車内放置死を防げ:高松市遺棄致死事件の悲しみと怒りから

写真はイメージ(子供たちの笑顔を消さないために)(写真:アフロ)

<毎年のように起こる、子供の車内「置き去り事件」、「置き忘れ事故」。高松市の事件でも、世間の激しい声が続く。この怒りと悲しみを、事件事故防止につなげたい。他人事ではなく、私の身近にも起こるかもしれないのだから。>

■高松市女児二人車内熱中症死事件、母親逮捕の続報

高松市で母親が遺棄致死容疑で逮捕された事件。続報が続いています。報道によると、幼い女の子二人を載せたままの車は、前の晩から15時間にわたりコイン駐車場に置かれた結果、子供たちは熱中症で亡くなったとされています。

母親は、この間、酒を飲み、知人男性と会っていたとも報道されています。母親が子供に心臓マッサージをする生々しい様子も報道されました。

高松市で6歳と3歳の姉妹が車内に放置され、熱中症とみられる症状で死亡した事件で、保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された母親の竹内麻理亜容疑者(26)=同市=が3日昼ごろ、車の後部座席でぐったりする娘に心臓マッサージをしている姿が、近隣住民に目撃されていた。〜

竹内容疑者は「子どもたちが熱中症なんです」と声を震わせながら男性に告げた。男性が後部座席をのぞき込むと、ワンピースを着た姉妹の唇は青紫色で、目は見開いていた。

出典:路上に止めた車内で心臓マッサージ 姉妹放置死容疑の母 9/7(月)朝日新聞Y!

■子供の車内放置死:置き忘れ事故、置き去り事件

子供が車内に放置され熱中症等で死亡する、「置き忘れ事故」や、「置き去り事件」は、毎年のように起きています。

今年2020年6月、つくば市で2歳の女の子が車内に放置され熱中症で死亡しました。報道によると、放置した父親は「子どもを保育所に送るのを忘れていた」と話しています。

子供を忘れるなどありえないと思うかもしれませんが、同じような事故は、日本でも世界でも多数起きています。

子ども車内置き忘れは私にも!?:赤ちゃん忘れ症候群:記憶とヒューマンエラーの心理学

SNS上の投稿を見ると、大事には至らなかったものの、子供を自家用車に置き忘れたり、バスやスーパーや飲食店に置き忘れて帰ってしまった話が、いくつも見つけられます。長嶋茂雄氏が、我が子を球場に忘れて帰ってしまった話は有名です。これらの親がみんな愛がない親ではないでしょう。

2019には、富山市で生後11カ月の女児が車内に4時間放置されて死亡する事件が発生しました。母親は酒を飲み、子供を車から降ろし忘れていました。母親は重過失致死罪に問われています。

2016には大阪市で1歳の男児が車内で亡くなりました。母親は、交際相手会うため、10時間にわたり車内に子供を置き去りしたとされ、保護責任者遺棄致死罪容疑で逮捕されました。

パチンコ店の駐車場での車内放置死も、何件も起きています。2017年には、静岡県でパチスロ中の父親が1歳の男児を車内に2時間放置し、子供が亡くなりました。この父親も、保護責任者遺棄致死罪容疑で逮捕されました。

またJAFによると、2018年の8月1ヶ月だけで、子どもを車内に残したままのキー閉じこみ事故が246件にも及ぶと発表しています(車内熱中症に注意!子どもを車内に残したままのキー閉じこみ 昨年の8月は1カ月で246件!:JAF)。

JAFは、真夏の35度の炎天下では、エンジンを止め窓を閉めた状態では、わずか15分で人体にとって危険なレベルに達するとして、強い注意を呼びかけています。たとえ日陰でも大差はないということです。

イメージ写真:チャイルドシートはだだでさえ暑い(提供:写真AC)
イメージ写真:チャイルドシートはだだでさえ暑い(提供:写真AC)

■悲しみと怒りと対策

今回の事件では、二人の幼い女の子の命が失われました。残念でなりません。ヤフーのコメント欄やSNSには、車中で亡くなった子供たちへの思いを込めての、怒りと悲しみ、母親への疑念の思いの声があふれています。

今回の事件に限らず、遺棄や虐待で苦しみ続けている子供たちは大勢います。

かつては、パチンコ店の駐車場の車内に放置されて子供が亡くなる事件が続きました。しかし、現在は減少しています。

この問題に対して業界も対策を考え、「子連れ来店お断り」「車内放置は児童虐待」「見つけたら通報します」「見かけたら通報しください」と、ポスターや店内放送を続け、店員の見回りもあり、その努力の結果、事件事故は減少しました。

このような取り組みは、他の場所でも必要かもしれません。

アメリカでは、5分10分でも、子供だけを車や家に置いておくと、遺棄、虐待と見なされます。日本のルールをすぐに変えることは難しいでしょうし、賛否はあるでしょうが、アメリカでできたことが日本でできないことはないでしょう。

パチンコ業界でできたことが、他の業界でもできないことはないでしょう。今回の事件でも、誰かが子供たちを見つけ通報していたら、二人の命は助かっていたかもしれません。すぐに通報されると思ったら、人は簡単に子供を車内放置しないでしょう。

子供たちを置き去りにして死亡させた親たちは、「エアコンをつけていたので、大丈夫だと思った」と語っています。報道によれば、今回の事件の母親も同様です。しかし、結果は取り返しのつかない悲惨なものになってしまいました。

置き去りも、置き忘れも、何とかして防ぎたいと思います。

アメリカ在住の読者の方から、次のような情報をいただきました(ご本人に了解の上、ツイートを引用)。

アメリカで車を運転していると、朝のラジオ広告でしきりに『誰だってミスを犯す。毎年、子どもが車に閉じ込められて死ぬ。ロックする前に(子供がいないか)見て!(Look before you lock)』と注意喚起がある。気をつけていれば防げるという思い込みは捨て去るべき。

ヤオ・ナオラヒ @yaonaorahi

子供の置き忘れなど、そんな馬鹿なことが起きるわけがないと考えるのではなく、私にも起きるかもしれないと思うことが大切ではないでしょうか。

自分の身には起きないと思っていても、人は忘れるものであり、あるいは車中の乳幼児が、車をロックしてしまうこともあるかもしれません。ほんの少しの注意があれば、防げた事故なのですが。

では、虐待や置き去り放置死は、自分や自分の家族には絶対に起きないでしょうか。

報道によると、今回逮捕された母親は幼稚園のPTA役員であり、園長は「優しい母だと思っていた」と述べています。

一体なぜ今回の悲劇的事件が起きたのか。捜査と裁判を通し解明し、次の悲劇を防ぐ道としなくてはなりません。

置き忘れも置き去りも防ぐための法整備、私たちの意識改革、車内センサーなどのハード面の改善、できることはあるはずです。怒りと悲しみの思いを、事件事故防止への工夫につなげたいと思います。

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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