・アシッドと同時代のバンドで、共通するアティテュードを持っているバンドはいますか?

うーん、グレイヴヤードとかブラッド・セレモニーかな?もちろん彼らと俺たちでは異なった音楽をやっているけど、リスペクトしているよ。

●2013年にブラック・サバスのオープニング・アクトを務めたときの感想を教えて下さい。

すべてが夢の中のようだった。アンクル・アシッドにとって初のツアーで、専属のクルーもいないのに、いきなりスタジアムやアリーナでプレイすることになったんだからね。自分たちの音楽に対する信念はあったけど、最初に楽屋でトニー・アイオミと挨拶したのは緊張したよ。少し話した程度で、あまり彼らと交流はしなかったけど、人生が変わった経験だったね!

後編記事ではアンクル・アシッドのルーツにある奇怪な世界に、さらに深く踏み込んでいこう。

来日公演ポスター(courtesy M&I Company)
来日公演ポスター(courtesy M&I Company)

【UNCLE ACID & THE DEADBEATS Japan Tour 2020 】

3月11日(水)東京・渋谷クラブクアトロ

開場18:00/開演19:00

3月12日(木)梅田クラブクアトロ

開場18:00/開演19:00

公演ウェブサイト

http://www.mandicompany.co.jp/UncleAcid.html

【日本レコード会社公式サイト】

Trooper Entertainment

http://www.trooper.co.jp/artist_uncleacid.html

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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