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2016年10月、スリム・ジム・ファントムが来日。 ロカビリーで歌って踊る日本の秋

山崎智之音楽ライター
Slim Jim Phantom

2016年10月、スリム・ジム・ファントムが来日公演を行う。

“スリム・ジム・ファントム of ストレイ・キャッツ 〜Rockabilly Extravaganza〜”と銘打って行われる今回の公演についてスリム・ジムは「ロック・タウンは恋の街」「涙のラナウェイ・ボーイ」「セクシー&セヴンティーン」「気取りやキャット」などストレイ・キャッツのグレイテスト・ヒッツをプレイすると予告しているが、それに加えて1950年代ロカビリー黄金時代のスタンダードの数々も披露されることになりそうだ。

1979年にニューヨークでブライアン・セッツァー、リー・ロッカーとストレイ・キャッツを結成。古き良きアメリカを象徴するロカビリーに若く新鮮なエネルギーを吹き込んだサウンドで人気を得ている。オリジナル曲に加えてエルヴィス・プレスリー、ジーン・ヴィンセント、エディ・コクラン、カール・パーキンスらのカヴァーもステージで演奏したことで若い音楽リスナー層にもロカビリーが広まり、彼らはネオ・ロカビリー・ムーヴメントの旗手となった。

ストレイ・キャッツは1984年に解散するが、3人はそれぞれの活動、そして何度かの再結成を経ながら、現代にロカビリーを伝える役割を担ってきた。ブライアンはビッグバンド編成のブライアン・セッツァー・オーケストラや4ピースのロカビリー・ライオットなどを率いて第一線で活躍しており、日本においてもホール規模の会場をソールドアウトにする人気を誇っている。

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ストレイ・キャッツ以降のスリム・ジムの活動で興味深いのは、その人脈の幅広さだ。バンドが最初に解散すると、彼とリー・ロッカーは元デヴィッド・ボウイ・バンドのギタリスト、アール・スリックとファントム・ロッカー&スリックを結成。2000年にはモーターヘッドのレミー・キルミスター、13キャッツのダニー・B・ハーヴェイとロカビリー・プロジェクト“レミー、スリム・ジム&ダニーB”としてアルバムを発表している(後にヘッド・キャットと改名)。もちろんストレイ・キャッツ時代の盟友とのコネクションも続いており、2004年2月の『SONIC MANIA 2004』ではブライアンとスリム・ジムの双頭ユニットでの来日公演も行っている。

2015年から2016年だけでもザ・ダムドのキャプテン・センシブル、ジ・アラームのマイク・ピーターズ、リヴィング・エンドのクリス・チェニーとの“ザ・ジャック・ターズ”、グレン・マトロック、アール・スリックとの“メン・ウィズ・ノー・シェイム”ツアー、そしてグレン・マトロック、クリス・スペディングとのプロジェクトでライヴを行うなど、とにかく顔が広い。

ロカビリーを共通言語にすることによって、スリム・ジムは世代も国籍も超えたコミュニケーションを取ってきたのだ。

(余談ながらスリム・ジムはピーター・セラーズ〜ロッド・スチュワート〜フィリップ・ルイスと渡り歩いてきた“恋多き女”ブリット・エクランドを射止めるなど、男性としての魅力も持ち備えていることを証明している)

今回の来日はスリム・ジムに加えてアンドリュー・ハリガン(ギター)、マーク・ハリガン(ベース)というトリオ編成によるものだ。最小限のシンプルなドラム・キットでも知られるスリム・ジムだが、贅肉を削ぎ落としたベーシックなスタイルで極上のロカビリーを体感させてくれるだろう。

男の子は革ジャンを引っ張り出して髪をリーゼントにキメて、女の子はポニーテイルにして町に繰り出そう。2016年の秋、最大のロカビリー・パーティーがみんなを待っている。ゴキゲンなロカビリーに合わせて歌って踊ろう。

【公演日程】

10月1日(土)ビルボードライブ大阪

1stステージ開場15:30 開演16:30

2ndステージ開場18:30 開演19:30

10月3日(月)

1stステージ開場17:30 開演19:00

2ndステージ開場20:45 開演21:30

問い合わせ:ビルボードライブ 

http://www.billboard-live.com

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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