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新たな外野手が加わらなくても吉田正尚のレギュラーは安泰ではない!? トレードの可能性は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
吉田正尚(ボストン・レッドソックス)Aug 9, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 1月5日、ジ・アスレティックのジェン・マキャフリーとケン・ローゼンタールは、「テオスカー・ヘルナンデスを入手? マサタカ・ヨシダをトレード? レッドソックスは熟考中」と題した記事を発表した。

 テオスカー・ヘルナンデス(現FA)と吉田正尚(レッドソックス)は、どちらも外野手だ。レッドソックスは、FAのテオスカーに興味を抱いていて、現時点では吉田を放出しようと動いているわけではないものの、数球団から問い合わせが来ているという。

 今オフ、レッドソックスは、外野手のアレックス・バーデューゴをニューヨーク・ヤンキースへ放出し、別のトレードで、外野手のタイラー・オニールをセントルイス・カーディナルスから獲得した。

 現在、レッドソックスの40人ロースターには、6人の外野手、ジャレン・デュラン、オニール、吉田、ロブ・レフスナイダーウィリアー・アブレイユセイダーン・ラファエラが名を連ねている。アブレイユとラファエラは、昨年8月にメジャーデビューした。

 テオスカーが加わった場合、左から右に、オニール、ジャンセン、テオスカーが外野トリオを形成し、控えの外野手は、レフスナイダー、アブレイユ、ラファエラの誰かになりそうだ。今のところ、DHは空いているものの、2023年に15本塁打――後半に限ると5本――の吉田では、パワー不足だろう。

 オニールかテオスカーがDHで、吉田はレフト、という起用は考えにくい。少なくとも、メインにはならないはずだ。2023年のDRSとOAAは、テオスカーが+1と0、オニールが-1と0、吉田は-4と-8だった。オニールは、2020~21年にレフトを守り、ゴールドグラブを受賞している。

 また、パワーという点では、吉田よりも、控え一塁手のボビー・ダルベックのほうが上に見える。ここ2シーズンは伸び悩んでいるものの、ダルベックは、2021年に25本のホームランを打っている。あるいは、テオスカーではなく、こちらもFAのホルヘ・ソレーアのような、DHに適した選手が加わる可能性もある。

 しかも、吉田は、2023年の前半に打率.316と出塁率.382を記録したのに対し、後半は打率.254と出塁率.278に終わっている。OPSは.874と.663だ。後半の不振が2024年のシーズン序盤も続くと、ここから、外野手やDHが誰も加わらなかったとしても、アブレイユやラファエラに出場機会を奪われかねない。

 アブレイユは、2023年にAAAの86試合で、打率.274と.391、22本塁打、OPS.930を記録した。ラファエラは、AAの60試合とAAAの48試合で、打率.302と.349、20本塁打、OPS.870だ。

 復調までに与えられる猶予――不振のままでもレッドソックスが吉田を起用し続ける期間――は、減っている気がする。昨年9月、レッドソックスは、編成責任者のハイム・ブルームを解任し、翌月、後任にクレイグ・ブレズロウ――左のリリーフ投手として、2006年と2012~15年にレッドソックスで202登板――を招いた。吉田がレッドソックスに入団した当時、ブレズロウは、シカゴ・カブスのGM補佐だった。吉田が活躍できなくても、ブレズロウの失敗にはならない。ブレズロウが思い描く編成にフィットしなければ、復調を待たずに放出することも考えられる。

 とはいえ、吉田の契約は、あと4年7200万ドルが残っている。レッドソックスが少なくない額の支払いを負担するか、誰か他の選手とセットにするか、もしくはその両方がないと、トレードは難しそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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