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ジャイアンツ一筋の37歳が新天地へ。遊撃しか守ったことのないベテランが求められている役割は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブランドン・クロフォード Jul 14, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ブランドン・クロフォードは、セントルイス・カーディナルスの選手として、メジャーリーグ14年目を迎えるようだ。ジ・アスレティックのケイティ・ウー、サンフランシスコ・クロニクルのスーザン・スラッサー、セントルイス・ポスト-ディスパッチのデリック・グールドが、契約合意あるいは合意目前、と報じている。どうやら、メジャーリーグ契約らしい。

 これまで、クロフォードは、サンフランシスコ・ジャイアンツ一筋に過ごしてきた。2008年のドラフトで4巡目・全体117位指名を受け、2011年5月にメジャーデビュー。FAになったのは、今オフが初めてだ。

 昨年6月の1登板を除くと、メジャーリーグで守ったポジションは、遊撃しかない。クロフォードの先発出場1528試合――DH出場は皆無――は、2011~13年にジャイアンツが行ったレギュラーシーズンの2004試合中、4分3以上の76.2%を占める。2012年以降の開幕戦の遊撃手は、いずれも、クロフォードだった。ゴールドグラブは4度。2015~17年と2021年に受賞した。

 3年前、クロフォードは、24本のホームランを打ち、OPS.895を記録した。けれども、シーズンOPSが.800を上回ったのは、この1度きり。2022年と2023年のOPSは.652と.587だ。この2シーズンのトータルOPS.625は、計750打席以上の201人中、下から6番目に位置する。先月、クロフォードは、37歳の誕生日を迎えた。

 カーディナルスは、レギュラーの遊撃手として、クロフォードを迎え入れたわけではないはずだ。もっとも、控えの内野手というのも、少し違う気がする。マイナーリーグでも、クロフォードがレギュラーシーズンに遊撃以外を守ったのは、2試合に過ぎない。どちらも、2010年に、A+で三塁手として出場した。

 クロフォードが求められている役割は、遊撃のバックアップ、と形容するのがふさわしいのではないだろうか。

 昨年、カーディナルスの遊撃は、開幕時がトミー・エドマン、4月下旬から7月末までがポール・デヨング、8月前半が再びエドマン、8月後半からはメイソン・ウィンが守った。今年は、ウィンが遊撃のレギュラーとして起用されるようだ。

 あとの2人のうち、デヨングは、夏のトレードでトロント・ブルージェイズへ移り、ジャイアンツを経て、現在はシカゴ・ホワイトソックスに在籍している。エドマンは、カーディナルスにいるものの、センターを定位置とするだろう。

 ウィンは、来月に22歳となるプロスペクトだ。2020年のドラフトで2巡目・全体54位指名を受け、昨年の夏にメジャーデビューした。昇格前は、AAAの105試合で打率.288と出塁率.359、18本塁打と17盗塁を記録したが、メジャーリーグの37試合は、打率.172と出塁率.230、ホームランと盗塁は2ずつに終わった。

 遊撃のバックアップとはいえ、クロフォードは、遊撃だけでなく、二塁や三塁も守るかもしれない。その一方で、カーディナルスのプランどおりでなく、レギュラーの遊撃手としてプレーする可能性も、皆無ではない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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