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財布を置き忘れても安心? 現在位置が分かるクレジットカードが登場

山口健太ITジャーナリスト
スマホで位置が分かるクレジットカードが登場(三井住友カード提供画像)

12月16日、三井住友カードとソフトバンク子会社のSB C&Sは、探し物トラッカー「Tile」を内蔵した新しいクレジットカードを発表しました。財布やバッグを置き忘れがちな人にとって、画期的なアイテムになるかもしれません。

探し物(忘れ物)トラッカーとして知られるTileは、鍵やカバン、ペットなどに専用のタグを付けることで、音を鳴らしたり、最後に検知した場所をスマホで確認したりする機能があります。単体でも3000円程度で買えるものですが、これをクレジットカードに内蔵したのが「三井住友カード Tile」です。

厚みは一般的なカードと同じ0.76ミリを維持しつつ、バッテリーやスピーカーを搭載。吸い込み式のATMなどでの利用は非推奨となっているものの、JIS規格のカードで1000回の曲げにも耐えられるとか。開発にあたってはSB C&Sが技術面で協力し、2〜3年を要したといいます。

単体のTile製品はかさばるのが難点で、薄型の「Slim」でも厚さは2.5ミリあります。その点、通常のクレジットカードと同じ厚さなら財布に入れても気にならないのは大きなメリットといえそうです。バッテリーが充電式というのはやや手間ですが、満充電で半年間利用でき、バッテリーが切れてもクレジットカードとしては問題なく使えるそうです。

専用充電器で充電するとTile機能を半年間利用できる(三井住友カード提供画像)
専用充電器で充電するとTile機能を半年間利用できる(三井住友カード提供画像)

具体的に役に立つ場面として、自宅や職場に財布を置き忘れる場合が考えられます。この場合、アプリで現在位置が表示されると、どこかに落としたわけではないと分かるので安心できます。

一方で、移動中に落とした、あるいは盗まれたと思われる場合にはすぐにカードを止めたほうがよいでしょう。この場合、カード会社に電話する以外にも、三井住友カードの「Vpass」アプリにはカードの利用を即時停止する機能が用意されています。

筆者の経験として、ドイツのスーパーマーケットで決済端末にカードを入れたまま取り忘れたことがありました。その後の旅程でカードを使う予定があり、カードを止めるべきかどうか、カード会社と相談しながら悩んだ記憶があります。結局、カードはお店で忘れ物として保管されていたのですが、現在位置が分かればもっと安心できたでしょう。

クレジットカード自体がスマート化する?

このクレジットカードは12月16日に募集を開始後、まずはニーズを見極める意味で初回は1500枚限定で、抽選により発行するとのこと。Tile機能を内蔵しており発行手数料は5500円かかりますが、これまでにない機能を提供しているだけに、十分に価値はありそうです。

プラスチックカード自体が進化するというのも興味深い点です。最近はApple Payのように、スマホにクレジットカードを登録できるようになり、板カードを使う機会は減りつつあります。三井住友カードでは最初から板カードを発行しない「カードレス」製品もラインナップしています。

しかし今回はTileを内蔵できたように、薄いカードの中にバッテリーや通信機能を搭載できるのであれば、他にもさまざまな機能が実現する可能性があります。クレジットカード自体が「スマート化」していくのか、来年以降の動きに注目といえるでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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