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マネックス証券がドコモの子会社に。どんなサービスが実現する?

山口健太ITジャーナリスト
ドコモとマネックスが資本業務提携(NTTドコモ提供資料などから、筆者作成)

10月4日、NTTドコモとマネックスグループが資本業務提携を発表。2024年1月にはマネックス証券がドコモの連結子会社になるといいます。

これまで投資分野に乗り遅れていたドコモが本格参入することで、どういうサービスが実現するのでしょうか。現時点で分かっていることを解説します。

d払いアプリが資産形成の入り口になる?

最近のドコモはdポイントを中心とした「ドコモ経済圏」を拡大させることで、伸び悩みが続く携帯電話事業をカバーしようとしています。

しかし資産運用については、「日興フロッギー」や「THEO+ docomo」など他社との協業にとどまっており、ドコモの証券会社といえるものはありませんでした。

一方、マネックス証券についても口座数ではSBI証券、楽天証券の2強になかなか追いつけない状況が続いていただけに、ドコモ経済圏の利用者を取り込めるのは魅力といえます。

具体的なサービスはこれから詰めていくことになるようですが、発表内容やその後の取材から、両社がやりたいことをうかがい知ることができます。

まず、入り口となるのはd払いのアプリになるようです。その中に資産形成に関する機能が追加され、投信積立やポイント運用といったサービスにアクセスできるようになります。

発表会で使われたスライド資料では、運用中の残高やポイント数などを一目で把握できるようにした、具体的な画面イメージを示しています。

発表会のスライドで示された画面イメージ(NTTドコモ提供資料より)
発表会のスライドで示された画面イメージ(NTTドコモ提供資料より)

こうした投資や積み立てのサービスを実際に提供するのが、マネックス証券の口座です。利用するには口座開設が必要になりますが、そのハードルをなるべく下げるといった取り組みも期待できそうです。

他社の事例になりますが、これはPayPayによく似ています。PayPayのアプリにある「PayPay資産運用」は、PayPay証券の口座で提供されています。PayPayアプリがPayPay証券への入り口になっているわけです。

ドコモとマネックスもこれに近いものを目指していると筆者は考えています。d払いを入り口として、これから始める人に向いている商品やサービスを分かりやすく提供するというものです。

両社の提携により、新たに「ドコモマネックスホールディングス」という中間持株会社が作られるものの、「マネックス証券」はそのままの名前で存続するとのことです。

ところで、これからdアカウントなどとの連携が進み、ドコモ色が強くなっていくことで、他の携帯キャリアを利用している人に不便が生じることはないのでしょうか。

この点について発表会の質疑応答で聞いてみたところ、「dポイントの会員基盤はドコモだけではなく、どのキャリアのユーザーにもお使いいただける」(NTTドコモの井伊基之社長)と、キャリアフリーであることを強調しています。

ただ、dアカウントはドコモ回線と紐づけるかどうかで挙動が異なり、トラブルに陥ったとの声も少なくありません。連携によって得られるメリットには期待したいところですが、dアカウント特有の問題については解消してほしいところです。

マネックスカードの投信積立はそのまま

両社の資本提携は2024年1月4日の予定となっており、そこからシステムの接続などが始まることで、具体的なサービスが実現するのはさらにその先になるようです。

新サービスが2024年開始の新NISAに間に合わなかったのは残念ではあるものの、日本のNISA口座は2000万程度しかないことから、獲得競争は始まったばかりといえます。

また、すでにドコモ経済圏を使っていて、新NISAの証券会社をどこにするか迷っている人の場合は、いまマネックス証券で開設できるNISA口座を申し込んでおけば問題ないとのことです。

マネックス証券の広報によると、マネックスカードによる投信積立のような既存サービスは、ドコモとの提携後も変わらず提供予定としています。

マネックスカードは年会費無料でありながら投信積立で1.1%のポイント還元を続けており、NISA口座では2024年9月まで最大2.2%還元に引き上げるキャンペーンも発表しています。

2023年9月時点で約224万口座のマネックス証券は、ドコモとの提携で500万口座を目指していくとのこと。ドコモ経済圏を取り込むことで業界の勢力図に変化は起きるか、注目といえるでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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