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デヴィッド・ボウイの名盤『世界を売った男』をプロデューサー、T・ヴィスコンティが日本でライヴ完全再現

山崎智之音楽ライター
T.ヴィスコンティ&W.ウッドマンジー photo by Gaz De Vere

トニー・ヴィスコンティはロックの歴史において重要な位置を占めてきたプロデューサーだ。

どれだけ重要かは、彼がプロデュースしてきたアルバムを挙げてみれば一目長髯だろう。T・レックス『電気の武者』(1971)、シン・リジィ『ライヴ・アンド・デンジャラス』(1978)、スパークス『スパーク・ショー(インディスクリート)』(1975)、ストラングラーズ『ラ・フォリー』(1981)、モリッシー『リングリーダー・オブ・ザ・トーメンターズ』(2006)…半世紀近くのあいだ、彼は数多くの名盤を手がけてきた。

そんな中でも特筆すべきなのは、デヴィッド・ボウイとの関係だ。『スペイス・オディティ』(1969)から『世界を売った男』(1970)、『ヤング・アメリカン』(1975)、『英雄夢語り』(1977)、『スケアリー・モンスターズ』(1980)、『ヒーザン』(2002)、『ザ・ネクスト・デイ』(2013)など、ボウイのキャリアの大きなターニング・ポイントとなる作品の多くで、彼は深く関わってきた。

そんな輝かしい軌跡のため、忘れられがちなのは、ヴィスコンティがプレイヤーでもあることだ。彼がT・レックスの多くの曲でピアノやキーボードを弾いていることは、熱心な音楽ファンだったらご存じだろう。

そして彼がベースをプレイしたボウイの『世界を売った男』を完全再現するというスペシャル・ライヴが日本で実現することになった。

ボウイも公認の名盤再現プロジェクト

“トニー・ヴィスコンティ and ウッディー・ウッドマンジー play 『デヴィッド・ボウイ "世界を売った男』”と題されたこの公演は、1970年代前半にボウイと共に活動したスパイダーズ・フロム・マーズのドラマー、ウッディー・ウッドマンジーが現在率いているバンド、ホーリー・ホーリーにヴィスコンティが合流する形で実現したものだ。

ウッディーは実は2001年にもサイバーノウツ名義で、1970年代のボウイの名曲をプレイするライヴを日本で行っている。このときはデフ・レパードのジョー・エリオット、フィル・コリン、そして元スパイダーズ・フロム・マーズのトレヴァー・ボルダー(後にユーライア・ヒープに加入。故人)との共演だった。

The Man Who Sold The World
The Man Who Sold The World

『世界を売った男』はタイトル曲(ニルヴァーナによるカヴァーも有名)や「オール・ザ・マッドマン」「円軌道の幅」などの名曲を収録しているが、ウッディーによるとイギリスで発売された1971年当時、マネージメントとの問題によりほとんどライヴで演奏されなかった。そのため、「当時の野望を満たすため」プレイすることにしたのだという。

今回のプロジェクトは2014年9月にイギリスのミニ・ツアーという形で始動した。それが好評だったため、今年6月のワイト島フェスティバル、そして本格的な全英ツアーが行われ、日本にも上陸することになったわけだ。

今回のプロジェクトは、1970年代前半のボウイの相棒ギタリストであり、1993年に亡くなったミック・ロンソンへのトリビュートという意味合いもある。

「ロノ(ロンソン)は『世界を売った男』で重要な役割を果たしていた。どの曲でも、彼の存在は欠くことが出来なかったんだ」とウッディーは語る。

アルバムのタイトル曲「世界を売った男」の忘れられないギター・リフがロンソンの書いたものであることからも、彼の貢献が大きかったことが判る。

なお、今回の来日公演にはロンソンの愛嬢であるリサ・ロンソンがヴォーカリストとして同行する予定だ。

また、へヴン17のシンガーであるグレン・グレゴリーも参加することになっている。彼らがボウイ・ナンバーをどのように歌うかも、期待が高まる。

今回のライヴでは『世界を売った男』を全曲演奏した後、「日本のファンのために入念に選曲した5〜6曲」のボウイ・クラシックスが披露されるという。

 The Man Who Sold The World
The Man Who Sold The World

ちなみに今回のプロジェクトはボウイ自身も公認しており、自らのウェブサイトなどでサポートの意を表明している。ウッディーはボウイと連絡を取り合っているが、彼と交わした会話の内容は「彼に敬意を表して、内緒にしておくよ」とのことだ。

トニー・ヴィスコンティ and ウッディー・ウッドマンジー play デヴィッド・ボウイ "世界を売った男"

7/6(月)

1stステージ開場17:30 開演19:00

2ndステージ開場20:45 開演21:30

7/7(火)

1stステージ開場17:30 開演19:00

2ndステージ開場20:45 開演21:30

会場:ビルボードライブ東京

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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