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「逆ギレ」の心理学:どうしてあの人は逆ギレするの!?

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■逆ギレ!

逆ギレする人って、いますよね。

自分がまちがえたのに、そっちが悪いのにって、みんな思うのですが。

最初から、自分が悪いのに怒っている人もいますし、最初は反省の態度を示していたのに、なかなか許してもらえないと、いきなり逆ギレする人もいます。

海外からも、「逆ギレ」のニュースが届いています。

■逆キレとは

マニュアルを確認したところ、乗務員のサービスが正しかったことが判明した。すると、趙被告は責任者に対し「おまえが最初からちゃんと答えないから、その乗務員を叱ってしまったじゃない。全部おまえのせいだ。おまえの責任だから、降りなさい」と「逆ギレ」したという。

出典:責任者に「全部おまえのせい」=大韓航空前副社長が「逆ギレ」―ナッツ事件・韓国 時事通信 1月16日

この記事に次のようなオーサーコメントを書きました。

本来なら自分が謝罪すべきところを、逆に怒ってしまうのが、「逆ギレ」だ。「謝罪」は、楽しいことではない。自分自身の存在や人間関係において、落ちついた自信と安心感がなければ、すなおで素早い謝罪の言葉は出にくいだろう。

心理学的に見れば、逆ギレは、しばしば自己愛者(自分を不当に特別視する人)の不安定な自己(実は自信がない状態)の防衛的現れ(自分のプライドを守る行動)だ。

また研究によれば、怒りっぽい人は、自分の行動を他者のせいだと考えやすい。「全部おまえのせい」は、その典型だろう。

自分の失敗や罪を正しく自覚できる人こそが、良い友人を得ることができ、良いリーダーにもなれると、心理学の研究からも明らかになっているのだが。

(碓井 真史2015/01/16)

最近は、辞書にも俗語として「逆ギレ」が載っています。

逆ギレとは

「なだめている人、または怒られている人が、かっとなって怒り出してしまうこと」大辞泉

「俗に、本来なら怒られるべき立場の人が、逆に怒り出してしまうこと。」大辞林

「それまで叱られたり注意を受けたりしていた人が、逆に怒り出すこと。」広辞苑

国語辞典的には、このように説明されていますが、日常的にはさらに広い意味でも使っているでしょう。この記事での使い方は、「本来なら自分のミスを認め、訂正や謝罪をすべき人が、逆に怒ってしまう」かと思います。

「キレる」という言葉からは、必要以上に、常識以上に、不適切に怒るという意味もあるでしょう。

大人も高齢者もキレますが、キレる子どももいます(キレる子どもたち、増える子どもの暴力:その背景と私たちの関わり)。

キレて怒りを爆発する人を、何とかできたらと思います(怒りを爆発させる人々:「キレる」を防ぐ心理学:大韓航空機引き返し事件から)。逆ギレは、なおさらです。

■心理学的に見た「逆ギレ」とは

たとえば、大人として自律できていない「マザコン」の男性は、逆ギレします。自分が失敗したり、浮気したりして女性に叱られていると、最初は反省を示すのですが、突然逆ギレして怒り出すことがあります。マザコン男は、妻や恋人に「母」を求めるので、自分を許し受け入れてくれない相手に怒りを爆発させるのです。

様々な逆ギレは、「自己愛者(自分を不当に特別視する人)の不安定な自己(実は自信がない状態)の防衛的現れ(自分のプライドを守る行動)」とも言えるでしょう。

すなおに謝罪し、心から反省するためには、心の余裕が必要です。仮にみんなにほめられなくても、頭を下げても、自分の価値は下がらないと確信できている人は、スムーズな謝罪ができるでしょう。特別扱いされなければ気が済まないといった人は、簡単には謝れません。

自信がなく、不安定な心を持っている人は、何とか自分の心を守ろうとします。失敗を認めたりしたら、自分はもうダメだと思い込みます。謝罪や訂正が必要な時は、精神的な危機状態です。本来なら、何とかがんばって謝罪訂正ができると良いのですが、不安と緊張に負けてしまうと、逆にキレて怒鳴り散らすという方法で自分を防衛しようとするのです。

普段は威張っている人、出生している人にも、ぎりぎりのところで自分を守っている人もいるのでしょう。本当に偉い人は、けっこう腰が低いと思うのですが。無理をしなくても、愛と尊敬が得られると感じていれば、逆ギレする必要もないと思うのですが。

「愛されている実感で、失敗したらどうしようという自分を縛る不安や緊張の思いから開放されるのです。」(「不安と緊張と愛の心理学:受験にも試合にもプレゼンにも負けないために」Yahoo!ニュース個人有料「碓井真史の心理学であなたをアシスト」)

さらに社会心理学の研究によれば、怒りっぽい人は、自分の行動の原因を他者のせいにしやすい傾向があります。本当は、周囲の対応は普通で、短気を起こしている本人が悪いのですが、それなのに、妻が悪い、親が悪い、先生が悪いと感じてしまうのです。

その結果、自分が謝らなければならないときに、こうなったのはお前のせいだ、みんなお前が悪いんだと、逆ギレしてしまいます。

このように心理学的に考えても、すぐに問題が解決するわけでわありません。それでも、相手の心理を考えることで、逆ギレする人に振り回されることは少しは減らせるかもしれません。相手の心理を冷静に考えられると、自分の心が落ち着き、賢い対応方法も生まれやすくなります。そして、自分自身が逆ギレすることを防げるようにもなるでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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