秋葉原無差別殺傷事件の犯罪心理学:誰でもいいから殺したかった

<秋葉原事件5年>交差点に花と祈り

 東京・秋葉原の歩行者天国で7人が死亡、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件は8日で発生から丸5年を迎えた。この事件では元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(30)が殺人などの罪で起訴され、1、2審とも死刑判決(上告中)を受けている。事件現場になった交差点の一角には、早朝から花束などが供えられ、手を合わせる人もいた。

出典:<秋葉原事件5年>交差点に花と祈り 毎日新聞 6月8日(土)

逮捕後、加害者男性は、「生活に疲れた」「誰でもいいから殺したかった」「殺すために秋葉原に来た」と供述していました。

■加藤智大被告

地元青森でもトップクラスの進学高校に入学。高校時代は目立たない真面目な生徒だったようです。高校卒業後は、自動車関係の短期大学へ進学しました。

短大卒業後、いくつかの非正規雇用の職業を転々とし、犯行時は派遣会社に登録しされて自動車工場で働いていました。職場での評判も良く、真面目、おとなしいといった評価でした。近所の人も、おとなしく、普通の人に見えたと語っています。

母親は、一生懸命子育てをしていたということです。加藤被告自身のネット上の書き込みによれば、「親が周りに自慢したいから(息子の自分を)完璧に仕上げた」「作文とかは全部親の検閲が入っていた」と語っています。母親は、子育てにがんばりすぎたのかもしれません。

その後、被告の弟が取材に答えた家庭内の様子によれば、幼いころから厳しい教育を受けていたようです。宿題も、親がつきっきりで、教えていました。そのために、成績も向上したようです。

しかし、高校進学後は思うように成績が伸びず、当初望んでいた大学には進学できませんでした。母親も、兄ではなく、弟の勉強に熱心に取り組み恥めます。加藤被告は、自分は見放されたと思ったようです。しかし母親によれば、単に高校生の勉強は教えられなくなって、弟のほうの勉強を見るようになったと語っています。

自動車関係の短大で、彼は成績優秀でした。そのまま資格を取り、スムーズに卒業していれば、一流企業に正社員として就職できるはずでしたが、彼は4年生大学への編入を目指し、結局、四年制大学への編入も短大での資格取得もできないまま、卒業することになりました。

■加藤被告によるネットの書き込み:彼の思い

犯行の数日前から、ネット上でこう書いています。

「勝ち組はみんな死んでしまえ」

「そしたら、日本には俺しか残らない あはは」

 

「親が書いた作文で賞を取り。親が書いた絵で賞を取り、

親に無理やり勉強させられてたから勉強は完璧。」

「親が周りに自慢したいから完璧に仕上げたわけだ。

俺が書いた作文とかは全部親の検閲が入っていたっけ」

 

「中学生になった頃には親の力が足りなくなって、捨てられた。

より優秀な弟に全力を注いでた」

「県内トップの進学校に入って、あとはずっとビリ。

高校出てから8年、負けっぱなしの人生」

 

「友達ほしい。でもできない なんでかな」

「不細工だから、終了」

「彼女さえいればこんな惨めに生きなくていいのに」

 

「ちょっとしたきっかけで犯罪者になったり、犯罪を思いとどまったり、

やっぱり人って大事だと思う」

 

「人と関わりすぎると怨恨で殺すし、孤独だと無差別に殺すし、難しいね」

「やりたいこと・・・殺人  夢・・・ワイドショー独占」

自分は最低の人間だと思い込んみ、劣等感を強めていったようです。そして、

6月8日5時21分

「秋葉原で人を殺します」「車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら」

■大量殺人の心理(無差別通り魔事件の心理)

彼は、世の中で上手く行かず、またネット上でも無視されたり掲示板を荒らされたりしたことで孤独感を強め、ネットユーザーの聖地秋葉原で、自分の存在感を示すために犯行に至ったようです。

通り魔事件のように、一度に大勢の人を殺害する大量殺人者は、孤独と絶望感に押しつぶされた人です。自分の人生も、この世の中もどうなっても良いと感じるので、犯人は多くの場合、秋葉原事件のようにその場で逮捕されるか、射殺されるか、自殺しています。

彼らは、多くの場合優秀です。しかし、人間関係が苦手な人が多いようです。優秀なのに、自分が思っているような成功を手に入れることができない。こんな思いの中で、彼らは、強い不公平感と被害者意識を持ち、社会への敵対心を高めます。自分が上手くいかないのは、自分が悪いのではなく、社会が悪いと思うのです。

そんな生活の中、彼らは暴力に魅力を感じ始めます。銃やナイフを集めたり、軍製品に興味を持ったり、体を鍛える人もいます。さらに彼らは、非常にゆがんだある種の正義感を持ちます。

世の中は間違っている、そのわからない連中に、自分が鉄拳を下す、天誅だといった意識です。逮捕されてパトカーで移動するとき、堂々とした態度を取る者もいます。

■表現としての犯罪:犯罪を止めるために

秋葉原事件は、金目当てでもなく、個人的怨恨でもなく、「表現としての犯罪」とも言えるでしょう。

彼はネット上で語っています。

「いい人を演じるのには慣れてる みんな簡単に騙される」

「大人には評判の良い子だった 大人には」

「友達は、できないよね」

「誰にも理解されない 理解しようとされない」

そして最後に、

「時間です」と語り、犯行に及びました。

人はみな表現したがっています。理解と共感を求めています。彼は、犯行予告をし、犯行の準備をネットで語ったのですが、誰からの反応もありませんでした。凶悪事件の加害者に安易な同情はできません。けれども、死刑の存在すら犯行のブレーキにならない彼らを止めるのは、時間だと思う前の、誰かの一言だったかもしれません。

ある犯罪心理学者は語っています。

「殺意を待っている人に殺人を実行させる方法は、誰も彼に話しかけないことだ。」

*実は、この事件の日、私も秋葉原にいました。私が秋葉原駅についたのは、事件発生後でした。駅前の大型電気店に入りましたが、ほんの数百メートル先で大事件が起きたのに、店内はいつものように、明るく活気にあふれていました。何事も、なかったように。

 

 大学生の一人息子(当時19歳)を失った千葉県内の男性(58)は~「事件への社会の関心が薄れていくのが不安だ。被告のような人物がなぜ現れたのか、多くの人に考え続けてほしい」。今も、そう強く願っている。

出典:秋葉原惨劇5年…核心分からず、事件風化の不安 読売新聞 6月8日(土)19時

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加害者はモンスターか・家族・現代人はなぜ満たされないのか・大切な君・愛と尊厳

 

犯罪被害者の心の傷・PTSD・死別の悲しみと癒し

 

 

 

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。テレビ新潟番組審議委員。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』は総アクセス数5千万。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』など。

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