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2018年1月、伝説のヘヴィ・ロック・バンドSLEEP(スリープ)が日本初上陸

山崎智之音楽ライター
Matt Pike (Sleep) / photo by yamazaki666

2018年1月、SLEEP(スリープ)が来日する。

東京・大阪で開催されるヘヴィ・ロックの一大イベント“leave them all behind 2018”。メタルもハードコアも超越した“ヘヴィ” な アーティストが集結するこのイベントで日本初上陸を果たすのが伝説のバンド、SLEEPだ。

SLEEPは1990年にカリフォルニアで結成、『Volume One』(1992/日本未発売)、『ホーリー・マウンテン』(1993)という2枚のアルバムを発表して1998年に解散している。後者はドゥーム・メタルの名盤として25年を経て聴き継がれてきたが、彼らが神格化されることになったのは解散後に発表された『ドープスモーカー』によるものが大きい。

Sleep live / photo by yamazaki666
Sleep live / photo by yamazaki666

全1曲・63分、スローでヘヴィに突き進むこの叙事詩によってSLEEPは世界的な崇拝の対象となった。聖地エルサレムを目指すドゥーム騎士団がボング(水パイプ)を手にナザレ、シオンの山、ヨルダン川などを経て向かう魂の旅路は、崇高ですらある体験だ。

2009年に再結成した彼らの初来日公演は一部のロック・ファンにとって1981年のヨハネ・パウロ二世以来実現していないローマ法王の来日、あるいは2017年11月、“休養の時間を持つことを薦められたため”中止となったダライ・ラマの来日に比する“神事”なのだ。

SLEEPのメンバー3人は、実は日本でプレイしたことがある。ベース、ヴォーカルのアル・シスネロスはOM(オム)、ギターのマット・パイクはHIGH ON FIRE(ハイ・オン・ファイアー)、ドラムスのジェイソン・ローダーはNEUROSIS(ニューロシス)と、それぞれ別のバンドで来日経験があるのだ。だが、SLEEPの名の下に聖ならざる三位一体が実現するとき、凄まじいうねりがステージを揺るがすのだ。

なお、マットは2011年3月、HIGH ON FIREでのジャパン・ツアー(MELVINS<メルヴィンズ>、UNEARTHLY TRANCE<アンアースリー・トランス>との“Extreme The Dojo Vol.26”)で大阪・名古屋公演を行った後、東京公演を前にして東日本大震災に遭遇。そのまま東京でのライヴを行わず帰国することになった。それから約7年ぶりとなる日本公演は、彼にとっても特別な感慨があるに違いない。

Al Cisneros (Sleep)  photo by yamazaki666
Al Cisneros (Sleep) photo by yamazaki666

1月11日(木)大阪と12日(金)東京初日は“代表曲を網羅したレギュラー・セット”と発表されているが、SLEEPのライヴはいつだってスペシャルなものだ。さらに13日(土)は『ホーリー・マウンテン』完全再現というセットで臨むことで、20年以上の月日を経て実現する日本公演はさらに特別なエクスペリエンスに昇華されている。

日本のファンを驚かせるかも知れないのが、SLEEPのライヴのスケール感だ。ディープでコアな音楽性、カウンターカルチャー色もある歌詞などマニアックな要素がある彼らだが、そのプレゼンス(=存在感)は観客を圧倒するものがある。筆者(山崎)は米国ラスヴェガスでの“サイコ・ラスヴェガス”フェスティバルで2016年・2017年と2年連続で彼らのライヴを体験したが、彼らは約4千人の観衆を前に超弩級のライヴ・パフォーマンスを披露。見事なまでに会場全体をヘヴィかつダウナーに打ちのめした。

どちらの年も緑色のライトに照らされながらバンドが登場。2016年は「ドラゴノウト」、2017年は「ドープスモーカー」のイントロが響き渡った瞬間のアドレナリンの噴出は、人生でそう体験できるものではない。さらに「ホーリー・マウンテン」や「フロム・ビヨンド」、再結成後に発表された新曲「ザ・クラリティ」などが次々と繰り出され、アルバムと同様に、ライヴそのものがひとつの“旅”であった。

Sleep live / photo by yamazaki666
Sleep live / photo by yamazaki666

2017年のラスヴェガス公演ではライヴの最初と最後にボングを手にした宇宙飛行士が登場する趣向があったが、それが日本で再現されるか?という部分も含め、期待がどこまでも膨れあがるのが、SLEEPの初来日公演なのだ。

2018年1月12日(金)・13日(土)といえば東京近辺ではポール・スタンレー、THUNDER(サンダー)という強豪たちの公演も行われる。ハードな音楽を愛するファンからすると頭を抱えてしまうが、我々がSLEEPを選ぶのではない。SLEEPに導かれし運命を背負う者が、“leave them all behind 2018”に向かうのだ。

なお“leave them all behind 2018”の11日(木)大阪公演にはMUTOID MAN(ミュートイド・マン)、12日(金)東京初日にはBoris、13日(土)東京2日目にはMUTOID MAN、Nepenthes、FRIENDSHIPというラインアップが参戦。さらに14日(日)にはMUTOID MANがENDON、DISGUNDERを迎えてのヘッドライナー・ショーを行うことも発表されている(14日はSLEEPは不参加)。

“煙を辿るがいい、リフに満ちた地へ”と「ドープスモーカー」では歌われている。ドゥーム騎士団の巡礼の旅が、遂に日本に上陸を果たす。

Sleep live screen / photo by yamazaki666
Sleep live screen / photo by yamazaki666

【公演日程】

- 1/11(木)大阪:梅田Trad

SLEEP / MUTOID MAN

- 1/12(金)東京:恵比寿Liquidroom

SLEEP / Boris

- 1/13(土)東京:下北沢Garden

SLEEP performing "Holy Mountain" / MUTOID MAN / Nepenthes / FRIENDSHIP

- 1/14(日)東京:新代田Fever

MUTOID MAN / ENDON / DISGUNDER

●企画制作:Daymare Recordings

●協力:SMASH WEST/ Extreme The Dojo Web Magazine

●イベント公式facebook:facebook

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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