■小保方晴子氏のSTAP細胞は存在しなかった

新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」。理研(理化学研究所)は、検証実験では確認できなかったと発表しました。絶対に存在しないとは証明できないものの、「STAP細胞は再現できない」と結論づけ、STAP細胞の存在は事実上否定されました。

もしもSTAP細胞が存在するなら、その可能性が本当にあるなら、理研を含め世界中の研究者が研究を進めます。科学的にもビジネスとしても、大きな発展が期待できるからです。しかし、もはや世界では誰も本気で検証する人はいませんでした。

今回は、世間からの声もあり、このような奇妙な形での検証実験となったのでしょう。記者会見では、「検証実験は、(小保方晴子研究員を監視するための)モニターや立会人を置いて行われた。そういう検証実験を行ったことは、責任者としてものすごく責任を感じている。研究者を犯罪人扱いしての検証は、科学の検証としてあってはならないこと。この場でおわびをさせていただく」と述べられています。

真実は、小保方氏しかわかりません。あのとき、何か奇跡が起きて、STAP細胞もキメラマウスも本当にできたのかもしれません。あるいは、小保方氏の、悪意のない誤認、ミスで、別のES細胞が混入した結果かもしれません。

ケアレスミス、データ改ざん(見栄えを良くするための)、悪意のない誤解、誰かの陰謀、そしてねつ造(意図的な不正)と、今でも可能性としてはいろいろ考えられます(小保方晴子氏反論記者会見:論文捏造の真偽は?天才かペテン師か?)。

しかし、意図的な不正が行われた可能性が最も大きいようです。「論文不正」(意図的なデータの改ざん)は以前から認定されていましたが、万能細胞であるSTAP細胞ができたとの実験結果そのものが意図的なねつ造だった可能性が大きくなりました。という回りくどい言い方が報道ではなされますが、常識的には、実験内容すべてが作り話、ペテンと言われても仕方がありません。

■小保方晴子氏のコメント

小保方氏はコメントを発表しています。「どのような状況下であっても必ず十分な結果をと思い必死に過ごした3か月でした。〜魂の限界まで取り組み〜」。なかなか感動的です。

小保方氏の記者会見でも、とても魅力的な姿を見せましたが、小保方氏は文才もあるようです。

ただし、小保方氏の謝罪は前回の反論記者会見も今回のコメントも、「未熟さ」に関する謝罪です。

「私の未熟さゆえに論文発表・撤回に際し、理化学研究所を始め多くの皆様にご迷惑をおかけしてしまったことの責任を痛感しておりお詫びの言葉もありません。」

論文の写真を加工したことなどは認めていますが、それも不勉強や未熟さのせいであり、実験そのものに意図的不正があったとは一言も述べていません。

■小保方晴子氏はなぜ嘘をつき続けるのか

STAP細胞の実験に意図的な不正があるとすれば、彼女は嘘をつき続けていることになります。たしかに会見の言葉や、今回のコメント見る限りでは、とても嘘とは思えません。しかし、様々な証拠が小保方氏の嘘を示しています。

ただ、ここまで来ても、小保方氏に関する悪い評判はほとんど出ません。小保方氏は、有能で一生懸命で、すてきな人です。その人が、なぜこんな大それた嘘をつくのでしょうか。応用が期待される研究で、いずれは嘘がわかります。それなのに論文をねつ造するなど、そんなことがありえるのでしょうか。

しかし、前例はあります。

超伝導に関するすばらしい研究成果を出し続けたヘンドリック・シェーンも同様でした。ネイチャーに発表した研究も、世界中で講演した実験内容も、すべては彼の作り話だったのです。しかし事件の前も後も、彼の評判はとても良いのです。有能で、誠実で、すてきな好青年でした。

彼は、世界的研究所であるベル研究所を解雇された今も、自分の研究は嘘ではなかったと言い続けています。なぜ、世界を巻き込む大嘘をついたのかは何も語っていません。

このような人々の、「有能さ」も「善良さ」も、おそらく嘘ではないのでしょう。素晴らしい研究をして、世のため人のために貢献したいという思いも、真実なのでしょう。これまでの人生での、人へのやさしさや誠実さも、嘘偽りはないのでしょう。

しかし、世界を揺るがすような大発見はできませんでした。有能さと、一流の職場環境と、上司からの高い評価と期待。その中で、彼らの心の中の何かがはじけてしまったのかもしれません。

この人たちの「」は、しだいに本人の心の中で嘘ではなくなっていったのかもしれません。客観的には、不正、ねつ造が明らかになった後も、それを認めてしまっては、自分自身が壊れてしまうのかもしれません。

自分が見つけたすばらしいSTAP細胞も超伝導も実在するのだと、思い続けるしかないのかもしれません。

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論文捏造:STAP細胞論文から考える科学と私たちが抱える根本的問題:ヘンドリック・シェーン事件から