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クオリファイング・オファーを断った7人中4人は新たな契約を手にしたが、あとの3人はFAのまま

宇根夏樹ベースボール・ライター
コービン・キャロル(左)とマット・チャップマン Jul 14, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今オフにFAとなり、それまで在籍していた球団から1年2032万5000ドルのクオリファイング・オファーを申し出られた7人は、いずれも、それを断った。

 そのうちの4人は、すでに新たな契約を得ている。アーロン・ノラは、フィラデルフィア・フィリーズと7年1億7200万ドルの再契約を交わした。あとの3人は、違う球団へ移った。ソニー・グレイ(ミネソタ・ツインズ→セントルイス・カーディナルス)は3年7500万ドル、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス→ロサンゼルス・ドジャース)は10年7億ドル、ジョシュ・ヘイダー(サンディエゴ・パドレス→ヒューストン・アストロズ)は5年9500万ドルの契約を手にした。

 ヘイダーの年平均額は1900万ドルなので、クオリファイング・オファーを少し下回るが、年数は5倍だ。アストロズがヘイダーを手に入れた理由については、こちらで書いた。

「3年間に90セーブのクローザーがいるのに、3年間に103セーブのクローザーと大型契約。必要なのか」

 一方、ブレイク・スネル(前パドレス)、コディ・ベリンジャー(前シカゴ・カブス)、マット・チャップマン(前トロント・ブルージェイズ)の3人は、FAのままだ。ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールは、彼らとジョーダン・モンゴメリー(前テキサス・レンジャーズ)を合わせ、「ボラス・ビッグ4」と称している。4人とも、代理人はスコット・ボラスだ。モンゴメリーは、シーズン途中にカーディナルスからレンジャーズへ移籍したので、クオリファイング・オファーの対象にはならない。

 過去5度のオフ、2018年のオフから2022年のオフまでのいずれかにFAとなり、総額1億ドル以上の契約を交わした選手は、数えたところ、延べ29人が見つかった。彼らの3分の1に当たる10人は、年を越してもFA市場に残っていた。契約の時期は、1月が4人、2月が1人、3月は5人だ。

 なかでも、2021年のオフは、翌年の3月半ばを過ぎてもFAだった選手が4人いた。クリス・ブライアント(コロラド・ロッキーズ/7年1億8200万ドル)、フレディ・フリーマン(ドジャース/6年1億6200万ドル)、カルロス・コレイア(ミネソタ・ツインズ/3年1億530万ドル)、ニック・カステヤノス(フィリーズ/5年1億ドル)がそうだ。フリーマン以外の3人は、ボラスを代理人としている。

 こうした前例からすると、スネルらの球団がまだ決まっていないのは、そう意外でもない気がする。

【追記:2/2】

 2021年のオフは、2021年12月2日から2022年3月10日まで、ロックアウトが行われた。3月に1億ドル以上の契約が多かったのは、これが大きな理由だ。一方、ロックアウト前に契約を交わした選手も5人。ボラスを代理人として1億ドル以上の契約を得た選手は、ロックアウト前もロックアウト後も3人ずつだった。今オフ、1億ドル以上の契約は、ここまで4人。そのうち、ボラスの顧客は1人だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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