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ドジャースは大谷翔平を必要としているのか。ここ3年とも100勝以上、ポストシーズン進出は11年連続

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(左)とムーキー・ベッツ Jul 7, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、ロサンゼルス・ドジャースは、249本塁打と303二塁打、644四球、出塁率.340とOPS.795を記録した。これらは、いずれもリーグ2位。877打点と906得点も、リーグで2番目に多かった。

 ドジャースで300打席以上の11人中、J.D.マルティネスデビッド・ペラルタジェイソン・ヘイワードの3人は、FAになった。

筆者作成
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 ロサンゼルス・タイムズのホルヘ・カスティーヨによると、ドジャースは、FAのテオスカー・ヘルナンデスに興味を抱いているという。ここ3シーズンとも、テオスカーは、25本以上のホームランと30本前後の二塁打を打っている。テオスカーでなくても、レフトを守り、打っては20~30本塁打の選手を1人加えれば、来シーズンも、打線は機能するような気がする。

 ミドル・インフィルダーのミゲル・ロハスミゲル・バーガスのOPSは、どちらも.700に届かなかったが、来シーズンの遊撃は、ギャビン・ラックスが守る予定だ。今春のスプリング・トレーニングが始まった時、ラックスは、遊撃のレギュラーとして期待されていた。けれども、3月を迎える前に右膝の靱帯を損傷し、全休となった。その怪我については、こちらで書いた。

「シーズン絶望となった「新遊撃手」の穴をどう埋めるのか。FA市場に残っている遊撃手を手に入れる!?」

 今月中旬に24歳となるバーガスは、シーズンが始まるまで、かなりのプロスペクトと目されていた。今シーズンも、打率こそ.195ながら、四球率は12.5%と高かった。二塁手の候補には、26歳になったばかりのマイケル・ブッシュもいる。今シーズンは、AAAの98試合で27本のホームランと26本の二塁打を打ち、打率.323と出塁率.431、OPS1.049を記録した(メジャーリーグ出場は27試合)。ブッシュは、2019年のドラフト全体31位だ。

 むしろ、大きな補強が必要なのは、ローテーションだろう。

 今シーズン、先発25登板以上は皆無。しかも、20試合以上の先発マウンドに上がった4人のうち、ローテーションに残っているのは1人だ。5月下旬にメジャーデビューし、22登板で防御率3.76を記録したボビー・ミラーしかいない。

 24登板のクレイトン・カーショウと21登板のフリオ・ウリーアスは、FAになった。カーショウは、今月初旬に肩の手術を受けたので、過去2度のオフと同じように再契約を交わしても、夏を迎えるまでは投げられない。ウリーアスは、DVにより、9月上旬に制限リストに入った。ドジャースは、延長契約を申し出なかったし、ここから呼び戻すこともないだろう。20登板のトニー・ゴンソリンは、9月初旬にトミー・ジョン手術を受けた。来シーズンは全休だ。

 また、ウォーカー・ビューラーは、手術明けのシーズンとなる。昨年8月に2度目のトミー・ジョン手術を受け、今シーズンは復帰できなかった。9月上旬にAAAで2イニングを投げただけだ。ダスティン・メイも、7月中旬に肘を手術。復帰は、オールスター・ブレイク後となる可能性が高い。

 ライアン・ペピオエメット・シーハンギャビン・ストーンマイケル・グローブらの若手は、いずれも、実績がほとんどない。今シーズン、ミラーが9度のクオリティ・スタートを記録したのに対し、この4人のクオリティ・スタートは、計30試合の先発登板で4度に過ぎなかった。他には、ライアン・ヤーブローがいるものの、ドジャースは、夏にカンザスシティ・ロイヤルズからヤーブローを獲得後、主にリリーフとして起用した。

 ミラーが2年目のジンクスに陥らず、ビューラーが復活を遂げても、ローテーションの不安を払拭するには、1人ではなく2人の先発投手を加えたいところだ。

 大谷翔平は、来シーズンのマウンドには上がらないので、ローテーションのプラスにはならない。それでも、ほぼ全員の記者が見当違いをしているのでなければ、ドジャースは、大谷を手に入れようとしている。

 唯一無二の選手を手に入れたいという、どの球団にも当てはまる理由だけではないはずだ。ドジャースは、来シーズンよりも先を見据えている。このままいくと、来シーズンの終了後に、ビューラー(とヤーブロー)はFAとなる。また、大谷と同じ左のスラッガー、フレディ・フリーマンマックス・マンシーは、すでに34歳と33歳だ。

 さらに、ドジャースが大谷を欲しがっている理由の一つとして、こういったことも考えられる。

 ドジャースは、2013年から今年まで、11年続けてポストシーズンに進出している。ここ3シーズンを含め、このスパンの100勝以上は5シーズンを数える。60試合の短縮シーズンだった2020年を除くと、半数のシーズンが三桁の白星だ。にもかかわらず、ワールドシリーズ優勝は2020年の1度きり。2017~18年はワールドシリーズまで進んだものの、ここ2年のポストシーズンは、どちらも最初のシリーズで敗退している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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