今村復興相「激高記者会見」と「自己責任」と福島支援の心理学

(写真はイメージ:福島県三春の滝桜:福島県は桜の名所がいっぱい)

支援者もマスコミも、私達すべてが忘れてはいけないことは、被災者と寄り添うこと。

■今村復興相「激高記者会見」

記者に追及され、言葉を荒げた今村復興大臣の問題が、議会でも追求されています。

今村復興相の閣議後会見での発言問題をめぐり、6日開かれた衆議院の特別委員会で、今村復興相は冒頭、謝罪をしたが、「自己責任だ」と発言したことについては撤回はしなかった。

~今村復興相は「自己責任という言葉の使い方がよくなかったなと思っている」と述べた。

出典:「激高会見」謝罪 自己責任発言撤回せず フジテレビ系(FNN) 4/6

■記者会見の様子(全文)

この記者とのやり取りの全文を復興庁が公開しています。

今村復興大臣閣議後記者会見録(全文):復興庁

また、動画も公開されています(西中誠一郎氏撮影・OurPlanet-TV)。

今回の件に関するヤフーニュースに関して、ヤフーニュースオーサーの不破雷蔵さんは、オーサーコメントの中で、「大手報道の多くは、その一部のみを切り貼りし、その実情を説明せず、大臣の行動の部分のみを伝えていた事も覚えおくべきでしょう」と述べられています。関心のあるかたは、ぜひ全体像を見てみましょう。

■感情的になってしまった

「感情」はとても大切なものですが、現代社会においては「感情的」になり、ましてや「激高」してしまえば、負けでしょう。今村大臣も謝罪をしています。

ただ、様々な場面で相手をわざと怒らせる手法は使われます。感情的になった言動をとってしまえば、それが繰り返し報道されたり、責められたりもするでしょう。

怒らせて、あるセリフを言わせようとする人もいます。一言でも言ってしまえば、言質(げんち)をとられてしまい、失言騒動になることもあるでしょう。

■自己責任とは

自己責任は、辞書的に言えば「自分の行動の責任は自分にあること」です。ただし、「自己責任」はある価値観を込めて色々な意味合いで使われます。

「自己責任論」などと使われるときには、「自分の行動の結果として危機に陥ったのなら、自分で責任を負うべきであり、他人に助けを求めるべきではない」(新語時事用語辞典)という趣旨で使われたりもします。

「投資は自己責任」という場合には、投資は自分の判断で行い、得をしても損をしても自分の責任だということで、あまり異論はないでしょう。山や海で遭難したり、海外で事件事故に巻き込まれたりした場合の自己責任論は、意見が分かれるでしょう。

前文を読むと今村大臣も「当然、国の責任はあると思うんですが」と述べていますが、「自己責任だ!」という言葉には、私の責任は全くなく、すべては当事者の責任であり、社会は支援する必要がないと言わんばかりに当事者を責めるニュアンスを人々が感じるときもあるでしょう。

その意味で、今村復興大臣も「自己責任という言葉の使い方がよくなかった」と謝罪しているようです。

いずれにせよ、責任を取るべき「自分の行動」は、心理学的にいえば「自己決定」さらた行動でなくてはなりません。詐欺師にだまされたり、誰かに脅されて強要された場合は、責任をとるべき「自分の行動」ではありません。必要な情報を与えられていなかったり、精神的に不安定だったりした場合も、本来の意味の自己決定ができていないとされます。

福島県のみなさん、自主避難されているみなさんは、どうなのでしょうか。

■法律、行政

人情で言えば、困っている人は助けたいと思います。しかし、税金を使って行うとなれば、どこかで線引きは必要でしょう。どこで線を引いても、その線の前後の人にとっては理不尽な面もあるのですが、それでも線引きは必要です。

記者と大臣のやりとりの全文を読むと、福島県が中心となって支援し国がそれをサポートするという大臣に対して、記者は「栃木からも群馬からも避難されています」「千葉からも避難されています」と述べています。だから、福島県ではなく国が中心となって支援すべきという趣旨かと思います。

たしかに、様々な自主避難者がいます。本州から沖縄へ自主避難した人もいます。日本からアメリカに自主避難した人もいます。それぞれのお考えがあってのことですが、国がそれらすべての自主避難者に税金を使って支援し続けることには、多くの人が反対しそうです。

■福島県からの自主避難

福島第一原発事故後に、福島県に行きました。テレビでもラジオでも、放射線情報が流れ続けていました。お母さん達が、まるでお天気の話をするように、放射線の話をしていました。この状況で子育てをすることはとても不安だろうと、私も感じました。

また自主避難したあるお母さんは、言っていました。「科学的に安全だというのはわかる。しかしもしも将来、子どもが病気になったときに、あのとき避難していればと後悔すると思うと辛いのです」。

福島県外の人間が、福島県全体が健康被害が出るほどに汚染されたかのような非科学的な言動を取るは、とんでもない間違いだと思います。その一方で、不安を感じる福島県のみなさんには共感できます。支援したいと思います。

自主避難する人は、福島県に親戚や友人を残す辛さがあります。自主避難先で避難者同士のコミュニティーができれば、そこから離れて福島県に戻るときに辛い思いをします。福島県に帰りたいのに帰れない人の辛さもあります。福島県に帰ってきた人は、自主避難しなかった人と再び人間関係を作る辛さがあります。自主避難を本当はしたいのにできない人の辛さがあります。自主避難の必要はないと判断した人は、自主避難しようとする人々との間に辛さを感じます。多くの人が、辛さを抱えています。

■福島県民と寄り添うために

今回のニュースが報道された4月5日。NHKテレビ「ニュース9」がリニューアルされ、新キャスター有馬嘉男さんが登場しました。今村復興相「激高記者会見」のニュースに関して、有馬さんがどうコメントを述べるのか、興味深く聞きました。有馬さんは、単純に誰かを責めるのではなく、次のように語りました。

「記者会見って、取材するほうは何とか聞きだそうと思い、あの手この手で聞きます。しかし大事なのは一点。復興支援に携わる人も、取材する側も、被災者と寄り添わないといけない。その一点は、ぶれないようにしたいと思います」。

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東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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