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学校はコンビニではない。でも24時間対応です。

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ)(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

<代表電話は留守電でも、つながる電話はあります。そして緊急事態なら、学校は24時間全力で対応しています。>

■学校時間外対応論争

最近、学校では夕方以降電話がつながらなくなっています。6時以降は留守電になる学校などが増えつつあります。

そこで、テレビに出演したあるママさんタレントさんが、緊急の事態も考えられるのだから、時間外対応しないのはおかしいと発言し、賛否両論の意見が出され、ちょっとした話題になっています。

「18時以降、学校、教師は対応しません」についてどう考えるか:ヤフーニュース個人(妹尾昌俊氏)>

教師の労働時間外でも、トラブルは無数に考えられます。そのどきはどうするのが正しいのでしょうか。

「学校、教師は対応する『責任はありません』、と考えるのが妥当です」「学校の責任外で起きたトラブル等については、保護者が対応するべきであり、警察に相談いただくというが筋」と妹尾先生は上記の記事でおっしゃっています。

もちろん、教師としての「教師の使命感や責任感」の問題はあるのですが、「そのことと、それを強要してよいかは、別問題です」ともおっしゃっています。

その通りです。同感です。

しかし、実際の学校ではどうでしょうか。

■学校での時間外対応の実際

全国の学校を調査したわけではなく、当地の学校の話ですが、おそらく全国的に類似の対応だと思います。

夕方以降、学校の代表電話は留守電になります。しかし連絡はつきます。

学校には時間外の緊急時のために、いつでもつながるの携帯電話が用意されています。その電話は、教頭先生など担当者が持っています。そのようになっていると、各学校の保護者にも連絡がいっています。

これまでは、何時でも学校に誰かが残っていれば、かかってきた電話には出ました。保護者からの電話もありますし、様々な関係者からの電話もあります。夜9時でも10時でも、誰かがいれば電話に出ます。

朝7時でも、6時でも、教職員の誰かがいれば電話にでます。昼休みでも、電話に出ます(給食の時間は給食指導の時間であり、そのあとで昼の休憩時間が設定されていますが、実際に休憩している人は皆無で、みなさん仕事をしています)。

でも、夜何時でも普通に電話対応するのはやめようと、考え始めました。教職員も労働者です。会社でもどこでも、営業時間外に代表電話にかければ、「本日の営業は修了いたしました」とテープが流れるのは、ごく普通のことでしょう。

ただし、もちろん緊急事態は発生します。保護者のみなさんには、緊急時にはこちらにお電話くださいと、緊急用携帯電話の番号が伝えられています。何が緊急かは判断が分かれますが、コンビニのようにいつでも何でもOKではないということを保護者のみなさんにご理解いただくことは大切だと思います。

「夕方以降留守電では、緊急時はどうする!」という保護者からの不安、不満は、現場では出ないと思います。つながる緊急用電話があるのですから。

■学校をコンビニにしてはいけない

コンビニの店長さんも大変だと最近話題になりましたが、長時間窓口を開いている場所は、たいてい早番遅番があるように、体制を整えて長時間対応をしています。でも学校は違います。

どんなに夜遅くまで生徒対応などで学校に残っていても、翌日はまた朝早く出勤です。先生が電話に出てくれるからと言って、急ぎの用事でもないのに、何時でも学校に電話をかけても良いと思っている保護者がいたとしたら、それは問題だと思います。

中には、緊急事態でもないのに、教師個人の携帯電話に電話をかけて、夜遅くまで何時間も話してしまう保護者もいます。教師といっても、家庭人なのに、家庭の中にも仕事が入り込んでしまいます。これでは、心が安らぎません。

このような対応をしてくれるのは、愛と責任感のある教師だと思いますが、それでもはやり、こんなことをしてはいけないと思います。

学校をコンビにように考えてはいけません。この問題は管理職の責任も大きいでしょう。コンビニのような対応を教師にさせず、保護者にもご理解いただくのは、管理職の役割だと思います。

しかしそれでも、実際はなかなか難しいでしょう。そこで、教育委員会が登場し、今回のような対応が全国的に広がっているのです。

■学校は24時間対応

ほとんどの教師は、子ども達を愛しています。強い責任感を持っています。もしも万が一、本当の緊急事態が発生したら、労働者としての勤務時間や法的な責任範囲の問題を越えて、教育現場は24時間対応をします。

休日でも、夜中でも、教職員の電話連絡網で、みんなが緊急事態を知ることになります。必要があれば学校にかけつけるでしょう。あるいは、翌朝つぐに対応ができるように、担当者が夜の間に準備をするでしょう。

ある学校で、子供が危篤状態になりました。急ぎ電話連絡網がかけめぐります。担任は、夜中の病院に駆けつけます。家族と共に病室へ入ります。教師には何もできません。ただ、そこにいただけです。でも、家族と共に祈り、家族と共に泣きました。

それぞれの学校で、いつも同じことが起きているわけではありません。こんなときのマニュアルがあるわけではありません。各々事情により、その時々に対応は変わるでしょう。それでも、ほとんどの学校は、ほとんどの教師は、懸命に子ども達と向き合っています。

その教師の熱意と善意にいつまでも頼っていてはいけないと思います。教師も24時間働けばよいわけではありません。それでも、私達は学校の現状を理解し、学校と教師を支え、家庭を支えたいと思います。それが、私達の役割なのです。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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