溺れる人を助ける方法:飛び込む勇気を冷静さに変える・溺れる人は静かに溺れる:水難事故を防ごう
■水難事故
暖かい季節になりました。行楽シーズンです。水遊びも気持ちの良い季節です。でも残念ながら、毎年水の事故のニュースが増える時期でもあります。
警察の統計によると、昨年2013年度の水難者数は1656人。死者行方不明者数は795名です。さらに、例年水難事故の5割が6〜8月に発生しています。
水辺で遊んでいて水に落ちる人がいます。川は、想像以上に危険です。海は、離岸流につかまったら水泳選手でも逆らって泳ぐことは困難です。静かな海岸でも、数十分に一度大波がやってきます。
子どもが溺れて、救助に向った大人が被害にあうニュースも毎年のように聞きます。本当に残念なことです。
■溺れた人を助ける方法
自分が水に入るのは、最後の方法です。飛び込んで、泳いで行って助け出すのは、最後の最後の方法です。まずは、できるだけ水に入らないで助けることを考えます。
1浮き輪などを投げる。
浮き輪、ペットボトル、ふくらましたビニール袋、バッグ、クーラーボックスなど、何でも良いので浮くものを投げます。ペットボトルなどは、水が少し入っていた方が、遠くに投げることができるでしょう。
2ロープなどを投げる。棒などを伸ばす。
手を伸ばして助けられれば良いですね。でも、自分が引き込まれないように、柵につかまったり、腹這いになる方が良いでしょう。
手が届かなければ、ロープ、ズボンのベルト、上着を脱いでロープ代わりに投げる、棒や板などを伸ばします。何でも良いので、周囲にある長いものを使いましょう。
3水に入って助ける(人間の鎖など)
水に入って助ける場合でも、できるだけ片手で柵などにつかまります。その上で、手が届かなければ、棒を伸ばしたり、服をロープ代わりにして投げます。
それでも届かなければ、人間の鎖を作ります。誰かが電柱や柵につかまり、その人と手を結び合って(お互いの腕を握り合って)、人間の鎖を長くして行き、溺れている人を助けます。
できるだけ水に入らないで助ける。水に入る時は、陸の人とつながるのが、大原則です。
最後の最後の手段として、泳いで助ける選択をした場合でも、浮き輪になるものを持って入る、周囲の人との連携を取るなどが必要です。
■飛び込んで助けようとしない
私の友人で、もと「海猿」の人がいます。ドラマや映画に出てくる話はもちろんフィクションですが、訓練シーンは実際にその通りだと言っていました。海上保安庁に入る前から、体力自慢、泳ぎ自慢の人です。その人が、猛烈に厳しい訓練を受けます。その上で、仲間と共に、装備や様々な準備を整えて、人命救助に当たります。
海水浴場のライフガードも本来は同様でしょう。訓練を受け、機材を使い、協力しあいながら、人命救助に当たります。
素人が、いきなり水に飛び込んで助ける行為は、とても危険です。
それでも、飛び込みたくなる人の気持ちは立派です。気持ちは立派ですが、ドラマのような助け方は、実際は難しいようです。助けられないどころか、さらに被害を大きくする可能性もあります。
子どもが溺れているのに加えて、大人も溺れたらどうでしょう。周囲の人も、プロも、二人を探し助けなくてはなりません。勇敢に飛び込む人は、本当に立派です。でも、その勇気を冷静な行動に表せたらと思います。
■溺れる人は静かに溺れる
ばしゃんと水に落ちた場合などは、大きな音がするでしょう。でも、泳いでいた人が溺れる場合には、ドラマにあるようにバシャバシャともがいて大声で助けを呼んだりすることはあまりありません。
むしろ、元気な声や水音が消え、静かになります。音が聞こえなくなった時こそ、緊急事態かもしれません。
ニューズウイーク日本語版(2013.7.30)「水の事故は静かに起きる」の記事によると、溺れる人は多くの場合次のようになります。
- 溺れている人は助けを呼ぶことができない。息をするのが精一杯で声が出せない。
- 溺れている人は手を振って助けを求めることができない。顔を水の上に出すことで精一杯で、腕を高く上げる余裕はない。そのような形でバランスを取ることはできない。
- 溺れて必死になっている人は、体が水中で垂直の姿勢になり、20秒〜1分で水中に沈み始める。
溺れた人の話を聞くと、必死になってもがいて岸にたどり着いたという人もいます。もがいたために、水草が体が巻き付いて死にそうになったという人もいます。さらに死の危険性が近づいた人の話を聞くと、3の状態で、静かに体が水中に沈んでいきます。
溺れた場合には、泳ぐことよりも、体を水平にして浮かぶことを考えろと言われます。その通りにできれば良いのですが、冷静さを失うと、体は沈みます。
私の友人は、溺れて意識が遠のく中、水中に沈みながら水面が見えて、泡がぶくぶく上って行く光景が妙にきれいだったと語っていました。周囲が気づいてくれず、もう少し救助が遅れていたら、死んでいたでしょう。
大声を上げてくれれば周囲も気づきますが、溺れる人は静かに溺れるので、子どもは目を離したすきに溺れます。プロは、元気に遊んでいた子どもが静かになったときこそ、注意を払います。
■人を助けること・命を守ること
緊急事態の中で、何が最も適切なのかは、ケース・バイ・ケースです。究極の判断を迫られることもあるでしょう。ただ多くの場合、周囲には何人もの人がいて、いろんな道具もあるはずです。溺れた人が、川下の人や、ボートの人など他の人に助けられることもあります。みんなの協力で、命が助けられることもあります。
溺れている人の命も、あなた自身の命も守るために、事前に様々なケースを考えておきましょう。様々な救助方法があると、知っておきましょう。飛び込むことだけが、救助方法ではありません。
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