「心のケア」のその前に必要なこと:震度7熊本地震

(写真はイメージ:熊本城もきっと見事に修復されることでしょう)(写真:アフロ)

災害直後には、カウンセラーよりも精神科医よりも、「安全安心」を提供することであり、身近な人による支え合いこそが大切です。

■心のケアは必要?

大きな事件事故が起こると、近年はすぐに「心のケア」の必要性が言われます。それは、正しいことです。ただ、大災害が発生した時には、混乱している人々みんなに、すぐカウンセラーやら精神科医を派遣することはできません。

それに、今すべきことは、心のことよりも体や生活のことの方が多いのです。

心の問題はどうでも良いというのではありません。とても大切です。けれども、人の心は、体や生活と一体のものなのです。心のケアのためにも、まず体と生活のことが必要になります。

また心のケアというと、プロの仕事と考えられがちですが、混乱している災害直後には、プロよりもむしろ身近な人によって心を支えることが必要です。

■まず安全安心を

災害発生直後にまず必要なことは、安全安心です。余震が起きたら、この家もつぶれるかもしれない、そんな危険な家の中で生活はできません。安全な場所が必要です。

寒くて、食べ物もないような場所には、いられません。余震があっても壊れない、暖かで、水も食べ物も、必要なものは全部揃っている。そんな安全な場所が必要です。安全な場所があって、初めて心の安心が生まれます。

突然の大災害、着の身着のままで逃げたきた人には、様々な不安があります。家族親戚知人の安否、赤ん坊のミルクや紙おむつ、毎日飲んでいる薬、今後の生活、必要な手続き。命が助かった後は、次々と心配なことが浮かびます。

必要な物資を提供すること、必要な情報を提供することです。

おそらく大きな避難所には、じきにたくさんの物資が届くことでしょう。それでも、細かい必要な物や必要な情報は、なかなか届かないかもしれません。人に言いにくい話もあるかもしれません。我慢している人も、いるでしょう。

一人ひとりに、安全安心を届けることが、まず求められています。

■身近な人による心の支え

なかなか連絡が取れなかった家族親戚、親友と連絡が取れれば、それは本当に安堵することでしょう。声を聞くだけで、顔を見るだけで、安心し、勇気付けられる人がいます。

命からがら逃げてきて、仲の良いご近所の方と再会できて、涙ながらに抱き合っている人もいるでしょう。

余震が続く中、小さな子どもを抱きしめている母親父親もいます。

災害の直後は、プロのカウンセラーや精神科医などよりも、身近な人による心の支えこそが大切です。災害直後に、誰かにしっかり支えられることが、後の心の問題発生の予防にもなります。ただ、誰しもが不安になっています。誰かを支える人も、本当は不安だったりします。

客観的に言えば、親の心が安定していて、子どもをしっかり支えることが、後の子どものPTSD(心的外傷後ストレス障害)の予防につながります。しかし、今そんなことを言って親に「あなたがしっかりしなさい」と言っても、親を追い詰めるだけでしょう。

子どもを支えるのは親の役割であり、その親を支えるのが周囲の役割です。

被災地では、素晴らしい支え合い、助け合いが、すでに始まっています。ただ、その中で見過ごされている人もいるかもしれません。とても活動的に動いている大人や子どもの中に、辛さを押し殺している人もいるかもしれません。

頑張って働くべき時と、体や心を休めるべき時があるでしょう。誰にとっても、身近な人を支えること、身近な人に支えられることが、大切なことです。

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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