放火の犯罪心理学:韓国病院放火、地下鉄放火事件報道を受けて
■韓国で連続して放火事件発生
放火はどこの国でも毎日のように起きてしまいますが、多くの被害者が出た病院への放火、大事故になりかねなかった地下鉄への放火が連続して発生し、大きなニュースになっています。
■放火罪
日本では、人がいるような場所に放火すると(現住建造物等放火罪)、死刑または無期懲役あるいは5年以上の懲役となっており、殺人と並ぶ重罪です(刑法108条)。
韓国では、人がいる場所に放火すると、無期または3年以上の懲役。その放火によって人が死亡すると死刑、無期又は7年以上の懲役と定められています(刑法164条)。
日韓どちらの場合も、人がいる場所というのは、民家のほかに病院や電車なども含みます。
日本では、火災原因としてタバコと一位二位を争うのが放火です。日本を含め様々な国で、全火災の中の十数パーセントが放火です。
■放火犯
放火犯の多くは、男性です(7割程度)。若い人の犯罪も目立ちます。
放火は、実行が簡単な犯罪です。特別な道具も要りませんし、腕力も必要とせず、高い技術も知識も必要ありません。ですから、時に幼い子どもが放火で補導されることもありますし、今回の韓国の病院放火事件では82歳の認知症患者が逮捕されています。
■放火の動機
1 報復、恨み、嫉妬、憤怒
人間関係のトラブルが、放火の大きな動機になります。個人的な恨みもありますし、激しい怒りの表れの場合もあります。
2 権威への挑戦
その人にとって、大きくな存在、自分を押しつぶすようなものへの放火もあります。
4 犯罪隠匿
自分が犯した別の犯罪を隠すために火をつけることがあります。
5 利得目的
何かの利益を得るための放火です。保険金目当てだったり、放火すれば嫌なテストを受けないで済むといった動機もあるでしょう。火事の写真をネットに投稿して注目を集めるために放火するといった事件も起きています。
6 脅迫、テロ
言うことを聞かないと、家に火をつけるぞという脅しの実行です。
7 放火癖
火をつけること事態に快感を感じ、癖になってしまったように繰り返す放火です。スッとする。ワクワクするという犯人もいます。どうしても放火が止められない場合は、一種の衝動制御障害とも言えるでしょう。
■韓国病院放火、地下鉄放火事件
今回の2つの放火事件の動機は、まだ不明です。
地下鉄の放火事件は、個人的恨みではないでしょう。70代の男性が逮捕されていますが、自分の人生や社会全体への何かの思いがあったのでしょうか。
韓国では、2003年にテグ地下鉄で放火事件が発生し、192人が死亡、148人が負傷する大惨事となっています。この事件は、犯人の自殺願望が動機となっていました。
日本では、1980年の新宿西口バス放火事件がありました。6人が死亡、14人が重軽傷を負う惨事となりました。この事件の犯人男性は、人生に絶望していたことと、事件の直前に通行人に侮辱されたことが事件の動機になりました。
韓国の病院放火事件は、個人的恨みかもしれませんし、病院への不満かもしれません。自殺願望かもしれません。そもそも逮捕された「82歳認知症患者」に、どれほどの判断能力、責任能力があったのかわかりません。
韓国は、短期間に大きな経済成長を達成しました。しかし、どの社会でも急激な成長はひずみを生みます。韓国も残念ながら自殺者が増えています。
安全意識を高める、防犯への備えを強める、そして国民一人ひとりが希望を持てる社会を作ることが大切ではないでしょうか。
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