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マリリオン、2018年9月来日。名曲の数々とサプライズを含むライヴ

山崎智之音楽ライター
photo by Alison Toon

●2年連続の来日公演

2018年9月、マリリオンが来日公演を行う。

2017年10月に23年ぶりの日本上陸を果たしてから、わずか1年足らずで戻ってくることになる。

ブリティッシュ・ロックの名バンド、マリリオンが初めて日本を訪れたのは、1985年12月。1994年7月に再来日したものの、それからずっと放置状態だった。それが何と、まさかの2年連続で来日!しかも今回はCLUB CITTA' KAWASAKIの30周年を記念する2公演に加えて、Zepp Nambaでの大阪公演も実現することになる。

今回の来日公演は、昨年(2017年)のCLUB CITTA'での2デイズの成功を踏まえたものだ。最新作『F.E.A.R.』からの大曲「エルドラド」「ザ・リーヴァーズ」を軸にした初日、20分におよぶ「ガザ」をオープニングに持ってきて度肝を抜いた2日目と、日替わりのセットリスト。両日ともエモーショナルでドラマチックな「アフレイド・オブ・サンライト」「キング」、前任シンガー、フィッシュ在籍時の「シュガー・マイス」などが披露され、場内は悦びと感情の昂ぶりに包まれた。

実現するまではバンドのヴォーカリスト、スティーヴ・ホガースが「日本でプレイすることはもうないかも...」と諦めかけていたという来日公演が好反応を得たことで、バンドの日本に対する情熱が高まっていったことは確かだろう。

マリリオンが同都市で複数公演を行う際、セットリストを大幅に変えることは、熱心なファンだったらご存じのとおりだ。“WEEKEND LIVE”と題された川崎2デイズでは、イギリスやヨーロッパ、アメリカ、南米で行われてきたイベント“マリリオン・ウィークエンド”と同様に、名曲の数々とサプライズを含むライヴが期待される。

“SPECIAL LIVE”と冠された大阪公演も、そのタイトル通りスペシャルになることが確実だ。

photo by A.M. Forker
photo by A.M. Forker

●1985年、初来日公演の追想

マリリオンの初来日公演から33年の月日が経つ。1985年12月に東京・大阪・名古屋を回ったジャパン・ツアーは観客動員が芳しくなく、実際に体験した者が少なかったこともあり、現在では“幻のライヴ”と呼ばれている。

当時のマリリオンは、本国イギリスでは人気の絶頂期にあった。新世代プログレッシヴ・ロックの旗手と目され、“ジェネシスの再来”と絶賛された彼らの名盤『過ち色の記憶 Misplaced Childhood』(1985)は全英アルバム・チャート1位を獲得。シングル・カットされた「追憶のケイリー Kayleigh」も全英チャート2位という、堂々トップ・バンドとしての日本初見参だった。

1985年にはイギリスを代表する夏フェス『モンスターズ・オブ・ロック』でZZトップに次ぐセミ・ヘッドライナーを務め、翌1986年の自らの野外フェス『ウェルカム・トゥ・ザ・ガーデン・パーティ』(他の出演者はゲイリー・ムーア、ジェスロ・タル、マグナム、ママズ・ボーイズ)も発表されるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いに乗っての日本上陸だった。

筆者(山崎)が見に行った12月6日、日本青年館ホールでの東京公演初日は、そんな本国での人気と較べてかなり寂しい観客動員だったが、彼らはめげることなく、全力投球のライヴで観衆を魅了した。

当時のフロントマンは身長2メートルのシンガー、フィッシュだった。かつて木こりだったという彼はバンドの最初期にはピーター・ゲイブリエルばりのフェイス・ペイントをしていたが、この時期は既に素顔でステージに上がっていた。

観客ひとりひとりに語りかけるような「独り芝居の道化師 Script For A Jester's Tear」から始まったライヴは、マリリオンの世界観を見事に表現したものだった。固唾を呑んで演奏に聴き入る日本の観衆は、イギリスではメタル・ファンからの声援にも慣れている彼らにとっては奇妙に見えたようで、フィッシュが「みんな起きてる?」と訊ねたのが記憶に残っている。

観客の反応がもうひとつだったのは、フィッシュのステージMCがスコットランド訛りで聴き取りづらかったことも一因だった。『過ち色の記憶』はコンセプト・アルバムだということもあり、完全再現が行われたが、「the next song is a very long song」というMCもヒアリングし辛かった(フィッシュはアルバム全体を1曲と捉えていたらしい)。さらにアルバム全曲を一気に通して演奏したことで、曲間に拍手や歓声を入れるタイミングを逸したこともあった。

もしかして、そんな誤解からバンドは日本と距離を置いてしまったのでは?...と妄想したりもしたのだが、2017年の来日公演が熱狂的に迎えられたことにより、これからマリリオンはガンガン日本でプレイしてくれるに違いない。

初来日公演をエクスペリエンスしたファンの心の宝箱に、その思い出は大事に仕舞われ、今日に至るまで語り継がれている。それから33年。2018年9月のライヴもまた、永くロック・ファンの心に刻み込まれ、語られることになるだろう。

photo by Alison Toon
photo by Alison Toon

【MARILLION Japan Tour 2018】

- 9月13日(木)大阪 ZEPPなんば

MARILLION “SPECIAL LIVE” in ZEPP NAMBA OSAKA

open 18:00 / start 19:00

- 9月15日(土)/16日(日)川崎 クラブチッタ

MARILLION “WEEKEND LIVE” in CLUB CITTA' KAWASAKI

open 16:00 / start 17:00

公演特設サイト

http://clubcitta.co.jp/001/marillion-2018/

【2017年来日時のインタビュー】

前編 

https://www.barks.jp/news/?id=1000151837

後編

https://www.barks.jp/news/?id=1000151918

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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