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【インタビュー前編】フェア・ウォーニング、2017年4月来日直前。25周年スペシャル・ライヴを語る

山崎智之音楽ライター
Fair Warning

メロディアスなサウンドで絶大な人気を誇るハード・ロック/ヘヴィ・メタル・バンド、フェア・ウォーニングが2017年4月に来日公演を行う。

デビュー・アルバム『フェア・ウォーニング』(1992)発表から25周年を記念するアニヴァーサリー・ライヴとなる本公演は、川崎のCLUB CITTA'での日替わり2デイズ。それぞれ“1993 CLUB CITTA' COLLECTION”と“2017 PIMP YOUR PAST COLLECTION”と銘打って、彼らの四半世紀におよぶ軌跡を再訪する2日間となる。

また、それに先駆けて極レアなウォームアップ・ライヴも行われる。

「フェア・ウォーニングと日本の間には、特別な絆があるんだ」と、シンガーのトミー・ハートは目前に迫る来日にエキサイト気味だ。彼とのインタビューを全2回の記事でお届けしたい。

まず前編では、日本公演に対する抱負を語ってもらおう。

●CLUB CITTA' 2デイズ公演の初日、4月22日(土)には1993年の初来日公演セットリスト+デビュー・アルバム『フェア・ウォーニング』(1992)からの楽曲をプレイするそうですが、初来日公演についてどんなことを覚えていますか?

ドイツ出身のバンドである我々にとって、日本という国はまるで別の惑星のようだった。お客さんからどんな反応があるか、想像も出来なかったんだ。でもバンドがステージに上がった瞬間、凄まじいエネルギーが押し寄せてきた。歌詞も知っていて、一緒に歌ってくれたし、夢のような経験だったよ。あまりの感動に、ステージ上で涙が出たほどだった。その夢をもう一度、日本のみんなと見たくて、今回は初来日公演のセットリストを基にしたショーをやりたいんだ。

●初来日公演ではファースト・アルバムからの曲に加えて、エルヴィス・プレスリーの「イン・ザ・ゲットー」やスモーキー・ロビンソンの「ミッキーズ・モンキー」、そしてZENOの「イースタン・サン」などもプレイしました。今回も期待できるでしょうか?

メイビー、とだけ言っておこう(笑)。1993年のショーをそのまま再現するのではなく、ちょっとしたサプライズも加えたいんだ。ZENOの曲もプレイするかも知れないし、エキサイティングなショーになるよ。川崎のクラブチッタではライヴ・ビデオも撮影したし、幾つも楽しい思い出がある。DVDやブルーレイじゃないよ、ビデオ(VHS)だ!今回はみんなと一緒に、1993年のライヴのセレブレーションをやりたい。おそらく当時会場を訪れた日本のファン達には、その後に子供が生まれた人もいると思う。そんな彼らには、ぜひ子供たちを連れてきて欲しい。フェア・ウォーニングの音楽を親子で楽しんで欲しいんだ。パパやママが若い頃に感じたスリルを体験できるなんて素晴らしいと思わないかい?

●そうしたら25年後、初来日50周年記念ライヴには、彼らも子供たちを連れてこれますね。

その通りだ(笑)。最近はロック・バンドが活動50周年というのは決して珍しくないし、十分あり得る話だと思うよ!

●2日目の23日(日)は新録ベスト・アルバム『ピンプ・ユア・パスト』(2016)で再レコーディングした曲を中心にプレイするそうですが、アレンジは『ピンプ・ユア・パスト』ヴァージョンになるのでしょうか?

『ピンプ・ユア・パスト』(KICP-1760)現在発売中
『ピンプ・ユア・パスト』(KICP-1760)現在発売中

何曲かはそうするつもりだ。同じ曲でも初日と2日目では少しだけ異なったアレンジになる。でもファン達のお気に入りのナンバーをあまり改変してしまってガッカリさせたくないから、ベーシックな部分は同じになると思うよ。それにファースト以降の曲もたくさんプレイする。初めて日本でプレイしてから、我々は何枚もアルバムを発表してきた。『レインメイカー』(1995)や『GO!』(1997)は日本で大ヒットしたんだ。「バーニング・ハート」「エンジェルズ・オブ・へヴン」「セイヴ・ミー」...それらの曲もプレイしないわけにはいかないだろう。『4』(2000)にも「アイ・ファイト」「ハート・オン・ザ・ラン」など、誇りにしている曲がある。とにかく日本のファンが聴きたい曲をたくさん準備して向かうよ。

●「エンジェルズ・オブ・へヴン」は多くのファンから“名曲”と呼ばれる、フェア・ウォーニングの代表曲のひとつですが、ミュージック・ビデオは正直トホホな内容だと思いました!アルミフォイルみたいな銀の垂れ幕をバックにしてバンドが演奏して、2人の女性がミラーボールの上で踊ったり...。

いやあ、君の言うとおりだ。あのビデオは酷い(笑)!同意するよ。元々、僕自身あまりミュージック・ビデオのファンではないけど、あのビデオは特に失敗作だ。ビデオ制作会社に依頼して、「最新の画像処理テクノロジーを使う」とかなりの制作費を取られたけど、ほとんどオンエアもされなかったし、あれ以降はああいうタイプのミュージック・ビデオは作っていないよ。覚えているのは、あの2人の女の子のメイクにえらく時間がかかって、バンドがトレーラーで何時間も待機しなければならなかったことだ。

