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アストロズの選手が「違反バット」を使用する。5年前の「サイン盗み」に続き!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーティン・マルドナード(ヒューストン・アストロズ)Oct 28, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ワールドシリーズの第1戦に、マーティン・マルドナード(ヒューストン・アストロズ)は、アルバート・プーホルス(セントルイス・カーディナルス)にもらったバットを持って打席に入った。けれども、第2戦は、違うバットを使用した。

 第1戦のバットは、規定に反している。バレルの部分が太すぎる。

 FOXスポーツのトム・バードゥッチによると、2010年に規定が変更された――バレルの直径は2.75インチ以下から2.61インチ以下とされた――が、それまでこのバットを使っていたプーホルスは、その後も使用を許された。ただ、マルドナードはプーホルスではないし、メジャーデビューしたのは2011年だ。このバットを使うことはできない。MLB機構に違反であることを通達され、第2戦は自分のバットを使ったという。

 かつて、ヒューストン・アストロズは、相手バッテリーのサインを盗んでいた。2017年のワールドシリーズは、その期間に当たる。この年、アストロズは、4勝3敗でロサンゼルス・ドジャースを下し、球団初のワールドチャンピオンとなった。

 もっとも、今回の違反バットは、5年前のサイン盗みとはまったく違う。バードゥッチによれば、マルドナードは、引退するレジェンドを称えるために、このバットを使ったという。プーホルスとマルドナードは、2017~18年にロサンゼルス・エンジェルスでともにプレーした。

 なお、規定違反となった後も、プーホルスが使用を許されたことについては、こんな前例がある。1920年にボールに異物を付着させる「スピット・ボール」が禁止となった際、この球種を持ち球にしていると認定された17投手だけは、キャリアを終えるまで投げることを許された。

 また、1997年にジャッキー・ロビンソンの背番号「42」が全球団の永久欠番となった後も、その時点で「42」を背負っていた選手は、引き続き使用することができた。最後の「42」は、マリアーノ・リベラだ。1995年にメジャーデビューしたリベラは、背番号「42」のユニフォームを着て、ニューヨーク・ヤンキース一筋に2013年まで投げ続けた。

 ちなみに、マルドナードは、第1戦が3打数1安打、第2戦は3打数0安打だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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