3月2日(金)の朝日新聞朝刊のスクープ以降、森友学園問題が国政の主要論点に戻ってきました。朝日新聞のスクープを同社の社説で要約すると以下の通りです。

内容が変わっているのは、15~16年の土地取引の際、近畿財務局の管財部門が局内の決裁を受けるために作った文書。

 契約当時の文書と、昨年2月の問題発覚後に国会議員らに示した文書は、起案日や番号が同じで、ともに決裁印が押されている。その一方で、開示文書では、契約当時の記述の一部がなくなっていた。

 学園の要請にどう対応してきたかを記述した部分や、学園との取引について記した「特例的な内容」「本件の特殊性」といった文言、「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」といった記載などだ。

出典:朝日新聞3月3日社説

 これが本当であれば、国家行政組織が国権の最高機関である国会を欺いていたことになり、かつ、安倍政権の国会答弁にあわせて文書の改ざんがなされたことになります。実行者が公文書偽造などの刑事罰に問われる可能性があることはもちろん、担当大臣である麻生太郎財務大臣、行政府の長である安倍首相の責任も重大と言わねばならないでしょう。

答弁を拒み引き延ばしをする麻生財務大臣と財務省

 ところが、3月2日以降、麻生財務大臣と財務省の答弁は一貫して「ゼロ回答」です。麻生大臣は「大阪地検の捜査に影響を与えるかについて予測しがたいため、答弁を差し控えねばならない」(3月2日朝日)と述べたとのことです。

 財務省は3月2日、国会で、今日(3月6日)までに調査経過を報告するとしていたのに、今日国会に提出された文書は何の意味もない、文字通りゼロ回答の文書でした。今日、財務省が国会に提出したペーパーは以下の通りです。

 ここでも「捜査に影響を与えないよう」などともっともらしいこと述べ、「すべての文書を直ちに確認できない」などと居直っています。

行政の執行に無罪推定の原則はない

 まず、内閣は「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」(日本国憲法66条3項)とされています。内閣は、国会を通じて、国民に対して無限の説明責任を負っているといえるでしょう。内閣の行政執行について、捜査への影響などと言って答弁を拒み始めたら、国民への説明責任は絵に描いた餅になります。

 特に森友学園問題について言えば、財政法9条が以下のように定めています。

第九条 国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。

 安倍内閣は、この点についてどこまでも説明責任があるのです。というか、あり得ないことですが、安倍政権が本当に文書偽造の被疑者を匿っているのだとしたら、それ自体が大問題ですよね。

文書を国会に提出して捜査妨害になることはない

 一方、国会の衆参両院が持つ国政調査権(62条)は、刑事罰に関わることでも当然ながら及びます。検察権の行使については一定の配慮が必要ですが、専門書には以下のように記載されています。

検察権の行使は行政作用であるが、法務大臣は検察官を一般的に指揮するだけで、個別的に指揮することができない(検察庁法14条)、ということにも示されているように、行政権の作用のなかでも、一定の独立性がみとめられなければならない。したがって、国会によるコントロールとの関係でも、検察権の行使は、行政権の行使一般とくらべて、相対的に高い程度の独立性が保障される必要がある。そのような観点からすると、調査の目的の点で、起訴・不起訴について検察権の自主的行使に影響を及ぼす調査、方法の点で、捜査の続行及び公訴の維持に重大な支障を及ぼす調査はゆるされない、と解される。

『註釈日本国憲法下巻』(1988年 青林書院)

 現在、籠池氏夫妻の詐欺以外で、大阪地検がどのような捜査をしているのか、そもそもこの件でやる気があるのかすら明らかではありません。また、内閣が端的に文書の改ざんの有無について国会に報告しても、検察の起訴権限行使に何の障害もないことはいうまでもないでしょう。更に言えば、刑事訴訟法239条2項は「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と定めており、国家公務員が犯罪を発見したときは、むしろ積極的に告発する義務があります。それが同僚の職務犯罪であれば尚更でしょう。そのことの兼ね合わせで考えても、文書の改ざんの有無について国会に報告することの障害は何もありません。

 「捜査に影響を与える」とすれば、国会に報告がされることによって、結果として、誰かが逮捕される可能性でしょうが、国政調査権行使の結果、刑事処罰に繋がることがあり得る自体は、証人喚問との関係ですが、裁判所も肯定しています。当然ですよね。これは、国会への報告を拒む理由にはなりません。

文書は近畿財務局にあるはず

 また、財務省は文書の原本が手元にないなどと文書で書いていますが、近畿財務局が森友学園問題で強制捜査を受けたことはないので、仮に原本が検察庁にあるとしても、それは近畿財務局が地検に任意に提出したものです。したがって、近畿財務局は提出資料のコピーを手元に控えていると思われます。そうしないと事務が滞りますので。これを国会に提出すれば足りるはずで、原本がない、などとわざとらしく書くのは、出さない言い訳をそれらしく書いていると評価されてもやむを得ないでしょう。

安倍政権の言い訳を聞きたいわけではない

 国民は、安倍首相の言い訳を聞きたいわけではありません。二種類の決裁文書があるのか。あるならまずそれを国会に出した上、「なぜそのようなことになったのか」という国民の質問に答えれば良いのです。内閣がこれをやるのに半日あれば十分です。大阪から文書(のコピー)を持ってくるのは三時間でできますからね。安倍政権は即刻文書を国会に提出すべきでしょう。もう3月2日から4日も経過しています。この程度のことを国民に説明できないのでは、内閣の行政遂行能力がないことにもなるでしょう。

国会は国政調査権の発動を

 ここへ来て、与党も重い腰を上げてきました。

自民党の二階俊博幹事長は6日の記者会見で、財務省が森友学園問題を巡る決裁文書書き換え疑惑の資料は手元にないとした説明に関し「どういう理由で資料を出せないのか、ちょっと理解できない。改めて問いただしたい」と述べた。

出典:3月6日共同通信

 与野党一致して国政調査権を行使すれば、安倍内閣が拒むことはできません。もし、与党が国政調査権の発動(またはそれを背景にした行政権との交渉)を拒むなら、疑惑にふたする手助けをしたことにもなります。

 安倍政権の生ぬるい答弁を許さない国会の動きをお願いいたします。