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ネット証券 米ドル為替手数料「無料化」が話題に

山口健太ITジャーナリスト
米ドル為替手数料を「無料化」(楽天証券のプレスリリースより、筆者作成)

11月30日、SBI証券が米ドル/円為替手数料の無料化を発表した後、楽天証券松井証券も相次いで無料化を発表し、話題になっています。

新NISAでは取引時の売買手数料の無料化が進んでいますが、米ドルの為替手数料についても関心が高まりそうです。

SBIに対抗? 楽天・松井も無料化へ

米国の株式やETFに投資するにあたって、避けられないのが日本円と米ドルを交換する際の為替コストです。買い付け時には手持ちの日本円を米ドルに両替し、売却した後は米ドルを日本円に戻したい人が多いでしょう。

この両替時の為替手数料について、ネット証券ではさまざまなサービスやプログラムを提供していますが、これまで筆者が最も優れていると感じていたのはSBI証券です。

SBI証券としての手数料は片道25銭、往復50銭と標準的なものでしたが、住信SBIネット銀行やSBI FXαを利用することで大幅にコストを抑えることができました。

これに対して楽天証券は、為替手数料をキャッシュバックする期間限定のプログラムを繰り返し開催しており、最近では実質で片道3銭、往復6銭となっていました。

そして11月29日、楽天証券はこのプログラムを恒久化することを発表。12月1日から米ドルの為替手数料は正式に片道3銭、往復6銭となっています。

翌30日、今度はSBI証券が米ドル為替手数料の無料化を発表。システム対応のため当面はキャッシュバックでの対応としているものの、銀行を経由するなどの工夫をすることなく無料になるのは、大きな変更といえます。

SBI証券が米ドル為替手数料を無料化(SBI証券のプレスリリースより)
SBI証券が米ドル為替手数料を無料化(SBI証券のプレスリリースより)

翌12月1日には、楽天証券と松井証券も無料化を発表。12月4日から適用され、どちらの証券会社もキャッシュバックではなく、実際に手数料を引き下げるとのことです。

楽天証券も無料化を発表した。この時点では松井証券は往復25銭となっている(楽天証券のプレスリリースより)
楽天証券も無料化を発表した。この時点では松井証券は往復25銭となっている(楽天証券のプレスリリースより)

松井証券の発表時には、楽天証券の無料化も反映されている(松井証券のプレスリリースより)
松井証券の発表時には、楽天証券の無料化も反映されている(松井証券のプレスリリースより)

無料化に至った経緯については、両社は「お客様の反応やニーズに応えた」(楽天証券広報)、「これまでにさまざまな検討をしており、今回の引き下げに至った」(松井証券広報)と説明。SBI証券への対抗策とは明言していないものの、業界の動きに素早く対応したことを示唆しています。

12月1日の夕方時点で楽天証券のWebサイトには、「片道3銭」の開始に向けて準備していたと思われる内容が掲載されています。しかし片道3銭となるのは12月3日まで。12月4日からの「無料化」はかなり慌ただしい決断だったことがうかがえます。

追記:その後、楽天証券のWebサイトは「0銭」への無料化に対応した内容に差し替えられています)

楽天証券は「片道3銭」の開始に向けて入念に準備をしていたようだ(楽天証券のWebサイトより)
楽天証券は「片道3銭」の開始に向けて入念に準備をしていたようだ(楽天証券のWebサイトより)

ネット証券主要5社の中ではSBI証券、楽天証券、松井証券が米ドル為替手数料の無料化で並んだことになります。残るマネックス証券やauカブコム証券が対抗してくるか、注目といえるでしょう。

「成長投資枠」活用の選択肢に

新NISAのつみたて投資枠では、米国株に投資できる投資信託があります。こうした投資信託は日本円で買い付けができるため、今回発表されたような為替手数料を考慮する必要はありません。

一方、成長投資枠では米国株やETFを買い付けることもできます。すでに新NISA口座では米国株やETFの取引手数料の無料化が進んでおり、為替手数料についても引き下げ競争が激化すれば、利用者にますます有利な環境になりそうです。

成長投資枠をどのように活用するかは人によって考えが分かれるところですが、米国株やETFという選択肢がさらに魅力的になったことは間違いないでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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