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「こころの定年」を乗り越えるために:魅力的なシルバーになる方法

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■こころの定年とは

「こころの定年」とは、サラリーマン人生の前半戦と後半戦の境目にあたる40歳前後で、働く意味を見失っているような状態を指す。

出典:<サラリーマン>「こころの定年」どう克服? 毎日新聞 11月3日

定年は伸びてきました。でも、定年前に心が燃え尽き、やる気を失う人も増えてきました。経済的に余裕があるなら、早期退職したいという人も、少なくないでしょう。

■2つ目の自分・ストレス対策

楠木さんは、外でいきいきと活動することで、会社での仕事にも打ち込めるようになったという。「二つの自分を持てば、これまでと違った視点で会社が見え、負の側面ばかりでなく、良いところが分かってくる。〜」

出典:<サラリーマン>「こころの定年」どう克服? 毎日新聞 11月3日

仕事が行き詰まったとき、その仕事で突破できれば良いのですが、あまりに仕事のことばかり考えると、かえって泥沼にハマることもあるでしょう。違う視点、違う活動が、新しい道を示すこともあるでしょう。

現代の中年(特に男性)は、以前よりもストレスがたまっています。

新潟青陵大学の碓井真史教授(社会心理学)は「かつて中高年の男性は職場や家庭内で尊敬される存在だった。しかし近年、終身雇用や年功序列は崩れ、コンピューター操作の能力は若手のほうが上。これまでの経験がいかせないなど、職場でストレスがたまることも多い。家庭でもないがしろにされ、父親としての権威も失っているケースもある」と指摘する。

その上で「職場や家庭以外の場所にやりがいをみつけることは、相対的に苦しみが減るので、ストレス解消に効果的な方法の一つといえるだろう」と話している。

出典:<サラリーマン>「こころの定年」どう克服? 毎日新聞 11月3日

毎日新聞から取材を受けて、上記のような話をしました。現代の中年男性は、追いつめられています。今回は、「こころの定年」ということですが、自殺も犯罪も多いですね。

家庭も辛い、仕事も辛い、そしてなかなか解決は難しい。そんなときには、第三の活動の場を見つけます。趣味でもボランティアでも。

家庭と職場しかなくて両方でストレスがたまれば、最活のすべてがストレスの場です。ところが、第三の活動の場を見つければ、仕事と家庭が生活の全部ではなく、生活の三分の二になります。もともとのストレス自体は変わらなくても、相対的にストレスが小さくなります。

■中年クライシスの乗り越え方:素敵なシルバーになる方法

発達心理学者エリクソンの考え方では、それぞれの年代に乗り越えるべき発達課題(人生の宿題)があると言われています。青年期の発達課題は、自我同一性(アイデンティティ)の確立です。成人期の発達課題は、「愛する力」。そして、中年期の発達課題は、「育てる喜び」です。

中年になると、人生の先が見えてきます。俺の人生はこんなものだったかと、停滞感が押し寄せます。さらに、中高年になれば、なおさらでしょう。でも、「育てる喜び」を見いだした人は、別です。

「育てる喜び」は、実の子だけに限りません。会社の後輩、地域の子どもや若い人でもOKです。誰かの面倒を見る、頑張って、誰かを育てることは、喜びと元気のもとです。

ディズニーのアニメ映画「カールじいさんの空飛ぶ家」のカールじいさんは、不器用なボーイスカートの少年を守るために必死にきびしい自然や悪者と戦います。彼は少年の成長を願います。その思いと、少年との交流が、眠っていたカールじいさんの心を覚まします。

大冒険を乗り越えて、主人公はもう一度青春を取り戻したように、ハッピーで積極的な人生を歩み始めるのです。

出典:中年クライシスを乗り越えて希望を持ち続ける方法:Yahoo!ニュース個人有料「心理学であなたをアシスト

仮に自分自身の将来は見えてきたとしても、会社や地域や家族には大きな未来があると理解し、彼らを立派に育てることが生きがいだと感じられると、中高年になっても、希望を失いません。

若くても、中年でも自分の能力を十分に活かしている「ウェルビーング」の状態です。

ウェルビーイングとは、健康的に一生懸命がんばっている状態とも言えるでしょう。部活をがんばっている高校生、子育てに一生懸命な若いお母さん、プロジェクト成功に燃えているサラリーマン。後輩を育てる先輩社員。孫を守る祖父母。義務感や恐怖や不安からではなく、その時々に自分の能力を十分に発揮してがんがっている状態です。

出典:ウェルビーイングの心理学:幸福なやる気のために:Yahoo!ニュース個人有料「心理学であなたをアシスト」

アップルのスティーブ・ジョブズは、病床に多くのIT起業家を呼んで、自分が学んできたことを惜しげなく伝えたそうです。

私たちにも、それぞれの場で、それぞれの年齢に応じた役割りを、見つけたいものです。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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