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先発5番手の離脱は、ローテーション崩壊の序曲なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・キンターナ(ニューヨーク・メッツ)Feb 28, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3月5日、千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)に続き、3回裏のマウンドに上がったホゼ・キンターナは、対戦した3人をいずれも討ち取り、13球でイニングを終わらせた。だが、左脇腹と腰に張りを訴え、2イニング目には入らなかった。

 検査の結果、左の第5肋骨にわずかな疲労骨折があることが判明。キンターナは、ワールド・ベースボール・クラシックの出場を取りやめた。復帰の時期は、まだわかっていない。MLB.comのアンソニー・ディコモによると、ニューヨークへ戻り、さらなる検査を受けることになっているが、フライトがキャンセルされ、その日時はずれ込んだという。何やら、不穏な空気も漂う。

 昨年、キンターナは、ピッツバーグ・パイレーツとセントルイス・カーディナルスで計32試合に登板し、165.2イニングを投げて防御率2.93を記録した。オフにFAとなり、2年2600万ドルでメッツに入団。マックス・シャーザージャスティン・バーランダー、千賀、カルロス・カラスコの4人とともに、ローテーションを形成する予定だった。キンターナと同じく、バーランダーと千賀も、今オフ、メッツに加わった。

 開幕ローテーションには、キンターナに代わり、デビッド・ピーターソンタイラー・メギルジョーイ・ルケイシーの誰かが入りそうだ。

 キンターナが出遅れるだけであれば、パニックに陥るほどのことではない。ローテーションにおけるキンターナの位置づけは、5番手あるいは4番手といったところだろう。代役候補のうち、ピーターソンは、昨年、105.2イニングで防御率3.83を記録した。先発19登板の91.0イニングに限っても、防御率は3.86だ。

 ただ、予定されていた5人のシーズン年齢(6月30日時点の年齢)は、バーランダーが40歳、シャーザーが38歳、カラスコが36歳、キンターナが34歳、千賀は30歳だ。彼らの平均年齢は、35.6歳となる。

 5人のうち、35歳以上の3人は、いずれも前年に故障者リスト入りしている。過去2年に範囲を広げれば、故障していない投手は皆無だ。

 なお、キンターナの故障前、3月2日にジ・アスレティックが発表した、ティム・ブリットンの記事によると、メッツは、試合が10日以上続く場合には6人目の先発投手を加える、5人+αのローテーションを計画していたという。

 6人目の投手は、リリーフと先発のスウィングマンとは限らない。ピーターソン、メギル、ルケイシーのいずれも、マイナーリーグ・オプションが残っているので、マイナーリーグとメジャーリーグを行き来させながら、シーズンを通して先発投手として投げさせることもできる。

 5人+αのローテーションは、5人が故障に見舞われるリスクを軽減するためだ。年齢と故障歴のどちらからも、故障のリスクが低くないことを、メッツも懸念していることが窺える。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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