遠隔オンライン授業の実際:学校と家庭の協力関係のために「無理をしない」

写真はイメージ:みんながこんなふうにできれば良いけれど(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

■遠隔授業(オンライン授業)とは

新型コロナウイルスの蔓延は、社会を変えようとしています。遠隔授業の広がりも、その一つです。

遠隔授業とは、遠隔教育システムを利用して、離れた学校や講師などとつないで行う授業のことです(文科省)。

文科省は、コロナ以前から遠隔授業を進めようとしてきました。

遠隔教育システム活用ガイドブック:文科省平成30年度

各地域のモデル校などでは実践も始まっていました。ところが、突然の休校。少し緩和されたとはいえ、分散登校などで、また通常の授業ができません。

大学などでは、夏休みまで学生の登学(登校)禁止で、すべての授業をインターネットを使った遠隔授業で実施と決めたところもあります。

大学も小中高も、大慌てで準備です。

報道によれば、4月下旬の段階で98.7パーセントの大学が遠隔授業を実施、または検討中でした。

■報道される遠隔授業、オンライン授業

全国放送でも、各地方のローカル放送でも、遠隔授業の様子が報道されています。報道される遠隔授業は、インターネットを使用した、リアルタイムの双方向授業です。

先生と生徒学生がお互いに顔を見て、言葉のやり取りをするスタイルの授業です。

こんな報道を見ると、遠隔授業とはこういうものかと思います。コロナや、これらの報道前でも、遠隔授業と言えば、教師も親も、このイメージだったかもしれません。

画面に先生の顔が映り、先生は児童生徒の顔を見ることができ、子供は家にいるけれど、教室にいるのと同じような授業が受けられるイメージです。

イメージ画像:提供イラストAC
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SF映画にも、空中に先生の大きな映像が表れて、子供は自宅にいながら学校教育を受けるシーンが出てきます。

■現在の実際の遠隔授業、オンライン授業

しかし、実際は違います。多くの遠隔授業が、このようには行われていません。

報道されるようなオンラインのリアルタイム遠隔授業は、一部のモデル校などの話です。あるいは、ある大学のリアルアイム遠隔授業が報道されたとしても、その先生はそうしていますが、他の多くの先生はリアルタイム遠隔授業を実施していなかったりします。

その先生の力量の問題もあるでしょうが、それだけではありません。

学校全体のシステムの問題として、全教員が全科目をリアルタイム遠隔授業を行うなど、不可能なところがほとんどです。

また全ての家庭にパソコンやパッドがあり、Wi-Fi環境が整っていいるわけでもありません。ましてや、両親のテレワークがあり、兄弟姉妹それぞれのネット遠隔授業があって、それで何の問題もなしという家庭は、少ないでしょう。

ある学校は、これを機に、全児童生徒にiPadの購入をさせました。各家庭に依頼したところ、問題なく各保護者は了解しました。でも、こんな学校は例外的です。

実は遠隔授業と言っても、大学などはネットを使って学生との連絡はしているものの、授業自体は文字を使った通信教育スタイルが多く見られます。

双方向性は確保されなければなりませんが、リアルタイムではなく、レポートや感想意見をネット経由で提出してもらい、教員のコメントをネットで返す形式です。

授業動画を配信する場合も、リアルタイムではなく、録画して配信していることが多いでしょう。

公立小中高に関する文科省の調査では、オンラインで同時双方向型での指導を取り入れているのはわずか5%だけでした(休校中、双方向型のオンライン指導実施は5%にとどまる。自治体間で取り組みに大きな差:ハフィントンポスト4/22)。

■今、遠隔授業はどうあるべきか

遠隔授業に関心とやる気のある先生方が、ネット上でも様々な提言やヒントを下さっています。大変結構なことで役立ちます。教員たちも学び始めています。

しかし、この緊急事態下で、「こんな素晴らしい遠隔授業の方法があるので、みなさんやってみましょう」だけでは、不十分です。

専門家は、次のように言っています。

「無理はしないで同じ形を目指さないこと:平時に戻るまでの遠隔授業のデザイン」鈴木 克明 熊本大学システム学研究センター長・教授(日本教育工学会会長):2020/04/20

下記に示したこの動画は、国立情報学研究所が発信しているもので、お話しくださっている鈴木先生は日本教育工学学会会長。というと、ちょっといかめしいですが、専門家以外が聞いてもわかりやすいお話です。

先生は、ご自身がオンライン遠隔授業を15年行ってきました。非同期(リアルタイムではない)の掲示板中心スタイルで、対面授業や遠隔講義はなしですが、教育工学の知見と遠隔教育の先進事例を生かした遠隔授業で、通信制ではなく通学過程の大学教育です。

その先生の今のお勧めは、「無理はしない」です。

「有事に平常通りの授業をやろうとしない」

「まっとうなオンライン教育は、素人にすぐにできるものではない。できる範囲で『学びを止めない』ことがが関の山と考え、期待値(目標)を下げる」ということです。

そして、対面授業と同じ形は求めず、同じ価値を求めよう。今回試みたオンラインの要素を、平時に戻ったときに活用できるようにしようと、勧めています。

教育のプロである先生方も、オンライン教育に関しては、ほとんどが素人です。

今やるべきことと、将来やるべきことを、きちんと区別しようと、鈴木先生はおっしゃっています。

■お互いに支え合うために

昨年度末の突然の休校から、学校教職員も子供も保護者も、混乱が続いています。

先生に、「家庭で勉強させてください」と言われて困っている親もいます。親に無理を言う先生もいます。

保護者に、「オンライン授業をしてください」と言われて困っている先生もいます。先生に無理を言う親もいます。

我が子や我が校の生徒に、いつも通りの教育を受けさせなければと、思いつめている人もいます。

けれども、有事に普段通りのことはできません。もちろん子供の教育は大切ですが、無理をしすぎてつぶれてしまっては困ります。

今できることを、できる範囲で、精いっぱいやりましょう。平時に戻ったら、足りない部分を補いましょう。それに、今だからこそ学べることもあるかもしれません。

保護者による学校への意見は大歓迎ですが、子供の前で先生の悪口はやめましょう。それは子供の教育にとって逆効果です。

大切なのは、相互理解と相互支援です。子供だって大変です。学校で朝から晩まで過ごすことはできますが、朝から晩までパソコンの前で遠隔授業など受けられません。一日中一人で問題集に取り組むこともできません。

先生も親も子供も大変です。そんな大変さを理解し合い、そして大人たちがスクラムを組んで、子供たちを支えていきましょう。

イメージ画像:提供イラストAC
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東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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