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WBC5本塁打のターナーは、その前にエンジェルス入団の可能性もあった!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
トレイ・ターナー Mar 21, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アメリカがワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝していれば、MVPには、トレイ・ターナー(フィラデルフィア・フィリーズ)が選ばれていただろう。準々決勝の逆転グランドスラムを含む5本塁打は、今年のWBCだけでなく、過去4度を含めても最多。2006年の李承燁と並ぶ。ターナーの11打点は、今年出場の選手では吉田正尚(ボストン・レッドソックス)の13打点に次ぎ、歴代でも3位タイに位置する。

 昨年のシーズン終了後、ターナーは、ロサンゼルス・ドジャースからFAになり、12月にフィリーズと11年3億ドルの契約を交わした。

 スポーツ・イラストレイテッドのトム・バードゥッチは、3月11日に発表した記事のなかで、ロサンゼルス・エンジェルスのオーナー、アルトゥーロ・モレノは、FA市場に出ていたターナーを手に入れるのに必要なコストと、ターナーがチームにフィットするかどうかについて、GMのペリー・ミナシアンに訊ねた、と記している。それに対し、ミナシアンは、その資金を2~3人の選手に費やすべき、と答えたという。

 これまで、モレノは、ビッグネームの野手に大枚を叩いてきた。それについては、「エンジェルスが強くなれない理由は、オーナーの「偏愛」にあり!?」で書いたとおりだ。

 また、ターナーが定位置とする遊撃は、昨年のエンジェルスにおける、ウィーク・ポイントの一つだった。エンジェルスの選手が遊撃出場時に記録したホームランは、ファングラフスによると計13本、MLB.comは計15本としている。違いの理由は、途中出場や試合途中のポジション変更などだろうか。いずれにせよ、本数は多くなく、どちらにおいても、出塁率は.275未満だ。

 もっとも、エンジェルスがターナーの入手に動いても、実現の可能性は低かったように思える。

 ターナーは、東海岸の出身だ。フロリダ州で生まれ育ち、ノース・カロライナ州の大学に通った。メジャーリーグでも、東海岸でプレーした期間が長い。2015年8月のメジャーデビューから、2021年7月のトレードでドジャースへ移るまでは、ワシントン・ナショナルズでプレーしていた。

 さらに、こちらのほうが重要な点かもしれないが、ターナーは、昨年12月の入団会見で「妻がとても喜んでいる、彼女はニュージャージー州フレミントンで育ったから」と語っている。フレミントンとフィラデルフィアは、フレミントンとワシントンD.C.よりも近く、車で1時間前後の距離だ。

 ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンらによると、ターナーは、サンディエゴ・パドレスから3億4200万ドルの契約を申し出られていたという。

 なお、エンジェルスは、FA市場に出ていた選手のうち、先発投手のタイラー・アンダーソン(3年3900万ドル)、内野手のブランドン・ドゥルーリー(2年1700万ドル)、リリーフ投手のカルロス・エステベス(2年1350万ドル)、リリーフ投手のマット・ムーア(1年755万ドル)、外野手のブレット・フィリップス(1年120万ドル)と契約を交わした(メジャーリーグ契約のみ。総額の多い順に表記)。その合計は7825万ドルだ。外野手のハンター・レンフローと内野手のジオ・アーシェラは、トレードで獲得した。

 遊撃の守備につくのは、デビッド・フレッチャールイス・レンヒーフォ、アーシェラに、アンドルー・ベラスケスといったところだろう。

 パドレスの遊撃は、ザンダー・ボガーツが守る。こちらは、レッドソックスと交わしていた契約、6年1億2000万ドルの残り半分を打ち切り、11年2億8000万ドルでパドレスに入団した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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