長引く休校 高まる児童虐待のリスクへの対策は

(写真:アフロ)

子どもの長期休暇中は虐待リスクが高まる危険

 東京都は1日、都内での新型コロナウィルスの感染拡大を受けて都立学校の休校を、ゴールデンウィークが終わる5月6日まで延長することを決定しました。

 夏休みなどの学校の長期休暇中は、親子が一緒に過ごす時間が長くなるため、虐待のリスクが高まります。

 学校が休みの間、子どもに規則正しい生活をさせるのは難しいことです。学校がなければ子どもは朝なかなか起きないですし、家で勉強させるのは大変です。私の所にも、「この長期の休校期間中に子どもがゲーム依存になってしまうのではないか心配です。」「子どもが勉強せずに、スマホばかりいじっていますが、取り上げることも出来ずに困っています。」などの相談が来ています。また、「在宅で仕事をしようとしても、子どもがいると集中出来ません。」「子どもが退屈で構って欲しいのもわかるんですが、仕事の邪魔をされるとイライラしてしまいます。」などのご相談も来ています。

 親が子どもと一緒にいる時間が長引くことで、子どもに注意をしたり、叱る頻度が増えたりしてしまうのは仕方のないことと言えます。少しの時間、子どもと離れたい、と思っても、子どもの年齢が低ければ、一緒にいなければならないですし、逃げ場がありません。また、年齢が高いと、注意しても勝手に出かけてしまったりして、心配で、家にいさせるために、やはり一緒に過ごさなくてはなりません。

 お昼ご飯も用意しなくてはならないし、家事の負担も増えます。在宅勤務が出来ず、仕事を休まなければならなくなったお母さん達には経済的な不安も重なります。そんな時に、子どもが言うことを聞かないと、カッとなって手を出してしまうこともあり得ることです。また、お父さんも在宅勤務となっていると、お父さんが「子どもがうるさい」、「仕事の邪魔だ」とカッとなって、子どもに手をあげてしまったり、お母さんにイライラをぶつけ、怒鳴ったり、叩いたり、というDVにもつながり得るのです。

品薄や買い占めによる不安の増加が子どもへの怒りにつながる

 東京都は小池都知事が週末の外出自粛を呼びかけた日から、多くのスーパーで食品が品薄状態となりました。多くのお母さん達が、家族の為に買いだめをした結果、お店の棚から食品が消えました。トイレットペーパーはSNS上のデマが原因となりましたが、その後も物流が追い付かず、売り切れ状態が続いた結果、品薄という視覚情報が、多くの人達の不安を高め、買いだめする人が続出したと言えます。

 新型コロナウィルスに感染してしまう不安、仕事が出来ない不安、経済的不安、日用品や食品が手に入らない、という不安が重なった状況の中、お母さん達は子どもから離れることが出来ず、そこで子どもが言うことを聞かなければ、子どもに対する怒りも増幅してしまいます。つまり、通常の学校の長期休暇中よりも虐待リスクが高まる、ということになるのです。

児童相談所の対応

 通常の長期休暇であれば、児童相談所は虐待リスクのある家庭については、休暇中の見守り体制の準備をします。例えば、家庭訪問の予定を入れる。学校が休みであっても、先生に子どもを学校に呼び出してもらう。両親に、学童や子育て広場などを積極的に利用するように勧める。民生委員や主任児童委員などの地域のボランティアの方に、家の周りの様子を見てもらう、などです。子どもが安全に過ごせているか、確認できる見守り体制を整えておくわけです。

 ですが、今回の休校措置はあまりに急だったので、そうした準備を整える時間はなかったはずです。その点でも、虐待リスクは通常の長期休暇よりも高まります。また、外出自粛により、子どもの姿を外で確認することも難しくなり、家という閉鎖空間で虐待が発生するリスク、エスカレートするリスクも高い状態と言えるのです。

先生たちへ、休み明けは子どもからの聞き取りを

 休校解除は各自治体に委ねられており、新学期が始まる学校と、休校が延長される学校が出てきます。新学期が始まる学校は、子どもの様子を丁寧に見てあげてください。痩せていないか、全員の体重を測ることも意味があります。また、先生たちはとても忙しいですが、子どもそれぞれから、休校期間中、どんな風に過ごしていたかを聞き取って欲しいと思います。短い時間で構いません。ちゃんと食事はとっていたか。お母さん、お父さんから怒られることはどのくらいあったか。お母さんはイライラしていなかったか。また、どんな場所に出かけていたかを聞き取ることで、子どもの行動範囲も確認できます。さらに子ども自身、イライラすることや不安になることはなかったか、を聞きだすことで、心のケアが必要な子を発見することも出来ます。親が不安になっていれば、子どもも不安になりますから、全体へのケア、個別のケアも学校として考える必要があります。

休校が続く場合、児童虐待の対策はどうなる?

 さらに休校が続く地域では、児童相談所や子ども家庭支援センター、市役所の子ども家庭課などが、虐待リスクのある家庭について、調査を重ねる必要があります。家庭訪問できなかったら、電話だけでも入れ、心配していることを伝えるだけでも効果はあります。児童相談所が子どもへの虐待を心配している、と親に伝えることだけでも虐待の抑止効果はあるのです。

 また、学校の担任の先生からお母さんやお父さんに電話を入れることも意味があります。担任の先生は、両親にとって、児童相談所より、はるかに身近な存在ですから、休校期間中に困っていること、悩みも聞けるかもしれません。電話で話をすれば、保護者が精神的に落ち着いているか、不安定になっているかもわかるはずです。もし追い詰められているようなら、公的機関への相談を勧めて欲しいです。

 また、新型コロナウィルス感染拡大については、誰もが見通しの立たない不安を抱えています。休校の延長は保護者に「この状況がずっと続くのではないか」という不安を抱かせます。新学期を待ち望んでいる保護者は、落胆もしますし、不安を増幅させます。出来ることならば、どのくらいまで休校を延長するのか、見通しを立ててあげて欲しいものです。もちろん、各自治体も見通しを立てられない状況ではあるのですが。学校の先生たちは、家で子どもをどのように過ごさせればいいのか、積極的に保護者の相談に乗ってあげ、苦しくなったら学校に電話してきても良いですよ、と伝えて欲しいです。そして本当に心配なご家族については、児童相談所や市や区に先生から連絡を入れて欲しいです。

保護者のみなさんへ

 そして、お父さん、お母さんはこの間は、子どもの生活が多少乱れても仕方がないと、考えて欲しいです。子どもが勉強しない、スマホばかりいじっている、朝起きない、お菓子ばかり食べている、など大目にみましょう。これを機に、ゲームやスマホ依存になる心配も理解出来ますが、子どもというのはちゃんと退屈を持て余し、学校に行きたい、友達に会いたい、と思うようになります。

 そしてずっと子どもと一緒で、逃げ場のないお母さん達は、苦しくなった時に身近な人に相談して下さい。お父さんが仕事に行っている間に苦しくなった時には、事前にお願いしておいて、お父さんに電話するのも良い方法です。誰かと話をすることで、少し気持ちが落ち着くはずです。

 親にとっても子どもにとっても、辛く不安な時期です。大切なのは、大人同士が協力することで、少しでも不安を解消してゆくことではないでしょうか。

※記事の一部を加筆・修正しました。