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多彩なチャージ手段が話題に 新しい「ANA Pay」の魅力を探る

山口健太ITジャーナリスト
5月23日にリニューアルした「ANA Pay」(筆者撮影)

ANAのスマホ決済「ANA Pay(エイエヌエー ペイ)」が5月23日にリニューアルし、使える場所やチャージ方法が大幅に強化されています。

実際に使ってみた上で疑問に感じた点を運営会社に聞きながら、新しいANA Payの魅力を探っていきます。

使える場所、チャージ方法も多彩に

航空会社のマイルを貯めている人は多いと思いますが、コロナ禍ではマイルが貯まる機会が減り、また貯めても使い道がないという悪循環に陥っていました。

そこでANA、JALともに、飛行機に乗らなくなった人でもマイルを活用できるよう、経済圏を広げる方向に向かっています。

2020年12月に始まったANA Payは、当初はJCBと組んだコード払いのみでしたが、今回は三井住友カードの協力により、タッチ払いとして「iD」と「Visaのタッチ決済」に対応しています。

年会費は無料でポイント還元は200円ごとに1マイル。物理的なカードはなく、スマホ内に発行されるプリペイドカードのみで、iPhoneでは「Apple Pay」に登録できます。

ANA Payプリペイドカード(Apple Payの画面より、筆者作成)
ANA Payプリペイドカード(Apple Payの画面より、筆者作成)

さっそく登録してみました。ANAの会員向け「ANAマイレージクラブ」アプリから操作し、残高にチャージするとすぐに使える状態になりました。

必須ではありませんが、本人確認(eKYC)をするとチャージ額の上限が上がります。マイナンバーカードを撮影して申請したところ、30時間ほどで完了しました。

iDやVisaのタッチ決済に対応した幅広い場所で使えるので、ANA Payに対応した店舗を探す必要はありません(ただし、一般的なプリペイドカードと同じような制限はあります)。

Apple Payのアプリ内決済にも対応しているようです。実際にマクドナルドのアプリからモバイルオーダーをしてみました。

Apple Payのアプリ内決済にも対応している(マクドナルドのアプリより、筆者作成)
Apple Payのアプリ内決済にも対応している(マクドナルドのアプリより、筆者作成)

アプリ内では16桁のカード番号と有効期限などを確認できるので、普通のVisaカードとしてオンラインでのショッピングにも使えます。

Amazonギフトカードの購入では最低15円から1円単位で利用できるので、残高の端数を使い切りたいときにも便利です。

他のプリペイドカードと異なる点としては、新しいANA Payには「キャッシュ」と「マイル」という2種類の残高があり、切り替えて使う方式になっています。

クレジットカードからのチャージは、自社のカードに限るところも増えていますが、ANA Payでは他社カードにも対応。最大5枚まで登録できるほか、Apple Pay経由でのチャージにも対応しています。

残高へのチャージ方法は多彩(ANA Payの画面より、筆者作成)
残高へのチャージ方法は多彩(ANA Payの画面より、筆者作成)

キャッシュレス決済手段として人気の「Kyash」や「Revolut」、「MIXI M」(Apple Pay経由)からのチャージもできることから、SNS上で話題になっています。

これは意図的に狙ったものなのでしょうか。運営会社のANA Xは、「これまでチャージ手段がJCBのカードに限られており、さまざまなご意見をいただいていた。これを劇的に改善し、他社と遜色ないレベルに追い付いた」(広報)と説明しています。

現金によるチャージはセブン銀行のATMに対応しています。銀行口座からのチャージについても2023年冬以降に対応予定となっています。

一方、「マイル」残高には、ANAのマイルを最低1マイルから、1マイル単位でチャージすることで、1マイル=1円として使うことができます。通常のマイルに加えて、期間や用途を限定した「グループ3」までが対象です。

1マイル=1円にそれほどおトク感はないものの、特典航空券などに交換できない端数のマイルは使い道がなかったことから、利用者からの要望が特に多かった機能としています。

また、飛行機にあまり乗らない人の利用も想定しているようです。「これまでマイルを楽天ポイントなどに交換して使われていた方でも、これからはANAの経済圏で使っていただける」(ANA X広報)としています。

とはいえ、マイルは特典航空券に使うほうが「レート」が良いことはたしかです。特におトクなのは国内線に片道3000マイルから乗れる「トクたびマイル」とのことで、これは筆者も個人的に利用しています。

今後は特典航空券以外にも1マイル=1円を超えるような使い方をANAの経済圏の中で検討していく構想もあるとのことから、楽しみにしておきたいところです。

セキュリティは?

注意点として、残高には有効期限があり、キャッシュ残高は最後に使用またはチャージしてから48か月間とプリペイドカードとしては標準的ですが、マイル残高は12か月間と短くなっています。

ANA Payの画面上でカード番号を表示するときや、Apple Payによる決済時には「Face ID」などの生体認証で守られています。この点はスマホを紛失しても安心できます。

しかしインターネット上でのカード決済については、他社のアプリが提供しているようなカードの一時停止や上限設定といったセキュリティ機能は備えていないとのことです。

最近、増加が目立つ不正利用に対しては、60日以内に報告するなど一定の条件のもとで補償されることが規約に定められています。残高と利用履歴はこまめにチェックしたほうがよいでしょう。

ANA経済圏の新たな入り口になるか

サービス開始にあわせてキャンペーンも始まり、最大6万円をチャージするなど一定条件を満たすことで合計1万マイルが還元されます(Androidユーザーはリリース後に参加可能)。

主催がANAと三井住友カードに分かれていることもあり、条件は複雑ですが、既存のANAカード利用者も対象となっていることから、まずは「ANAマイラー」にANA Payを体験してもらいたいという姿勢がうかがえます。

また、新規の利用者向けには、まずは登録が簡単なANA Payを入り口として、そこから本格的にマイルを貯めたい人にはANAカードをおすすめしていく、という方針のようです。

他の航空会社の会員でも、たまたまANAのマイルを獲得した場合、余らせるくらいならANA Payで使うことでANAの経済圏に触れる、といったケースも考えられます。

アプリの出来はやや荒削りな部分が見え隠れするものの、ANAの経済圏が拡大するきっかけになるかもしれない熱量が感じられるローンチといえそうです。

追記:

6月28日、Android版のアプリがリリースされました。Google Playストアでダウンロードできるようになっています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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