都市伝説の見抜き方:東大卒業式の式辞を実践してみた:安易に拡散リツイートしないためのネットリテラシー

■東京大学卒業式の式辞がネットで話題

東京大学教養学部の卒業式で、石井洋二郎学部長が行ったあいさつが、話題になっています。

「善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます。そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽のほどを確かめようとはしなくなります」~

「あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、~皆さんに共通して求められる『教養』というものの本質なのだと、私は思います」

出典:東大卒業式、ネットで激賞 伝説の格言の内幕明かし、コピペ情報に警鐘 信州大あいさつと一緒に話題に withnews 4月6日

ネットで簡単に情報が手に入り、簡単に自分でも情報が発信できるからこそ、この態度は大切でしょう。そこで、私も実践してみました。(実際に行ったのは、このニュースも前ですけどね。)

■ネットに広まった都市伝説「ヨーロッパの公立病院で生まれた新生児には全員チップが埋め込まれる」

去年聞いた話です。とても善良で知的な方から聞いたお話でしたが、「あれ?」と思いました。

人権意識が高いヨーロッパの人たちが黙っているわけがないし、一般のニュースで聞いたことがないし、それにそのような技術が確立されているのかも疑問でした。

そこで、さっそくネットで調べます。すると、次々と、この情報が出てきました。ネット上の読者をたくさん持つ人も、書いていました。怖い、恐ろしい、ひどいといったコメントもついています。こうして、情報は広がっていったのでしょう。

ところが、日本の一般のマスコミがこの情報を扱っているページを見つけられません。ネットで拡散している人々の中で、「一次情報」(一次ソース)に言及している人は、一部だけでした。それも、全部同じページでした。スペイン語のページです(Chip obligado para los nacidos a partir de Mayo de 2014)。

2014年5月から実施とあります。これが本当なら、ヨーロッパ中、世界中のマスコミが大騒ぎするでしょう。でも、他のページではこのニュースは見つけられませんでした。

ここで、陰謀論を語る人もいるでしょう。フリーメーソンやらイルミナティーやら、悪の組織が情報操作しているのだなどと。でも、そうだとしたら、なぜ庶民にその情報が伝わってしまったのでしょう。

どうやらこれは、ネット上の誤情報のようです(すいません、スペイン読めませんが)。

■美しい都市伝説「聖書には「恐れるな」という言葉が、ちょうど365回登場する」

都市伝説には、恐ろしいもの、怖いものの他に、美しいもの、感動的なものもあります。でも、ネット上の良くできた話ほど、要注意です。

「神様は、私達に勇気を与えてくださる。何と、聖書にはちょうど365回「恐れるな」とうい言葉がある。つまり、1年中毎日、神様は私達に「恐れるな」と語りかけている」。この話も、ネット上にたくさん広がっている情報です。

私も聖書は読みますし、聖書から勇気を与えられています。でも、「ちょうど365回」というのは、「本当かな?」と思いました。

そこで、ネット上で調べてみます。まじめで善良なたくさんの方々が、この話題にふれています。ただ問題は、どれも「どこかで聞いた」「誰かが言っていた」「~だそうです」ということで、信頼できる「一次情報」一次ソースが見つかりません。「自分で数えてみたらたしかに365回でした」というページも見つけられません。

一つ、自分で数えてみたというページを見つけました。「聖書の中に「恐れるな」という言葉がちょうど365回出てくると聞いたのですが、本当でしょうか?」というYahoo!知恵袋の質問への回答です。

この方は、自分で調べました。その結果は、数え方にもよりますが、百数十回というところです。365回ではありません。そこで私も、自分で調べてみることにしました。この方は、新改訳と呼ばれる翻訳聖書で調べたので、私は口語訳で調べてみました。

ネット上には、聖書の全文検索ができるページがあります。そのページで「恐」の字の検索をかけます。あとは、手作業です。「恐れるな」とか「恐れてはいけません」「恐れるにおよびません」といった言葉を捜していきます。

結果は、新改訳で調べた結果とほぼ同様でした。多少の数え方の違いや間違いはあるかもしれませんが、とても356回はありませんでした。ちょっと数えるのは面倒でしたが、でも1時間ほどの作業でした。

あとは、「恐」の字を使わないで、「恐れるな」という意味の言葉を含めて365回という可能性はあります。しかしどのように数えれば、ちょうど365回になるのかわかりません。また、原語で調べたり、他の外国語で調べれば違うのかもしれません。私の調べ方が悪いのかもしれませんが、でも、「私が数えたら356回あった」というページを発見することはできませんでした。

■「あれ?」と感じられるネットリテラシー

ネットを長時間使用しすぎると、かえってネットリテラシーが下がるという調査もあります(総務省「平成26年度 青少年のインターネット・リテラシー指標等」)。

ネットで見る情報のすべてで一次情報までさかのぼるのは、現実的ではないでしょう。でも、「あれ?」と感じる感覚を養うことは大切だと思います。

私も騙されることはあります。上で書いた2つのことも、私の間違いかもしれません。どなたか情報をお持ちでしたら、お知らせください。そのおかげで、事実にたどり着けるかもしれません。「あれ?」と感じたことは疑ってみる、他のページも検索にかけ、一次情報源を探してみる、そうして誤情報だとわかったり、やっぱり本当だとわかれば、とても勉強になりますね。

こうして、私達の健全な批判精神と教養が育っていくのでしょう。

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東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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