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X(Twitter)の有料プランは3段階に。新たな収益の柱になるか

山口健太ITジャーナリスト
Xの有料プランは3段階に(XのWebサイトより、筆者作成)

10月27日(米国時間)、Xが新たに2つの有料プランを追加することを発表しました。すでに日本でも提供が始まっているようです。

広告とは異なる新たな収益の柱として期待された有料プランですが、思うように伸びていないとの指摘もあります。新プランの登場でどう変わるのでしょうか。

有料プランは3段階に

新たに追加されたのは、これまでのプレミアム(月980円)より安い「ベーシック」(月368円)と、より高い「プレミアムプラス」(月1960円)の2つです。

1週間ほど前、イーロン・マスク氏は広告表示が減らない安価なプランと、広告表示がない高価なプランをまもなく導入すると投稿していましたが、それが実現した形になります。

各プランの違いについての公式な説明は、現時点では英語のWebサイトで公開されています。こちらは比較用に並べたものです(フルサイズの画像はこちら)。

3段階の有料プランの比較(XのWebサイトより、筆者作成)
3段階の有料プランの比較(XのWebサイトより、筆者作成)

特徴の1つが「おすすめ」と「フォロー中」のタイムラインにおける広告表示です。これまでのプレミアムでは、タイムラインに表示される広告数が50%になると説明されていました。

新たに追加されるベーシックは通常通りの数の広告が表示される一方、プレミアムプラスでは広告が表示されない仕様となっています。

プレミアムプラスの機能(XのWebサイトより)
プレミアムプラスの機能(XのWebサイトより)

注意したいのは、ここでいう広告表示は「タイムライン」に限られるという点です。返信やプロフィール、トレンドなどタイムライン以外の場所については、広告やプロモーションコンテンツが全員に表示されると説明されています。

ただ、頻繁にタイムラインを確認するようなヘビーユーザーであれば、広告に気を取られる時間を節約できるという意味で、プレミアムプラスを検討する価値はありそうです。

また、プレミアムプラスでは「返信のブースト」が最大になります。自分が投稿した返信をより多くの人に見てもらえる可能性があることから、Xで影響力を増やしたい人にもプレミアムプラスは向いているといえそうです。

一方、ベーシックについては、広告以外にもプレミアムの主要な機能が含まれていないという点に注意が必要です。

具体的には、青いチェックマークや「X Pro」(TweetDeck)といったプレミアム向けの機能に加え、収益化やアナリティクスといったクリエイター向けの機能も省かれています。

ベーシックではプレミアムの主要な機能も省かれている(XのWebサイトより)
ベーシックではプレミアムの主要な機能も省かれている(XのWebサイトより)

ベーシックを契約してできることは、投稿の編集や長文投稿、長時間の動画アップロードなどに限られています。

プランを切り替えるにはいったん現在のプランをキャンセルして再登録する必要があると説明されていますが、筆者の場合は1年プランでプレミアムを契約しており、切り替える方法は不明です。

この点については、より簡単な方法をまもなく提供する予定との説明があるので、今後の改善を待ちたいところです。

これにより有料プランが増えた形になりますが、「無料版のXがなくなることはない」と説明されています。

Q: これは無料版のXがなくなることを意味するのですか?

A: 無料版のXがなくなることはありません。X PremiumはXの体験をカスタマイズする選択肢を提供するものです。

https://help.twitter.com/en/using-x/x-premium#tbfree

新たな収益の柱になるか

これまで赤字続きとされるXですが、CEOのリンダ・ヤッカリーノ氏は2024年の早い時期に黒字化する見込みであると語っています。

Xの売上は、2022年の時点で9割を広告が占めていました。アルファベットやメタの2023年7-9月期決算では広告収入が回復基調にあることから、Xについても収支が改善している可能性があります。

一方、新たな収益の柱として期待された有料プランは伸び悩みが続いているようです。Xの有料会員数は、リサーチャーのTravis Brown氏による調査では8月時点で最大95万人程度に過ぎないとの報道があります。

この数字に月8ドルをかけると年間売上は9120万ドルになります。2022年までのTwitterの年間売上が50億ドルを超えていたことを考えると、その数十分の1に過ぎず、広告収入を補うには至っていないとみられます。

今回のプラン拡充によって、より多くのユーザーが有料プランに移行した場合でも、収益構造を変えるほどの規模になるまでには相当時間がかかりそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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