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元劇団四季の俳優「原爆は落とされたのではなく打ち上げ」:陰謀論の危険性

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:広島原爆記念日の灯籠流し(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

■元劇団四季の俳優のツイッターが炎上中

原爆は落とされたのではなく、打ち上げられた。悪いのは日本。

原爆は、アメリカとごく一部の悪徳な日本人が結託して行われたという主張のようです。「劇団四季」がこんな話題で、ツイッターのトレンド入りしました。

多くの人たちが、怒りや反論の返信をしていますが、御本人はあまり意に介さず、発言を続けています。

「発射ではないんだよ だから調べろってまずw」

「お前らの脳みそは、テレビで何度も流される情報で思考停止状態だからな せいぜい炎上させて盛り上げてくれ 後で恥かくのはお前たちだけどな」

「映像なんて幾らでも捏造できるんですよ 実際に歴史のあらゆる局面で、映像化の際に捏造しまくってますからね。 それは今も続いてる。 広島出身なら、怒りで思考停止になる前に調べてください」

一般の人々がマスコミによって毒されていて、真実が見えなくなっている。きちんと調べれば、わかるはず、という発言です。

ツイートによれば、この方は株式会社の代表取締役。オンラインサロンが三ヶ月で国内12位だそうで、なかなかのインフルエンサーのようです。

■原爆は落とされたか、打ち上げられたか

私個人は、原爆投下を証明するような物理学や兵器の知識を持っていません。日米の一次資料を調べるような、歴史学やジャーナリスティックな知識も経験もありません。

ほとんどの人が、そうでしょう。

だから、様々な人が語ることが、本当に真実なのかどうかは、わかりません。可能性は低くても、ゼロではないかもしれません。

東日本大震災は、地震兵器によって人工的に起こされた。アインシュタインの相対性理論は間違っている。すでに宇宙人は地球に来ていて、トランプ大統領と対談している。江戸っ子大虐殺が行われ、正しい江戸文化は伝えられていない。世界は、フリーメーソンやイルミナティーが支配している。

そう信じている人もいます。

■私たちはどのように世界を理解するか

私は個々の専門知識もなく、実際に現地に行って調べることもできませんが、専門家、専門機関、報道の内容から学びます。

もちろん、誰だって間違えることはありますし、批判精神は大切です。でも、学校も政府もマスコミも信じられないが、それ以外の特殊な情報なら信じるというのも、いかがなものでしょう。

「オレはアメリカ大陸なんて見たことないぞ! だから信じないぞ!」となってしまうと、世界のニュースがすべて信じられません。実際にアメリカに行っても、自分の立っている場所が世界地図上のアメリカだと自分の足で確かめるのは大変です。

だから、基本的には学校やマスコミを通して語られる内容に基づいて、世界観を作り上げます。

■陰謀論:自分だけが知っている

他の人たちとは違う特殊な信念、世界観。誰かが裏で糸を引いているといった陰謀論。その陰謀論を信じている人たちも、専門知識があるわけでもなく、アメリカの公文書資料館で直接調べたわけでもないでしょう。

でも、自分は真実を知っていると信じています。

けれども、政府もマスコミも大企業も知らないようなことを、なぜその人は知ったのでしょう。

まだ誰も知らないことを知ったと感じる人もいます。あるいは、世界が隠していることを知ったと言う人もいます。

世界中の専門家やマスコミだって、実は知っているのにみんなが黙っていて庶民をだましていると言う人もいます。

しかし実際は、専門家もマスコミも政治家も、それほど一枚岩ではありません。トップが隠そうとしても、バラしてしまう人はいるでしょう。

それでも、本当にものすごい秘密はあるでしょう。政府の極秘情報や、CIAの秘密工作、大企業の企業秘密もあるでしょう。

でも、それがどうして、何でもない普通の人に伝わってしまったのでしょうか。そのすごい秘密を、ベラベラとネットでしゃべっても、大丈夫なのでしょうか。ゴルゴ13に命を狙われないのでしょうか。

「あなただけに教える、絶対もうかる秘密情報」なんていうのも、同じですね。

自分だけが真実を知っていると感じるのは、快感でしょうが、危険もあります。

■陰謀論の危険性

ピラミッドは宇宙人が作ったといったことも、お話としては面白いと思います。私も子供のころ、そんな話をよく読みました。

でも、現実社会に関わることで陰謀論を信じてしまうのは危険です。

たとえば、オウム真理教の麻原彰晃は、国政選挙で大敗した後、「票に操作がなされた」「国家権力により弾圧を受けている。これからは武力で行く」と陰謀論を主張して武力闘争へ向いました。

「原発事故後の放射線情報は政府が操作していて、国民を騙している」なんて信じたら、偏見差別が生まれます。無用な混乱が生まれます。

自分の銀行ローンの審査が通らなかったり、世界の環境破壊が進んだりした時も、裏で秘密結社が動いていると本気で信じる人がいます。

そんなふうに考えてしまうと、本当に改善すべき問題が見えなくなり、自分の労力をありもしない秘密結社の陰謀論にむけてしまうことになります。

陰謀論に陥る人は、いわゆる「情弱」ではありません。むしろ、知性があり、世界の問題を解決したいと願い、情報収集に熱心な人です。

しかし今、世界に分断と疑心暗鬼が広がる中、陰謀論や陰謀論に基づくデマが拡散されるのは、危険です。

常識と批判精神のバランスを取りましょう。互いに頭から相手を否定するだけではなく、意味のある交流をしましょう。正しく歴史や科学を学びましょう。

そして、信頼関係を築きながら、一歩ずつ社会を変えていきましょう。

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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