シルヴィ・バルタンは、彼女自身が芸術作品である

バルタン avec バルタン、2013年2月

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シルヴィ・バルタンは、彼女自身がひとつの芸術作品である。

1961年にデビューしてからフレンチ・ポップスを代表する歌手として世界中で人気を博してきたシルヴィ。「あなたのとりこ」「アイドルを探せ」「哀しみのシンフォニー」などのヒット・ソングによって、彼女は半世紀にわたってトップ・スターの座に君臨するのに加えて、時代や国境を超えた文化アイコンとして愛されてきた。

1966年から1967年にかけてテレビ放映された『ウルトラマン』は、ウルトラマンがハヤタ隊員の姿を借りていたように、こども番組の姿を借りた、文化の香りを漂わせる作品だった。“四次元怪獣”ブルトンはシュルレアリスト詩人アンドレ・ブルトンから命名されたものだし、“三面怪獣”ダダは、トリスタン・ツァラが創始したダダイスト運動から取っている。どちらも20世紀における重要な芸術ムーヴメントに関わる名称だ。そして、ウルトラマン最大の敵の一人である“宇宙忍者”バルタン星人のネーミングの元ネタであるシルヴィもまた、芸術作品のひとつと見做されていたと考えて、過言ではあるまい。

(なお、バルタン星人の元ネタはシルヴィではなく、紛争地域だったバルカン半島だともいわれているが、2013年2月の来日公演でステージにバルタン星人が登場、花束を贈呈するなど、現在ではシルヴィ語源説がオフィシャル設定となっているようだ)

フランス文化のイコンとしてのシルヴィ

シルヴィはまた、フランス文化の特異性を象徴する存在でもある。

元来、フランスは他国からの異文化流入をオープンに受け入れてきた。画家でいえばオランダ出身のフィンセント・ファン・ゴッホやスペイン出身のパブロ・ピカソ、サルヴァドール・ダリはパリを拠点として、創作活動に勤しんできた。また、ナイジェリアのキング・サニー・アデやキザイア・ジョーンズ、アルジェリアのハレドなどを挙げるまでもなく、フランスはいわゆるワールド・ミュージックの発信地だった。そんな歴史の反動で「本来のフランス文化が失われる!」と移民排斥の機運が高まり、極右政党の国民戦線が支持率を上げたりもしたのだが(失業率の上昇を移民に責任転嫁したことも大きい)、実はフレンチ・ポップス界も非フランス人アーティストが多かったりする。シルヴィはブルガリア出身だし、ジェーン・バーキンはイギリス人、「恋はAmi Ami」などで知られる美少女リオはポルトガル生まれのベルギー人シンガーだ。シルヴィはフランスを代表する歌手でありながら、あくまでエトランジェ(外国人)であるという、フランス文化の“ねじれ”を体現しているのだ。

半世紀、愛されてきたシルヴィが2014年4月来日

しばしば“女神”とすら呼ばれるシルヴィだが、常に親しみやすい存在として愛されてきた。1965年に初来日、コンサートとプロモーションを合わせると20回以上日本を訪れてきた彼女はレナウンのTVCMソング「ワンサカ娘」を日本語で歌い、近年でもステージで披露している。

もちろん、日本だけでなく、世界中のファン達が彼女の恋人だ。最近ではスウェーデンのヘヴィ・メタル・バンド、セリオンがアルバム『レ・フルール・デュ・マル/悪の華』(2012)で「想い出のマリッツァ」をカヴァーしたことからも、彼女が国籍や世代を超えて愛されていることが窺えるだろう。1944年8月15日生まれ、今年で70歳となるシルヴィだが、今もなお美しく、円熟した歌声で聴く者を魅了し続ける。

昨年、本国フランスで発表された最新アルバム『シルヴィ・イン・ナッシュヴィル』(日本では来日記念盤として4月16日発売)はアメリカで録音された、カントリー・ロック調の異色作となっている。「ジョニー・デップもマット・デイモンも、石蹴りをして遊ぶ孫みたいなものよ」と貫禄たっぷりに歌う彼女が、往年の名曲の数々をどう歌うか。3人のコーラスを含むフル・バンドでの来日公演に期待が高まる。

<Premium Stage シルヴィ・バルタン 2014 公演日程>

●ビルボードライブ大阪

4/16(水)1stステージ開場17:30 開演18:30 / 2ndステージ開場20:30 開演21:30

●ビルボードライブ東京

4/18(金) 1stステージ開場17:30 開演19:00  /  2ndステージ開場20:45 開演21:30

4/19(土) 1stステージ開場17:00 開演18:00  /  2ndステージ開場20:00 開演21:00