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エンジェルスの前GMとエンジェルスの現GMがトレードをまとめる。内野手がメッツからエンジェルスへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
エデュアルド・エスコバー Jun 18, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月23日、ロサンゼルス・エンジェルスは、マイナーリーガーの先発投手2人、コール・クロウランドン・マーセウをニューヨーク・メッツへ放出し、彼らと交換に、内野手のエデュアルド・エスコバーを獲得した。

 エンジェルスがエスコバーを手に入れたのは、ポストシーズン進出に向けてチームを「加速」させるというよりも、「失速」を防ぐためだろう。エンジェルスでは、内野手の離脱が相次いでいる。ザック・ネトアンソニー・レンドーンジオ・アーシェラのうち、アーシェラは復帰することなくシーズンを終えそうだ。

 アーシェラとエスコバーを比べると、ヒットを打つ確率はアーシェラが高く、パワーはエスコバーが勝る。アーシェラのシーズン本塁打は2019年の21本が最も多く、他のシーズンは15本未満だが、エスコバーのシーズン20本塁打以上は5度を数える。2019年は35本のホームランを打ち、2021年も30本塁打まで2本に迫った。

 ただ、今シーズンのスタッツは、アーシェラもエスコバーも、そう大きく違わない。アーシェラは、62試合で打率.299と出塁率.329、2本塁打と3盗塁、OPS.703。エスコバーは、40試合で打率.236と出塁率.286、4本塁打と2盗塁、OPS.695だ。出塁率とOPSは、ほぼ同水準。内野4ポジションに外野も守ったことがあり、今シーズンは三塁手としての出場が最も多い点も、共通する。

 エスコバーは、2年2000万ドルの契約2年目。今シーズンの年俸は950万ドルで、来シーズンは年俸900万ドル(解約金50万ドル)の球団オプションだ。

 まだ半分以上が残る、今シーズンの年俸は、メッツが大半を負担する。エンジェルスがエスコバーに支払うのは、今シーズンの年俸の下限と定められている、72万ドルの日割り分だけ。エンジェルスが球団オプションを破棄する場合の解約金も、メッツの支払いとなるはずだ。

 メッツは、エスコバーの年俸のほとんどを負担しても――オーナーのスティーブ・コーエンからすれば、大した金額ではないだろうが――クロウとマーセルを手に入れたかったということなのだろうか。

 メッツのビリー・エプラーGMは、2015年10月から2020年9月まで、エンジェルスでGMを務めていた。現在のGM、ペリー・ミナシアンが就任したのは、2020年11月だ。エンジェルス以外でも、エプラーとともに働いたことはない。エプラーは、2021年11月にメッツのGMとなった。

 クロウもマーセルも、移籍は今回が初めて。クロウは、2019年のドラフト28巡目・全体841位なので、エプラーが指名した選手だ。今シーズンは、5月から故障者リストに入っているが、4月にAAの4登板で24.0イニングを投げ、奪三振率11.63と与四球率2.25、防御率1.88を記録している。マーセルは、2021年のドラフト3巡目・全体80位。今シーズンは、こちらもAAで12登板。59.0イニングで奪三振率6.86と与四球率2.90、防御率4.88だ。

 メッツは、ナ・リーグ東地区首位のアトランタ・ブレーブスに14ゲーム差をつけられ、ワイルドカードの3番手に位置するマイアミ・マーリンズとも、8ゲーム離れている。もっとも、エスコバーの放出は、今秋のポストシーズン進出をあきらめるという意味ではないだろう。不振のベテラン+金銭で将来の人材を入手、といったところか。

 エンジェルスは、ア・リーグ西地区首位のテキサス・レンジャーズと7ゲーム差ながら、ワイルドカードの2番手に並ぶヒューストン・アストロズとニューヨーク・ヤンキースとは、両チームの最近のもたつきもあり、0.5ゲームしか離れていない。

 ちなみに、エプラーがGMとして関わった、メッツとエンジェルスのトレードは、見落としがなければ、今回が2件目だ。

 2016年の夏、エンジェルスのGMだったエプラーは、リリーバーのフェルナンド・サラスを放出し、マイナーリーガーの先発投手、エリック・マノーアJr.を獲得した。その後、サラスはセットアッパーとして好投し、メッツはワイルカードをゲットした。一方、弟のアレック・マノーア(トロント・ブルージェイズ)と違い、兄はメジャーデビューしていない。昨年5月にワシントン・ナショナルズから解雇された後、独立リーグで投げていたが、今シーズンはプレーしていないようだ。

 

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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