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子供を危険から守ろう:夏休みお盆帰省中の安全対策

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ)(写真:アフロ)

<夏休み、帰省先の祖父母宅には、危険がいっぱい!?>

■楽しい夏休み、祖父母宅への帰省だけれど

楽しい夏休み。大人はちょっと大変ですが、子供たちは大はしゃぎ。でも、毎年のように帰省中の事故は起きています。8月は、子供の事故が起きやすい時期です。

昨年、スーパーボランティアの活躍で話題になった2歳男児の行方不明も、祖父母宅に帰省中の事故でした。当時の報道によれば、母親は救い出された我が子と対面し、「生きて会えると思っていなかった」「すごくすごく、ほんとに胸がいっぱいになりました。感謝の気持ちしかありません」と語っています。

発見がもう少し遅れていれば、命に関わる事故でした。

14歳以下の子どもの死亡原因の第一位は、「不慮の事故」です(消費者庁「子供の事故の現場について」)。

海で川で山で。自宅で祖父母宅で。行き帰りの道で近所で。事故は起きます。思いもよらない事故も起きます。楽しい夏休みや里帰りが悲劇にならないために、私たちはどうすれば良いのでしょうか。どうすれば、事故を防ぐことができるのでしょうか。

■夏休み、帰省中は、なぜ危険か

○いつもとは違う

いつもとは違うということは、楽しいことでもあり、危険なことでもあります。

家ではエアコンでも、祖父母宅には扇風機があるかもしれません。自宅付近にはない踏切があるかもしれません。川も木も、楽しいけれど、慣れない子には危険性がわからないものがあるかもしれません。

○はしゃいでいる

楽しくみんなで遊ぶことはとても良いことですが、安全が守られているディズニーランドにいるわけではありません。小さな危険がいっぱいある日常生活の中に子供たちはいます。

実は、大人も気持ちが高揚していることもあります。大人も子供も、普段ならできる危険確認や安全行動が、できなくなることがあります。

○好奇心

子供は好奇心でいっぱいです。普段は行かない場所に行けば、何もかもが珍しく感じます。家の中でも外でも、触ってみたい、行ってみたいことだらけです。好奇心も冒険心も素晴らしいのですが、危険性を理解しないままでは事故に繋がります。

○子供はあえて危険に近づく

危険だとわからないで近づくだけではありません。子供は(人は)、危険だとわかっていて、あえて近づくことがあります。怖いもの見たさであり、度胸試しであり、それこそが冒険と感じることがあります。

自転車の手放し運転や、薄暗い物置への侵入など、子供は様々なことをします。警報がなっている踏切で、危険だとわかっているのに遮断機をくぐることがあります。

冒険は魅力的ですが、無謀では困ります。

○大勢の大人がいる

大勢の大人がいれば、子供の安全は守られるでしょうか。いいえ、時にはかえって危険が増します。

あなた一人で幼い子供をみていれば、目を離すことはないでしょう。でも、何人もの大人がいれば、あなた一人がずっと子供を見続ける必要はないと感じてしまいます。「責任の分散」が起きてしまうのです。

○普段は子供がいない家

乳幼児がいる家は、色々と気をつけているものですが、いつもは子供などいない家は、子供にとっては危険がいっぱいです。孫が来ると思えば片付けるでしょうが、全てを片付けることなどできません。

○疲れと焦り

子供には楽しい夏休みや祖父母宅訪問でも、親は疲れ、焦っていることもあります。人間の様々な失敗の背景に、疲れと焦りがあります。元気で余裕がある時なら起らなかったミスが、疲れと焦りの中で生まれるのです。

いつもと違う、焦りやストレスがある、そんな時、最愛の子供を置き忘れてしまうことすら起きています。

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■子供を取り巻く様々な危険

○交通事故

統計によれば、3歳の子供が13歳になるまでの10年間で、30人に1人の子供が交通事故にあっています。6歳未満の幼児の死亡交通事故の14パーセントが歩行中、75パーセントが自動車同乗中に起きています。

小学生の死亡交通事故では、歩行中29パーセント、自転車運転中30パーセント、自動車同乗中が40パーセントです。

有限会社シグナル「子どもの交通事故」

自宅付近では、親と歩きながら、その場所場所で子供に交通安全教育をしている親も多いでしょう。祖父母宅付近では、その場所ならではの交通安全教育がほとんどなされていないことを自覚しましょう。幼い子供を一人で行かせるのは危険です。

自分が運転する車で子供が亡くなる悲劇も、何とかして防ぎたいものです。

チャイルドシートをしていない子供を、残念ながらときおり見かけます。子供が嫌がるという理由をあげる親もいますが、子供を守るためには、子供が嫌がることもしなくてはいけないときもあります。

