子猫はなぜ生きたまま焼かれたか、なぜ動画はネット投稿されたか

(写真はイメージ:ネットはいつも諸刃の剣)(写真:アフロ)

攻撃は様々な方向へ向く。ネットは、人を癒し、人を沈める。

■子猫を生きたまま焼いた女 動画投稿で逮捕

ネットで動画か拡散され、話題になった事件です。

子猫を生きたまま焼き殺し、フェイスブックにその動画を投稿したとして、神戸市在住の無職の女(31)が兵庫県警に逮捕された。

自分が飼っていたスコティッシュフォールドの子猫をつかんで逆さ吊りにし、~簡易焼却炉に入れて焼く様子を映していた。~

女は、子猫の焼却や動画投稿も認めた。~精神科に医療保護入院~

女は、治療を終えて8月16日に退院し、~逮捕された。~女は、「取り返しのつかないことをした」と容疑を認めているという。~

容疑者の女は、別れたという夫の浮気相手とする女性の名前を子猫などに付けて、残虐行為に及んでいた。

出典:子猫を生きたまま焼いた女 動画投稿で逮捕の兵庫県警「大きな犯罪につながる可能性」 J-CASTニュース 8月17日

■怒りと攻撃、恨みと八つ当たり

怒りは、一般に何らかの形で自分が傷つけられた時の感情です。怒りから、すぐに直接の相手に攻撃をすることもあります。しかし、現代社会では、簡単に相手を殴ったり蹴ったりはできません。

そこで、怒りを抑えます。しかし、心の中のストレスはなくなりません。そこで、怒りの対象を「置き換え」ます(「置き換え」は防衛機制の一種)。

物に当たる人もいますし、人に当たる人もいます。八つ当たりです。ただし、普通は理性で限度をわきまえます。

怒っているのに有効な反撃ができずに悶々としていると、恨みの感情が増し加わり、複雑で歪んだ攻撃方法を考えることもあります。

■なぜ怒りは猫に向いたか

八つ当たりの一種として、ペットを虐待する人もいます。

さらにストレスを子どもに向けて虐待する人もいますが、例えば妊娠中に夫の浮気が発覚した場合など、子どもが可愛く思えないと感じ虐待が悪化することもあります。

今回の詳細は不明ですが、夫婦で飼い始めたペットと、夫の浮気への怒りが結びつこともあるでしょう。

■精神疾患と動物虐待

今回のケースでは、医療保護入院(家族等の同意による入院)に至る診断名が報道されていませんので、心の健康状態と今回の行為がどのように関連していたのかはわかりません。

動物をいじめるようなことは、ストレスのたまった人なら、ある程度はあることでしょう。しかし、限度を超えた動物虐待者の中には、診断名がつく人もいます。

たとえば、反社会性パーソナリティ障害と診断されるような人の中に、動物虐待への良心の呵責を感じない人もいます。あるいは、発達のバランスが崩れている人の中には、動物の解剖に執着する人もいます。

性的サディズムの人の中には、動物や人間を痛めつけることに快感を感じる人もいます。

猟奇殺人事件の犯人の多くは、動物虐待を経験しているという研究もあります。ただ、動物虐待は多いことなので、動物虐待をしている人が次々殺人者になるわけではありません。

また自分自身がひどい虐待を受けたいるために、動物虐待に走る人もいます。

今回のケースは、退院後に反省の弁を述べていますので、入院治療により冷静さを取り戻せるような状態だったのでしょう。人への攻撃などにエスカレートすることなく済んだのは、入院治療の効果でしょう。警察、家族、医療の協力によるものだと思います。

■ネットの影響

ウケ狙いでネットに様々な動画を流す人はいますが、今回は違うでしょう。冷静さを失っていたとはいえ、自分の心を多くの人にわかってもらいたかったのかもしれません。

「グレてやる」とか「死んでやる」という言葉がありますが、これも自分の苦しい思いを知って欲しくてもがいている言葉でしょう。

自分では処理しきれない感情を、人は他の人に話します。泣いたり怒ったりしながら人に話し、共感し受け止めてくれることで、冷静さを取り戻します。

ただそのような相手がいない時、一人で考え込んでネガティブ感情に浸っていくこともあります。またある人は、ネットで感情を吐露します。法に触れず、ネットでも共感してもらえるなら、それも良い方法です。

処理できない感情を不適切な行為として「行動化」し、さらにそれをネットで公開する。これも、本人の心がもがいているからなのですが、犯罪として立件されることもあるでしょうし、ネット公開することで行動がエスカレートし、犯罪の闇に沈んでいくこともあるでしょう。

ネットで救われる人もいれば、ネットで犯罪者になる人もいます。ネットはいつも、諸刃の剣なのです。

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補足2016.8.18.20:20

・私事ですが、小学生時代の一番悲しい思い出は、飼っていた猫が交通事故で死んだことでした。

・元記事から推察するに、この女性に変化はあったのでしょう。ただ診断名も治療方法もわからないので、それがどの程度治療の効果だったのかは、わかりません。いずれにせよ、人とはわからないものです。

複数のプロが判断して仮釈放した直後に犯罪に走る人もいますし、そうかと思えば、凶悪犯罪者だった人が、その後おだやかな人生を送ることもあります。ほとんどの場合、治ると断言はできませんが、また「死ぬまで治らない」と断言することもできないでしょう。

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。テレビ新潟番組審議委員。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』は総アクセス数5千万。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』など。

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