●まあ、ウリ・ジョン・ロートの「天空よりの使者 The Night The Master Comes」のビデオの酷さと較べるとマシという気もしますが...。

OH MY GOD!僕はウリの音楽が大好きだし、彼は尊敬する友人だけど、確かにあのビデオは... ウリとフェア・ウォーニングは関係が深くて一種のファミリーだし、ダメなビデオを作るのは家系なのかも知れないね(苦笑)。「天空よりの使者」のビデオの話は、ウリとしたことがあるんだ。いちおう礼儀として、あまり悪いことは言わなかったけど、「どうだった?」「うーーーん」みたいな感じだった。ウリは僕が『スター・ウォーズ』のファンだということを知っていたから、「あのビデオで使われたコスチュームは、実際にダース・ヴェイダーが着たものなんだ!凄いだろ?」と言っていたけど、「いやぁ...」と困ってしまったのを覚えているよ。

●日本公演では『オーラ』(2009)や『サンダンサー』(2013)など、最近の曲からも選曲するでしょうか?

フェア・ウォーニングのショーには大勢のお客さんが集まってくるけど、それぞれフェイヴァリットが異なるからね。初期の曲が好きだったり、最近の曲が好きだったりする。今回のショーでは『サンダンサー』から1、2曲プレイするかも知れないけど、比較的初期の曲が多くなると思う。『サンダンサー』はハードで、少しメタル寄りのアルバムだった 。僕はメタルも好きだけど、メロディアスな曲が好きなんだ。「トラブルド・ラヴ」とかね。実際のところ、僕はメタル・シンガーではない。ハイトーンは出るし、パワフルな声質をしているけど、あえて自分を定義するならば“メロディアス・ハード・ロック・シンガー”かな。1970年代末から1980年代初めにかけてのニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(N.W.O.B.H.M.)から影響を受けたことで、もっとメタルを歌えるようになりたいけど、今ひとつうまく歌えないというジレンマは感じているよ。初期のフェア・ウォーニングのアルバムを聴くと、ほとんどポップに近いメロディがある。4月の日本公演ではバンドのメロディアスな側面を楽しむことが出来るよ。

●N.W.O.B.H.M.ではどんなバンドが好きだったのですか?

ヴェノム、レイヴン、タンク...もちろんアイアン・メイデン最初の2枚も大好きだ。ポール・ディアノは素晴らしいし、後任のブルース・ディッキンソンが加入してからのメイデンも凄い。ディオやスコーピオンズも敬愛しているけど、彼らは N.W.O.B.H.M.の範疇には入らないよね?

●フェア・ウォーニングとしての新作アルバムの予定はありますか?

ヘルゲ(エンゲルケ/ギター)とウレ(リトゲン/ベース)は既に曲を書き始めている。2018年の初めからニュー・アルバムに着手したいと考えているよ。どんな音楽性になるかは、まだ何とも言えないね。ハートを解き放って曲を書き始めると、音楽は自分の意志を持って湧き出てくるんだ。それがどんな音楽性になるのかは自分でも判らない。よりポップになるか、ヘヴィになるか、ブルージーになるか...どんなアルバムになるか、自分でも楽しみだよ。今回はもしかしたら外部プロデューサーを起用するかも知れない。ファーストのときはフォリナー、バッド・カンパニー、ジャイアントなどを手がけたレイフ・マッケンナがプロデューサーだった。久しぶりに誰かにプロデュースを任せても面白い結果が出るんじゃないかな?

●日本公演の後、フェア・ウォーニングとしての活動予定はありますか?

ヨーロッパで何回かのショーが決まっているんだ。幾つか夏のフェスティバルにも出るかも知れないし、アメリカや南米の市場にも進出していきたい。我々はフェア・ウォーニングの音楽に信念を持っているし、現状には決して満足していない。今回の日本公演が新しいスタートになればいいと考えているよ。そのためにもベストなショーをお見せするから、楽しみにして欲しいね。

後編ではフェア・ウォーニングと日本の知られざる関係、そしてトミーのバンド外の活動などについて語ってもらった。

CLUB CITTA' PRESENTS

Fair Warning フェア・ウォーニング

- 25th Anniversary Twin Special Japan Tour 2017-

●4月20日(木)- WARM UP SHOW! IN HANEDA- 【4/20“前夜祭”@ティアット スカイ ホール】

フェア・ウォーニング史上初の公開プレミアム・ウォーム・アップ・ショウ

会場:ティアット スカイ ホール /東京

OPEN 19:00 / START 19:30

WARM UP SHOW特設サイト 

http://clubcitta.co.jp/001/fairwarning/warmupshow.html

●4月22日(土)-1993 CLUB CITTA' COLLECTION-

1993年に行われた伝説の初来日クラブチッタ公演のセット・リストと共に

デビュー・アルバムを全曲網羅した「レジェンダリー・コレクション」

会場:CLUB CITTA' /川崎

OPEN 16:00 / START 17:00

●4月23日(日)-2017 PIMP YOUR PAST COLLECTION-

新録ベスト・アルバム『ピンプ・ユア・パスト』に収録されニュー・アレンジを施した名曲たちが蘇る

「リアル・ベスト・コレクション」

会場:CLUB CITTA' /川崎

OPEN 16:00 / START 17:00

日本公演公式サイト

http://clubcitta.co.jp/001/fairwarning/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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