子どもにはチャイルドシートを:子どもを守るための子育て心理学

祖父母宅の駐車場での事故も、起きています。子供は、自動車を動かす前に乗せて、止まってから下ろすのが、大原則でしょう。

○水難事故

今年は海の事故を多く聞きます。ただ、統計的には子供は海よりも川でなくなっていることも知りましょう。さらに、子供は水着ではなく、普通の服で亡くなっています。

つまり、海水浴や川遊びで気をつけるのはもちろんなのですが、川べりでのバーベキューなどの時も、油断は禁物です。

大勢の大人がいると、誰かが見ていると思いがちですが、誰か1人を子供の見張り役として決めておくのも良いでしょう。

プールなど、大勢の人がいるところでも、子供は溺れます。ドラマでは、誰かが溺れると手をバシャバシャして大声をあげていますが、実際は溺れる人は静かに溺れます。

さっきまでにぎやかだった子供が静かになった時こそ、要注意です。

溺れる人を助ける方法:飛び込む勇気を冷静さに変える・溺れる人は静かに溺れる:水難事故を防ごう

○屋内家庭内で

屋内は、意外と危険です。自動車よりも家庭内の方が危険なほどです。帰省中の祖父母宅など、慣れない場所ならなおさらです。

帰省中に起こりやすい子供の事故は、誤飲や火傷です。幼児がいる家では普段から気をつけているのですが、祖父母宅ではそうはいかないこともあります。誤飲で最も危険なのは、ボタン電池です。件数が多いのは、タバコの誤飲です。3センチ程度のものなら、子供は飲み込んでしまいます。

電気ポットのコードを引っ掛けて熱湯をこぼしてしまう事故もあります。火傷事故が多く起こっている場所は台所です。

風呂の残り湯は、地震などの災害発生を考えれば、捨てずにとっておきたいところですが、幼児が溺れる事故が起きています。幼い孫が来ている間は、残り湯は捨てましょう。1歳から4歳の子供が家庭内の事故で死亡する第一の原因が、溺れることです。わずかな量でも、子供には危険です。

慣れない階段からの落下事故もありますし、寝返りもできないはずの赤ん坊がソファーから落ちることもあります。

家庭内の事故を減らすためには、家庭内で危険性が高い場所を知ることが大切です。

○迷子

迷子になったら、その場で動くなと教えておくことが基本でしょう。お店なら、お店の人に言うことも教えておきましょう。

■考えられないことが起きる

私が小学校1年生の頃、自宅そばの鉄道が高架線になりました。高架線はすでに完成していました(子供の私にはそう思えました)。ある日、いつも通っていた踏切を渡ろうとしたら、警報が鳴り遮断機が降りてきました。そのとき私は、「高架線ができたのだから電車は上を通る」と思い込み、遮断機をくぐり踏切に入っていきました。

もう少しで、電車に轢かれて死ぬところでした。ちょうど線路の真ん中に立ち、近づいて来る電車を呆然と見ていました。ほんの数メートル動けば良かったのですが、体は動きませんでした。

電車が上を通るようになれば、警報も遮断機も動くわけがありません。そんな簡単なことが、子供にはわからないのです。

乳児ならば好奇心で何でも口に入れ、歩けるようになれば階段やベランダからの落下事故や交通事故の危険性が増します。3歳、4歳が、事故の多い年齢です。大人なら指が入らないような隙間に、子供の指が挟まれることもあります。

こんなことをするはずがない。こんなところに行くはずがない。そんなことをしてしまうのが、子供なのです。

■子供の事故を防ぐために:夏休み活用法

子供の事故は防ぎたいと思います。大事故や命に関わる事故は、何としても防ぎたいと思います。では、そのためにはどうしたら良いでしょうか。海にも川にも近づけず、道路にも出さず、祖父母宅に帰省もせず、階段の上り下りもさせなければ良いでしょうか。ささいなことでも怖がる子供にすれば良いでしょうか。

けれども、一生そのままでいるわけにはいきません。子供たちは、成長とともに跳び箱を飛び、彫刻刀を使い、走り、泳ぎます。大人になれば、車の運転をし、工作機械を操作します。そうなっていけるためには、豊かな体験が必要です。

小さな怪我を怖がりすぎると、大きな怪我をしやすい子供が出来上がります。

子供を事故から守るためには、できるだけの安全を確保しながら、チャレンジさせていくことも必要です。子供を守るためには、子供を守り過ぎないことも必要です。様々な危険性を感じ取りながら、でも恐がらない子供を育てたいと思います。

いつもなら怖がりの子供も、夏休みなら冒険心に火がつくかもしれません。

「両親はもちろん、祖父母からの愛で包まれることで、子供は自分を大切にすることを知り、乱暴や無謀なことを避けるようになります。そして祖父母をかばう思いから、正しい勇気も湧いてきます」(「祖父母の役割、両親の役割:里帰りとお盆玉の季節に」Yニュース有料)。

夏休み。いつもとは違う特別な時間を、親子でたっぷり楽しみましょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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