Yahoo!ニュース

激戦必至の男子400mハードル。注目種目は男子100mだけじゃない!

和田悟志フリーランスライター
2020年の日本選手権男子400mHは安部が連覇を果たした(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

男子400mハードルは男子100mに次ぐ激戦種目

 陸上競技では各種目で最大3人がオリンピックに出場できる。

 日本代表を勝ち取るには、有効期間内に参加標準記録を突破し、日本選手権で上位3位までに入ることが必要だ(もしくは、ワールドランクにより出場資格を得られるケースもある)。

 男子100mは、9秒台の記録を持つ4人を含む5人が参加標準を破っており、6月25日の日本選手権で優勝した多田修平(住友電工)、3位の山縣亮太(セイコー)が東京オリンピックに即内定を決めた(選考要項では日本選手権の順位が優先されるため、3人目は、標準記録突破者で最上位の小池祐貴(住友電工)が有力)。

 つまりは、9秒台の記録を持ちながらも、個人種目でオリンピックに出場できない選手が出てきた、という事態が起こったわけだ。

 日本選手権が開幕した時点で、4人以上が参加標準記録を破っていた種目(ロード種目を除く)は、男子100mの他にもう1つあった。

 それが男子400mハードル、男子100mに次ぐ激戦種目だ。

 トラック1周400mの間に高さ91.4のハードルを10台越えるという過酷な種目だが、これまでオリンピックのメダルこそないものの、世界選手権で為末大が2度の銅メダルを獲得するなど、日本勢が得意としてきた種目でもある。

安部、黒川、山内、豊田の4人が五輪参加標準記録を突破している

 今シーズンが始まった時点で、五輪参加標準記録(48秒90)を切っていたのは、世界選手権に4度出場している安部孝駿(ヤマダホールディングス)のみだった。

 だが、5月9日に東京オリンピックのテストイベントとして開催されたREADY STEADY TOKYOで、一挙に黒川和樹(法政大)、山内大夢(早大)、豊田将樹(富士通)の3人が標準記録を突破。一気に激戦の様相を呈してきた。

 そして、25日には日本選手権の予選が行われた。4選手の結果は次の通り。

山内大夢…第1組1着49秒52

豊田将樹…第1組2着49秒94

安部孝駿…第3組1着49秒59

黒川和樹…第4組1着49秒73

 と、それぞれ順当に予選通過を果たした。

 4人のうち予選のタイムでトップだった山内は、予選の走りに手応えを口にしつつも、「ハードルの部分で浮いたり、8台目に入るときに、若干ブレーキがかかってしまった」と修正点も見出していた。「もう一度48秒台と優勝を狙いたい」と決勝への意気込みを口にした。

 2連覇中で過去3度の優勝を誇る安部は、今季は不振だったが、「テストイベントが終わってからは、(痛めた)アキレス腱の治療に専念した」と試合には出ずに日本選手権に備えてきた。そして、「メンタルとコンディションを整えてきた」と、初のオリンピック出場へ調子を上げてきた。

今季好調の黒川。写真は静岡国際2位の時のもの
今季好調の黒川。写真は静岡国際2位の時のもの写真:松尾/アフロスポーツ

 今季絶好調の黒川は「追う身から追われる身になり、緊張がやばかった」と話すが、「自分が一番強いって思い込んで、前半から自分のレースをしていけば勝てると思う」と頂点に向けて抱負を口にする。

 カーブのきつい1レーンだった豊田は「レーン運がなかった」と、予選では山内の後塵を拝したが、きっちりと2着で決勝進出を決めた。「(4人の)力はトントンだと思うので、最後は気持ちの勝負になる。勝ちに行くというより、負けないように、しっかりと代表を勝ち取れるように、がむしゃらに走りたい」と意気込む。

 26日17時35分からの決勝は、

4レーンに豊田、5レーンに安部、6レーンに山内、7レーンに黒川と、4選手が並んだレーンで走ることになる。

 おそらくは、前半型の安部、黒川が前半から飛ばし、後半が持ち味の山内と豊田が追う展開になるだろう。さらに、ロンドン五輪代表の岸本鷹幸(富士通)や昨年2位の山本竜大(日大)、今季好調の川越広弥(JAWS)もおり、激戦は必至だ。

 号砲からフィニッシュの瞬間まで49秒間、目が離せないレースになりそうだ。

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

和田悟志の最近の記事