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PayPay商品券「旅先でふるさと納税」は普及するか

山口健太ITジャーナリスト
さとふるが「PayPay商品券」に対応(発表会の動画より)

11月16日、ふるさと納税サイトの「さとふる」とスマホ決済の「PayPay」が、寄付先の自治体の対応店舗で使える「PayPay商品券」を発表しました。

全国的に旅行再開の動きが広がる中、ふるさと納税が増える年末に向けて、注目のサービスになりそうです。

寄付のお礼に「PayPay商品券」

ふるさと納税では、寄付金の3割以下の割合で地場産品を返礼品とすることが認められており、いまや一大産業となっています。

返礼品としてはグルメなどの特産品の印象が強いものの、宿泊やイベントといった「体験」をお礼の品とするケースも増えてきています。

ただ、体験といっても「チケット」は送ってもらう必要がありました。自治体にはコストがかかり、利用者にとっては寄付をしてから実際に使うまでのタイムラグがあるといった問題があったといいます。

そこで新たに始まるのが、PayPayがこれに合わせて発表した新サービス「PayPay商品券」を活用する仕組みです。

単なる「商品券」では返礼品として認められませんが、このPayPay商品券は寄付先の自治体が指定する店舗でのみ使えるため、従来の体験チケットを置き換えるものといえます。

使い方としては、まずはさとふるで寄付をします。寄付額は1000円から50万円まで全15種類となる予定で、その「3割」の金額をPayPay商品券として利用できます。

たとえば1万円の寄付をすると、3000円のPayPay商品券がもらえます。支払い時には、PayPayアプリで「残高」を「商品券」に切り替え、金額を指定します。残高が余れば、複数の店舗で利用できるようです。

商品券を使える店舗は、地場産品の基準を満たした商品やサービスを提供するPayPay加盟店となっています。

実際の対応店舗にはステッカーが掲示されるとのこと。面白いのは、旅先でこのステッカーを見つけてから、その場でふるさと納税をしてもよいという点です。

つまり、これまでのように旅行前に寄付をしておく必要はなく、旅先で思い立ったときに寄付をして商品券を受け取り、すぐに利用できることになります。

他社の事例として、ふるさと納税とスマホ決済を組み合わせた「チョイスPay」がありますが、PayPay商品券は追加のシステム開発や導入作業が不要という点を優位性に挙げています。

すでに全国に普及したPayPayの基盤を利用し、ふるさと納税と結びつけるというアイデアは非常によくできている印象です。

発表時点で対応予定の自治体は約30となっていますが、「これまでにお声がけをした自治体で断られたケースはゼロ。自治体の数だけ増えていくと思う」(さとふる 代表取締役社長の藤井宏明氏)と、好感触を語っています。

PayPay側も、「どの地域にとっても悪いことはないと思う。あえて目標を問われれば、全国1800の自治体すべてに」(代表取締役社長執行役員CEOの中山一郎氏)と強気です。

PayPay商品券については、「この仕組みを活用すると、いろいろなことができる」(中山氏)として、今後の展開にも含みを持たせています。

追記:

12月12日に追加の発表があり、年内に89自治体が導入、見込み加盟店数は約1万8000か所以上に拡大。合計327自治体が導入を決定したとのことです。

https://about.paypay.ne.jp/pr/20221212/02/

絶好のタイミングに登場か

10月から始まった全国旅行支援により、観光地は混雑が続いているようです。さらに、ふるさと納税は年末にピークを迎えることから、絶好のタイミングといえます。

また、コロナ禍でいったん流れは止まったものの、消費の流れは「モノ」から「コト」に移りつつあります。モノとしての特産品に乏しかった自治体にとっても、ふるさと納税で地元を盛り上げるチャンスになるかもしれません。

実際にいつから使えるのか気になるところですが、「年内」に約30の自治体で導入し、約8000店舗以上で利用できる予定となっています。

商品券の有効期間は寄付から180日間とのことですが、どの自治体でいつサービスが始まるのか、という点には注意したほうがよいでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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